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金正恩氏が「寂しい誕生日」。過去には「女学院パーティー」も

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(写真:代表撮影/Inter-Korean Summit Press Corps/Lee Jae-Won/アフロ)

北朝鮮の金正恩党委員長が4度目の中国訪問を行った。朝鮮労働党機関紙の労働新聞が8日付で報じたところによると、7日から10日の日程で訪中しているという。習近平国家主席の招請に応じたものとされているが、金正恩氏はどのような心境で訪中しているのだろうか。なぜなら、8日は金正恩氏の誕生日だからだ。

米財務省が金正恩氏を制裁指定する際に発表したところによると、同氏は1984年生まれで、今年で35歳になったことになる。北朝鮮では、金日成主席と金正日総書記の誕生日、4月15日と2月16日はそれぞれ「太陽節」「光明星説」とされ、最も重要な祝日とされている。金正恩氏はいまのところ1月8日を祝日としていないが、過去には誕生日に合わせて派手なイベントをぶち上げたこともあった。

2014年には、金正恩氏の「マブダチ」を自称する米プロバスケットボールNBAの元スター選手、デニス・ロッドマン氏が訪朝。金正恩氏の誕生日にバスケットボールのエキシビジョンマッチを開き、さらにサプライズらしき演出で金正恩氏を大喜びさせた。

(参考記事:【動画】金正恩氏の誕生日を祝うデニス・ロッドマン

この様子は朝鮮中央テレビでも放映され、翌日の労働新聞の1面にも掲載された。ミーハーなイベントではあったが、それまで確かでなかった金正恩氏の誕生日がこれで明らかになり、謎多きプライベートの一端を知るうえで大いに役立った。一方、ロッドマン一行を接待するパーティーでは、名門学院から女学生たちがコンパニオンとして動員された。乱痴気騒ぎに付き合わされた彼女たちは陰で泣いていたという。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙

2016年には、1月6日に核実験を強行した。2日後の金正恩氏の誕生日に合わせたのは明らかだ。とはいえ、北朝鮮ウォッチャーの間からは毎年、金正恩氏が自分の誕生日を「民族の祝日」に制定するのでは、との観測が出ているが、今年もそうした動きは見られず、「若さを気にして自制しているのではないか」との分析が各方面から聞かれる。

それでも、自分の誕生日を北朝鮮国内で祝いたい気持ちはあるだろう。その日に訪中するとなれば、金正恩氏の心中も穏やかではないはずだ。そうでなくても、金正恩氏は習近平氏にメンツをつぶされた過去がある。

金正恩氏は昨年3月電撃的に中国を訪問し、26日に習近平国家主席と会談した。その翌日、中国中央電視台(CCTV)がその映像を放映した。その映像からは、これまで見られなかった金正恩氏の仕草や表情を見て取ることができる。

(参考記事:【動画】習近平氏の前で大人しくなった金正恩氏

北朝鮮国内の公開活動では、テレビカメラが回っているのも構わず怒り狂うほど、傍若無人な振る舞いが目立っていた金正恩氏が、ここまで神妙な表情を見せたことに筆者は驚いた。習近平氏からすれば、カメラの前で格の違いを見せつける狙いがあったのだろう。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導

今回の訪中で中国側が宴席を設けることは間違いないだろうが、習近平氏や中国の高官が金正恩氏の誕生日に言及するかどうかに注目される。中国共産党は党の高官の誕生日を公表せず、派手に祝うこともないとも言われる。

毎年派手なパーティーを開いてご満悦だった金正恩氏にとって、今年の1月8日はいささか不本意な誕生日になるかもしれない。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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