「金正恩は、中で殺している」北朝鮮の処刑方法に変化

金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮の人権問題が、素通りされそうな雰囲気だ。トランプ米大統領に対しては、米朝首脳会談を控え、数多くの人権団体、脱北者団体から「人権問題に言及して欲しい」との要望がなされてきた。

しかしトランプ氏は首脳会談後、米FOXニュースのインタビューで、他の国々も「悪事」を働いてきたと述べ、金正恩政権の人権侵害を軽視したのだ。

北朝鮮の人権問題のひとつに、他の国では犯罪にならないような行為で処罰が行われている実態がある。死刑の執行対象も非常に広く、適用が極めて恣意的だ。

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韓国の政府系シンクタンク・統一研究院が発行した「北朝鮮人権白書2018」は、比較的最近になって韓国入りした脱北者の証言に基づき、北朝鮮で数多くの処刑が行われている実態を報告。とくに、韓流ドラマを視聴したり、流通に関わったりした罪で処刑される事例が増えていると指摘している。

黄海南道(ファンヘナムド)碧城(ピョクソン)在住で2017年度に脱北した人は、同年2月に麻薬と韓流ドラマの視聴、流通で20人が銃殺されたと証言した。また、別の脱北者は、2015年3月に平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)で、3~40代男性5人が、同じ容疑で銃殺されたと証言している。

かつては軽い処罰だった韓流ドラマの視聴、流通に対する処罰が強化されたのは、2013年4月に金正恩氏が「録画媒体を見たり売ったりした者は、労働鍛錬隊または教化所(刑務所)送りにせよ」との指示を下してからだ。

通常は3年から15年の実刑判決が下されるが、同年9月には両江道の三池淵(サムジヨン)で、韓流ドラマを見たり、K-POPを聞いたり、売った者は死刑にするという布告があり、実際に見せしめとして処刑が行われたとする証言もある。また、両江道の恵山でも農林大学の学生を含む3人が、麻薬と韓流ドラマの流通に関わったとして銃殺された。

ある女子大生は、韓流ビデオのファイルを持っていたというだけで拷問され、悲惨な運命に追いやられた。

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一方、処刑が行われる形には変化が見える。

2017年に脱北した40代男性は、金正恩政権になってから公開処刑そのものは減少したが、今では「中で殺すようになった」と述べ、非公開処刑が増加していると証言した。これは2016年に金正恩氏が「公開処刑を禁止する」との指示を下したことによるものと思われる。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、当時、人民保安省(警察庁)など全国の司法機関に「公開処刑を禁止することについて」という金正恩氏の指示文が伝えられたという。これには「群衆を集めて死刑を行う『群衆審判』『公開銃殺』を禁じる」という内容が書かれていた。銃殺そのものを禁止せよというものではなく、非公開で処理せよという意味だ。

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公開処刑禁止の理由について、情報筋は次のように説明した。

「当局は住民を無条件に屈従させるために公開処刑を続けてきたが、弊害も馬鹿にならないと考えているようだ。国際社会に生々しい状況が知られることを恐れて、禁止の指示を下したのではないか」

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言うまでもないことだが、非公開にしたからと言って、北朝鮮の人権状況が改善したわけでは全くない。