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北朝鮮の新商売「美人女子大生レストラン」が絶好調

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩夫妻とモランボン楽団(朝鮮中央通信)

北朝鮮の金正恩党委員長は非核化を宣言し、国際社会に経済制裁を解除させ、国内経済の発展に注力する方針を掲げている。しかし、北朝鮮に繰り返し騙されてきた国際社会は、掲載緩和に慎重だ。北朝鮮経済が制裁の圧迫から解放される日は、まだしばらく先のことであり、それまではあの手この手でしのがねばならない。

そんな窮状をしのぐための手段のひとつが、「美人女子大生」の派遣業だ。

中国などで営業してきた北朝鮮レストランは、ときにアイドル並みの人気を博した美人ウェイトレスらの歌と踊りを売り物に、外貨獲得の柱のひとつとなってきた。

(参考記事:美貌の北朝鮮ウェイトレス、ネットで人気爆発

ところが、国連安全保障理事会の制裁決議が加盟国に対し、北朝鮮労働者の受け入れを禁止。北朝鮮レストランも営業が難しくなってしまった。それを乗りるための苦肉の策が、女子大生を実習生として派遣するやり方なのだ。

米政府系のラジオ・フリー・アジアは11日、中国の対北朝鮮情報筋の話として「北朝鮮との国境に面した中国・丹東市のあるレストランで、20代の美貌の平壌女性が従業員として働いている。彼女らは平壌商業大学の学生で、実習生の身分で働いている。一般の労働者並に1日12時間以上も働いているのに、給料をもらえていない」と伝えた。

情報筋はまた「彼女らは一様に容姿に優れ、中国語の会話もできるため、現地の客から良い反応を得ている」とも語った。

こうした実態については、デイリーNKも今年2月の時点で伝えている。RFAの報道を見る限り、「平壌美人」を採用したレストランの商売は絶好調のようだ。

(参考記事:【写真】中国で働く北朝鮮の女子大生たち

実習生らは、張鉄久(チャン・チョルグ)平壌商業総合大学の学生たちだ。張鉄久とは、故金日成主席の抗日パルチザン時代の炊事兵だった人物で、その名を冠した大学は、レストランやホテルなど観光分野で働く人材の養成機関となっている。卒業後は外国人が利用する高級ホテルやレストランに配属され、海外に派遣されるチャンスもあることから、北朝鮮女性の間で非常に人気が高い大学であるとされる。

(参考記事:20代美人ウェイトレスを直撃…「北朝鮮レストラン」の舞台裏

中国の労働法は、学生との雇用契約は認めていない。つまり、学生のバイトやインターンは、労働法の保護の対象となる労働者とは定義されないのだ。つまりは法律の盲点をつき、労働者とは認められない女子大生を中国人経営のレストランに派遣して、制裁破りを行っているのだ。

北朝鮮が核開発を続行していたならば、いずれこうした行為に対しても、制裁の網がかかった可能性があった。しかし現在の情勢下では、中国政府もさほど厳しい態度を取ることはないと思われる。

今後しばらく、丹東のレストランでは平壌美人の姿を見る機会が増えるかもしれない。

(参考記事:【写真特集】北朝鮮の美女たちを激写/2018年

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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