「北朝鮮で反金正恩の民衆蜂起も」米国政界でふくらむ期待

金正恩氏(朝鮮中央テレビより)

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、米共和党のジョニ・アーンスト上院議員(アイオワ州選出)は9月29日午前、ワシントンDCの有力シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)の懇談会で次のように語り、国際社会による経済制裁が北朝鮮社会に変化を起こす可能性を指摘した。

「金正恩政権が北朝鮮内部の住民の生活水準を維持できなくなったら、民衆蜂起が起こる可能性がある」

ことごとく「血の粛清」

北朝鮮国民は1990年代半ばのひどい飢餓状況を耐えて以降、2000年代以降は食糧問題などの基本的欲求がある程度満たされており、その生活水準が再び過去のように低下した場合、当局に対して多大な反感を持つようになるはずだ――これが、アーンスト議員が言わんとするところだ。

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一方これと同じ日、やはりワシントンDCの有力シンクタンクである外交問題評議会(CFR)の懇談会に参加したジャック・リード上院議員(民主党・ロードアイランド州選出)もこれと似た発言を行った。

リード氏は、金正日時代には北朝鮮の住民に雑草を食べさせながらでも核開発を続けることができたが、金正恩時代に入ってからは経済状況が改善し、住民の欲求も強まっている。仮に、金正恩政権が一般住民の痛みはものともしないとしても、エリート層が不満を持つようになれば、制裁緩和のため核開発で譲歩することもあり得る――。

このような主張は、一部は正しいが、一部は間違っている。北朝鮮の国民は、洗脳された「ロボット人間」ではない。制限されているとは言え、海外の情報と接する機会も増えており、自分たちがどのような状況に置かれているかも知っている。だから、金正恩体制に反感を募らせることはあり得るし、一部でそれはもう始まっている。

しかし、北朝鮮の独裁体制の残忍さを甘く見てはいけない。過去にも、民衆や軍隊の不満が表出したことがあったが、そのすべてに「血の粛清」が加えられた。

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果たして、実際にそのような動きが出てきたとき、米国はどのような態度を取るのだろうか。黙ってみているだけでは、蜂起した民衆グループが皆殺しにされて終わりである。だからと言って、北朝鮮が核武装してしまった今、米軍が民衆蜂起を助けるため素早く介入するとも思えない。米国は、核兵器を持っていないシリアにさえ、地上部隊を送ろうとしないのだから。

仮にも、北朝鮮の内部変化に期待したいのならば、米国(そして日本や韓国)の政治家は今から、北朝鮮を民主化に導く取り組みを始めるべきだ。そのような努力があって初めて、北朝鮮社会で変化が起き始めた際、それが重要な意味を持ち得る。

そのためにはまず、脱北者の人権問題に取り組むのが緊要だ。中国政府は、脱北者を摘発し強制送還することで、北朝鮮の人権侵害を助長し、金正恩体制が動揺するのを阻んでいる。

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この中国の行いに対し、国際社会は国連などの場で総攻撃を加えるべきだ。そこで中国から譲歩を引き出すのは、金正恩体制がすぐに核兵器を放棄するよう望んだり、起きるかどうかわからない民衆蜂起に期待したりするより、よほど現実的ではないだろうか。

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