反米姿勢を強調しながら化粧品工場を視察する金正恩氏
北朝鮮が反米姿勢を強めている。
2月4日、北朝鮮の最高意思決定機関とされる国防委員会は、声明を通じて「米国を相手にこれ以上対座する必要もなく、相手にする用意もない」と主張しながら、アメリカ本土への直接攻撃まで示唆しながら威嚇した。
北朝鮮の労働新聞は、先月末から続けざまにオバマ氏の「崩壊」発言に反発する姿勢を見せているが、最近の金正恩氏は軍部隊の視察も多く、やはりきな臭さを感じざるをえない。
ところが、声明で「わが軍隊と人民は敗北だけを記録した米国の恥ずべき歴史を締めくくることになる終局的滅亡の最後のページをほかでもない米国の地でわれわれの白頭山の銃剣をもって見事に書いてやることを決心した」と威勢のいい声をあげた翌日5日、労働新聞は金正恩氏が化粧品工場を視察する記事を1面、2面にわたって写真入りで掲載。どうも方向性がチグハグで予測不可能だ。
ナチュラルで刺激の少ない化粧品を開発せよ!
妹の与正氏と「平壌化粧品工場」を現地指導した金正恩氏は、「ナチュラルで刺激の少ない化粧品を開発せよ」と指示したが、写真では、いつものごとくタバコを吸いながらの現地指導だ。
化粧品にはアルコールが使われていることから工場は「火気厳禁」のはずだ。「最高尊厳の辞書に禁煙という二文字はない」とでも言いたいのかもしれないが、美容化粧品を作る工場で「美容の大敵」であるタバコをの煙をくゆらせながら「ナチュラルで低刺激な化粧品を作りなさい」と指示するのは、いかがなものか。
そんな正恩氏は、現地視察で北朝鮮独自の化粧品ブランド「銀河水化粧品」について次のように語ったという。
「工場で生産している『銀河水化粧品』の人気が高いが、それに満足せず世界的に有名な製品と堂々と競争できる化粧品の生産闘争をさらに力を入れなければならない」
もしかして、正恩氏は「銀河水化粧品」を世界市場に売り込んで、シャネルやディオールと闘うつもりなのか。だとしても、「化粧品戦闘」における世界制覇の野望の前途は暗い。
そもそも、北朝鮮の平壌市内で最も人気があった化粧品は「ポムヒャンギ(春の薫り)」であり、正恩氏イチオシの「銀河水化粧品」の人気が北朝鮮で高くない。
正恩氏が、北朝鮮でさえ人気ランキング最下位だった「銀河水」をイチオシする理由は、夫人の李雪主氏が「銀河水管弦楽団」に所属していたからかもしれない。「銀河水」とは李雪主氏をイメージした言葉であり、だからこそ正恩氏は「銀河水化粧品」をイチオシしているというのは深読みしすぎだろうか。
アメリカに対して噛みつきながら、タバコをくわえて化粧品工場を視察して、「銀河水化粧品で世界と闘え!」と指示する最高指導者・金正恩氏。その不可解な言動には、やっぱり首をかしげざるをえない。