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伊達公子ジュニアテニスプロジェクト第1期終了! 伊達さんがジュニアに伝え続けていきたいこととは!?

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
第1期のジュニア、右から、山上、成田、伊達さん、永澤、奥脇(写真/神 仁司)

 元プロテニスプレーヤーの伊達公子さんが、生涯契約を締結しているヨネックス株式会社と組み、2019年1月に発足させた、15歳以下の日本女子ジュニア選手を対象とした育成プロジェクト「伊達公子×ヨネックスプロジェクト」。第8回キャンプ(2月27~28日、東京・スポル品川大井町インドアテニスコート)が開催され、第1期生である成田百那、奥脇莉音、山上夏季、永澤亜桜香が卒業を迎えた。このジュニアプロジェクトの中核を担う伊達さんは、卒業となるジュニアたちにメッセージを送った。

「みんな2年間本当にありがとうございました。みんなは1期生ということで、私にとっても初めての試みで難しい部分もあったし、うまく伝えられなかったこともあったと思います。でも、ベースにはとにかくみんなが成長すること、強くなってほしいことがあったことは、信じてほしいし、伝わっていればと思います。この2年間で、目標に掲げていたグランドスラムに近づいて、出場することはまだまだ遠いという現実、そこはやはりこだわりながら、みんなが卒業しても、しっかりと夢を見て、受け止めて、その先にも希望をもってやってほしい。これから離れたとしても、みんなを見守る気持ちは変わらないし、接していくことにもなると思うので、しっかりと自分の夢に向かって、夢に早く近づけるようにしてほしい。同時に、1期生であったプライドと、プライドを持ちつつも謙虚に学ぶ姿勢と自分がチャレンジする気持ちを、しっかりと明確に持ち続けながら、これからもテニスをやっていってほしい。またコートで会いましょう」

 今回のジュニアプロジェクトは、2年目に入ると大きな変化が起こった。2020年6月に開催された第5回キャンプからは、日本テニス協会(以下JTA)からのサポートが加わり、同時に、JTAオフィシャルスポンサーになった大正製薬株式会社からの協力も得られることになった。

 さらに、ジュニアキャンプだけでなく、伊達さんは、日本では8番目の国際テニス連盟(ITF)公認ジュニア大会の新設も手掛けた。ITF公認のジュニア大会「リポビタン国際ジュニア supported by伊達公子×ヨネックスプロジェクト」(2020年11月30日~12月6日、愛媛県松山市・愛媛県総合運動公園)は、コロナ禍ではあったが無事に開催され、ジュニアプロジェクトに参加している奥脇が、女子シングルス準優勝という結果を残した。

 ただ、予想外だったのは、2020年に起こった新型コロナウィルス感染症のパンデミック(世界的大流行)だ。ジュニア選手たちは、海外遠征に行けないだけでなく、日本国内でも試合でプレーすることがままならず、キャンプで学んだことを発揮する場を失ってしまった。第一目標であった、この4人をグランドスラムのジュニアの部へ出場させることは、第1期のプロジェクト中には実現できなかった。

「こればっかりは考えてもしょうがないので……。もちろん彼女(ジュニア4人)たちにとっての、1年、2年は大きいことは事実ですけど、この時期(コロナ禍)だからこそ取り組めることも絶対にあった。考えるきっかけだったり、そういう風に前向きにとらえるしかないんじゃないかな」(伊達さん)

 ジュニアキャンプの卒業セレモニーでは、16歳の奥脇が、2021年4月にプロへ転向する予定であることを、伊達さんたちの前で宣言した。ジュニアキャンプに参加したからこそできた奥脇の決断だった。

 依然として、日本女子テニスの現状は、テニス4大メジャーであるグランドスラムで4回優勝した大坂なおみ(WTAランキング2位)が実力的に突出しているものの、世界のトップ50は大坂だけ、世界のトップ100では大坂を含めて3人しかおらず(2020年3月8日付けで)、決して日本の選手層が女子プロテニスWTAツアーのトップレベルで厚いとは言えない。

 だから、伊達さんたちが、日本女子の若手を育てることは非常に重要であり、急務であることに変わりはない。

 大坂が、日本人選手では前人未到のグランドスラムで4回優勝という実績を残したことを目の当たりにし、伊達さんも含め、日本テニス関係者の誰もが経験したことのない新しい局面を迎えている。とはいっても、伊達さんたちアドバイスする側が、肩に力が入り過ぎてもいけないし、焦ってもいけない。ジュニア育成に魔法なんかはない。

「(大坂が)4つ取ったからといって、私たちが変わることはないですけど……。夢というか、目標になるものができる、というのは彼女(ジュニア4人)たちにとっては良いこと。同時に、彼女たちは世界ナンバーワンになるしか、大坂なおみを超えることはないわけで、そういう意味では大変というか。(ジュニア4人は)そんな風には考えていないかもしれないけどね。だけど、これまで成し得なかったことを(大坂が)成し得たわけだし。そうすると、これからの世代の子たちは、彼女(大坂)を超えるのは、相当大変なことだという現実が生まれてしまった。でも、そこには、日本人でやり遂げたということをしっかりと受け止めることも必要なのかな。それがどういうことなのか。彼女(大坂)のフィジカルが恵まれていた。アメリカにいたから成し遂げられた。それらだけではないと思う。体の才能に恵まれている。テクニックの才能に恵まれている。そうしたら1位になれるのかといったら、そうではない。才能には努力も必要で、それが兼ね備えていないと成功はできない。このことは、彼女たち(ジュニア4人)に置き換えることができる。そういうことはずっと言ってきているし、ハードルがかなり高くなったことも伝えていかないといけない」(伊達さん)

 すでにジュニアプロジェクトの第2期生の募集が始まっている。対象年齢は17歳以下に変更され、また参加人数を8名に増やす。募集締め切りは、3月22日までとなっている。

ただ、キャンプ拠点にしているスポル品川大井町は、もともと期間限定の施設であるため、2021年8月以降は、ハードコートを備えた別会場でキャンプを行う予定だ。

 今後、ジュニアプロジェクトの卒業生の中から、未来のプロテニスプレーヤーとして、グランドスラムをはじめとしたワールドツアーで活躍して成功する者が現れるだろうか。ジュニア選手たちは、一般社会ならまだ子供とみなされる10代のうちに、大人と同様の強い覚悟と不断の努力をもってテニスに臨んでいかなければならない。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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