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錦織圭、ローランギャロス(全仏テニス)で2年ぶり3度目ベスト8! 準々決勝でのナダル戦に勝機はあるか

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
ローランギャロス4回戦で、3時間55分におよんだ5セットマッチを制し、2年ぶり3度目の全仏ベスト8に進出した錦織圭。準々決勝は、“キングオブクレー”のナダルと対戦する(写真/神 仁司)
ローランギャロス4回戦で、3時間55分におよんだ5セットマッチを制し、2年ぶり3度目の全仏ベスト8に進出した錦織圭。準々決勝は、“キングオブクレー”のナダルと対戦する(写真/神 仁司)

 2日がかりの5セットの試合に勝利した錦織圭は、コーチたちに向かって右拳を高く上げて笑顔を浮かべた――。

 ローランギャロス(全仏テニス)4回戦で、第7シードの錦織圭(ATPランキング7位、5月20日付)は、ブノワ・ペール(38位、フランス)を、6-2、6-7(8)、6-2、6-7(8)、7-5のフルセットで破って、2年ぶり3回目のベスト8進出を決めた。

 グランドスラムでは、昨年のウィンブルドンから4大会連続のベスト8となり、グランドスラム通算では11度目のベスト8になる。

「長い2日間でした。体は何とかもっていましたけど」

 こう振り返った錦織は、試合の立ち上がりから激しいラリー戦をして、ペールとの激しい駆け引きを繰り広げた。

 バックの打ち合いで主導権を握りたいペールに対して、「彼のディフェンスがいいので。特にバックハンドは」という錦織は、フォアで主導権を握りたいため、錦織からバックのダウンザラインへ展開。フォアの打ち合いになってから、錦織がフォアハンドストロークで伸びるボールをコート深く打ち込んで、ペールのフォアのミスを誘った。

 第1セットでは、錦織が第3ゲームから6ゲーム連取でセットを先取した。第2セットはお互いワンブレークずつでタイブレークへ突入したが、錦織にはセットポイントが1回あったがとりきれず、ペールが第2セットを奪った。

 錦織が2ブレークで第3セットを取ってセットカウント2-1になった時点で、テニスコートは暗くなっており、21時35分に日没サスペンデッドが決まった。

 翌日6月3日に、12時41分に試合は再開されたが、ペールはトリッキーなドロップショットで前後にゆさぶりをかけ、錦織に気持ちよくストロークを打たせないようにした。

 第4セットはお互いワンブレークずつでタイブレークへ。お互い2回ずつダブルフォールトをするという極度の緊張感の中でポイントが進んだが、錦織は、6-5、8-7で2度のマッチポイントをバックハンドのミスで取ることができなかった。逆にペールは、2度目のセットポイントで、バックのダウンザラインを打ち込み、錦織がフォアをネットにかけ、2セットオールとなった。

「マッチポイントがありながら、タイブレークを落としたのはつらかったですね。体力的にも。お互いそうですけど、最後の方はよく動けなかったですし、気力で戦っていた」

 こう振り返った錦織は、小雨が降り続ける中、ファイナルセット第4ゲームで先にブレークされ1-4と劣勢になった。

「正直ファイナルセットは、あんまり勝てると思ってなかった。相手のプレーも良かったですし、先にブレークをされて折り返しましたけど、特にサービスゲームはきつかった。常にプレッシャーを感じた中で、サービスゲームをプレーしていた」

 第7ゲームで錦織がブレークバックしたものの、第8ゲームでペールが2度目のブレーク。だが、「最後の方にやっとストローク戦で主導権を握った感じがした」という錦織が、第9ゲームから4ゲーム連取で、3時間55分の激戦の末、曲者ペールを振り切った。これで5セットをフルで戦った時の錦織の成績は、23勝6敗になった。

「もし、もっとリターンを攻撃的に打てていたら、ウィナーをいくつか打てていたら、セットを取れていたかもしれないし、試合に勝てたかもしれないけど、どうだったかは分からない」

 こう語ったペールは落胆を隠せなかったが、錦織に対してウィナーを55本決めたものの、フォアのミス35本とバックのミス28本を含む合計79本のミスをし、錦織相手にこのミスの数は多過ぎた。

 一方、錦織は、フォア30本、バック21本を含む57本のミスをしたが、フォアのウィナー15本とバックのウィナー7本を含む合計38本のウィナーを決めた。 

 準々決勝で、錦織は、第2シードのラファエル・ナダル(2位、スペイン)と対戦する。対戦成績は、錦織の2勝10敗で、ローランギャロスでは2013年以来の対戦となる。

 32歳のナダルは、ローランギャロスで大会史上最多の11回の優勝を誇る“キングオブクレー”で、ローランギャロスではマッチ90勝2敗というずば抜けた成績を残して他の追随を許さない。

 2019年シーズンでは、前哨戦のマスターズ1000・ローマ大会でようやく今季初タイトルを獲得して、ローランギャロスに乗り込んできたナダルだが、ローランギャロス準々決勝に勝ち上がるまで、3回戦で1セットを落としただけで、上々の仕上がりを見せている。

「(ナダルは)クレーでは一番強い選手ですし、特にこの全仏では驚異的な記録を持っている。一番タフな相手ではありますね。崩すのがすごく難しい。ディフェンスもあるし。やっぱり浅いボールが行くと、怖さのある選手」

 錦織の準々決勝は、6月4日に行われる予定だが、不運なことに錦織は3日連続の試合となる。3回戦に続いて4回戦でも、メンタルもフィジカルも負担のかかる5セットの戦いを強いられた錦織が、どれだけリカバリーできるかがカギになる。

「たぶんフレッシュ(な状態)は無理です(苦笑)。どれだけ戻って来るかわからないですけど、どうにかしてリカバリーしたいと思います」

 4回戦で錦織は腰だけでなく、左太ももにもテーピングをして戦っており、厳しい状態であることは否めない。たとえ錦織が100%のコンディションで戦っても、ナダルに勝つのは簡単なことではなく、ましてやレッドクレーでのナダルの強さとなるとなおさらで、錦織が勝機を見いだすのは難しいといわざるをえない。

 ただ、勝負には絶対はない。「頑張ります」という錦織が、今もてるすべての力を発揮してナダルと戦って、どんな結果を残すのか見届けたい。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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