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大坂なおみ、女子テニス世界1位死守! “大坂なおみ時代”の確立のために、大坂が真の女王になるには!?

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
大坂なおみが世界ランキング1位を死守した。とはいえ、まだ女子テニス界の混戦は続き、“大坂なおみ時代”が盤石になるのはまだ先のことだ(写真/神 仁司、使用機材ソニーα9)
大坂なおみが世界ランキング1位を死守した。とはいえ、まだ女子テニス界の混戦は続き、“大坂なおみ時代”が盤石になるのはまだ先のことだ(写真/神 仁司、使用機材ソニーα9)

 WTAマイアミ大会直後となる4月1日付けのWTAランキングで、大坂なおみは、引き続き世界1位を守る。

 第1シードとして戦ったマイアミ大会で、大坂は3回戦でシェ・スーウェイ(74位、台湾)に6-4、6-7(4)、3-6、逆転負けを喫して足元をすくわれた形になった。

 大坂の敗戦を受けて、シモナ・ハレプ(3位、ルーマニア)かペトラ・クビトバ(2位、チェコ)が、マイアミ大会で決勝に進出すれば、大坂を抜いて1位になる可能性があった。  

 クビトバは準々決勝で敗れていたが、ハレプが準決勝まで進出して、世界1位の奪還まで、あと1勝のところまでこぎつけていた。

 だが、準決勝でハレプは、カロリナ・プリスコバ(7位、チェコ)にストレートで敗れたため、大坂はかろうじて世界1位を死守することになる。

 おそらく大坂は、この結果を気にもかけていないだろう。もし1位から陥落したとしても、肩の荷が下りて少し気が楽になっていたかもしれない。というのは、大坂はもとより世界1位に固執していないからだ。

 かつて大坂はプロになる時に、グランドスラムで優勝することと、世界1位になることを目標に掲げていた。

 だが、プロツアーで戦っていく中で、世界ランキングのことを大坂は気にしないようになり、以前と比べて彼女の目標には変化が起こっていた。

「子供のときは、厳しい練習の目的として夢を追い求めたいものです。誰にとってもグランドスラムで優勝することとナンバーワンになることは、とても大きなモチベーションになる要素です。(昨年の)USオープンで優勝した後、予選なしで大会に入ることができるのなら、ランキングのことは気にかけないようにしようと考えるようになりました。自分がシード選手になれば、大会では1回戦が不戦勝になる、それが次のゴールになりました」

 2019年1月、オーストラリアンオープン(以下全豪)開幕直前に、大坂には結果次第で、大会後に世界ナンバーワンになれる可能性があった。だが、その時は大坂を含めて合計11人が、ナンバーワンになれる可能性があったため現実味に欠けていた。

「トップ10の誰かが、ナンバーワンになれる可能性があるということを人から聞きました。でも、私にとっては、自分が思う本当のゴールではありません。この大会で、いいプレーがしたいだけなのです。その後、自分のランキングがどうなるかを見るだけです。ランキングが、自分の関心事になることは決してありません」

 大坂は、つとめて1位のことは考えていないことを自分に言い聞かせるようにして、それが自分のベストプレーを引き出すことができるのだと信じていた。

「私のメインゴールは、この大会で優勝することです。その後にランキングはついてくるものだと思います。一つのゴールにフォーカスするのがより良いことだと思います」

 結果的に、この大坂の集中の仕方は良いテニスをもたらし、日本人初の全豪女子シングルス初優勝を成し遂げ、2018年USオープンに続いてグランドスラム2勝目を挙げた。

 そして、大会直後の1月28日付けのランキングで、日本人初、そしてアジア人初の世界ナンバーワン選手が誕生し、21歳で大坂は世界の頂点に登り詰めたのだった。

 世界歴代26人目の世界ナンバーワンとなったが、歴史的な瞬間にも関わらず、大坂は初の1位に関して格段の喜びを見せなかった。

「私がこの大会(全豪)で優勝すれば、ナンバーワンになれると話していましたが、私はそれを成し遂げることができました。でも、ランキングは決して自分の本当のゴールではありませんでした。この大会で優勝することでした。次の大会でプレーする時に、ナンバーワンになった自分の名前を見る時、何かを感じるでしょう。でも、今は優勝トロフィーを手にできた方が嬉しい」

 妹・なおみのめざましい活躍を受けて、プロ選手として活動している姉・まりは、次のようなコメントを残している。

「一言で表現するとしたら、“アメージング”です。私たちの人生すべてをかけて取り組んできた私たちの夢が実現したのです。彼女を本当に誇りに思います」

 大坂の世界ナンバーワン在位は、4月から第10週目に入る。

 まだまだ2位や3位との差はわずかで、“大坂なおみ時代”が盤石になるのはまだ先のことで、当分世界1位が入れ替わる可能性は、たびたび訪れ、女子テニス界の混戦状態は続くことになる。

 大坂が、ツアーコーチをジャーメイン・ジェンキンスコーチに変更して、マイアミが2大会目となったが、新しいコーチとの取り組みが大きな結果につながるには少々時間が必要だろう。

 すでに世界ナンバーワンになりグランドスラムタイトルも獲得した大坂だが、彼女が真の女王になるには、まだまだ多くの経験を積まなければならない。数々の成功を収めたり、試練を乗り越えたりして、大坂が最も尊敬する、かつての絶対女王・セリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)のような存在になれるのかもしれない。そして、その時こそ、群雄割拠の女子テニス界を制して、“大坂なおみ時代”が確立するのだろう。

 幸い大坂には、プロテニスプレーヤーとしての時間がまだまだ多く残されている。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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