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史上3人目!杉田祐一が、28歳でプロテニスプレーヤーとしてつかんだ大きな勲章 インタビューPart3

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
アンタルヤ大会の優勝トロフィー手にして、笑顔の杉田祐一(写真/神 仁司)
アンタルヤ大会の優勝トロフィー手にして、笑顔の杉田祐一(写真/神 仁司)

 プロテニスプレーヤーの杉田祐一(ATPランキング46位、8月21日付け)は、6月に男子ワールドテニスツアーのATPアンタルヤ大会で、見事ツアー初優勝を果たした。

 その後も好調をキープしている杉田は、8月28日にアメリカ・ニューヨークで開幕する今季最後のテニス4大メジャーであるUSオープンに本戦初出場する。今後の戦いをどう見据えているのか杉田に聞いた。

――プロ11年のキャリアを振り返って、杉田さんのテニス人生の中で、最大の危機を挙げるとしたら何ですか?

杉田:危機というか、一番きつかったのは2年目ですね。ランキングを落として、そこから上げて行く時がしんどかったというか、かなりのダメージはありましたね。

(プロ転向直後の2006年10月のATPランキングは538位だったが、2008年3月には1060位まで落ちた)

――手を差し伸べてくれる人々がいたとは、具体的にどなただったのでしょうか。

杉田:誰ひとりというわけではないと思うんです。いろんな形で、目指す環境があったということですね。もちろんスポンサーもそうですし、周りのコーチ、トレーナー、トレーニングコーチ、そういう人達が本当に熱心にしっかり考えてくれて、熱意をもって接してくれたというのが一番ですよね。

――現在コーチとは何を課題にして取り組んでいるのですか。

杉田:パナマのブライアン・ネロスがツアーコーチをしてくれています。ボブ(・ブレットコーチ、ボリス・ベッカーや松岡修造を指導した名コーチ)の紹介です。テニス自体は、今非常にいいので、ストロークやサーブ全部が崩れないようにしています。何かしら悪くなった時に、しっかり修正してくれるのが僕のコーチです。全体的にレベルアップしていかないといけないのは僕自身もわかっているので。

――グランドストロークで落ち着いてプレーできていますよね。

杉田:ストロークの攻撃力は上がったと思っています。やっぱりどういうショットが、相手にダメージになるのかというのは、いろんなトップの選手と対戦する中で、発見することが多かったので、そこは徐々にですけどパワーアップしていると思います。

――2016年2月に初めて杉田さんは、世界のトップ100を切りました。そして同年8月、当時102位の杉田さんは、マスターズ1000・シンシナティ大会で、予選から上がって3回戦へ。1回戦で、アレクサンダー・ズベレフ(当時27位)に6-7(4)、6-4、6-2に勝利。2回戦ニコラス・マユ(42位)に勝利。3回戦でミロシュ・ラオニッチ(当時6位)にフルセットの惜敗。ツアーでもまれるというか、レベルの高い舞台で試合をして、実力者に勝つことによって、杉田さんの実力も上がって来ている感じですか?

杉田:そうですね。ズベレフ戦もラオニッチ戦も大きかったですね。2016年シーズンに、たくさんのトップ選手とできたので、そこは大きなポイントになっていますね。

――1歳下の錦織圭選手の存在は、杉田さんにとってどんなものですか。

杉田:いやぁ。尊敬していますし、あれだけずっとあのレベルでやっているというのは、本当に大変なことです。でも、僕の優勝も、彼のせいで霞んでしまう(大笑い)。逆に、彼の成績がなかったら、あそこ(アンタルヤ)で決勝前に満足していたかもしれない。初めての決勝であわてることなくできたのは、彼のおかげかもしれないです。けど、この優勝が霞んだのも、彼のせいだなぁ。ハハハ。

――自己最高ATPランキングが43位(7月17日付け)なって、グランドスラム(年4大会)だけでなくマスターズ1000(年9大会)でも本戦ストレートインができるポジションになっていきます。これから1年、杉田さんにとって大きな勝負なりますね。

杉田:グランドスラムのシード権(シードの数は32で、ランキング上位から決まっていく)を取れる位置まで上げることを大事に思っています。シードを取れれば、1回戦からすごい強い選手と対戦することもなくなりますし、より勝ちやすい環境になってくる。あとは、マスターズが必須になってきた場合に、そこで勝てないと弾き飛ばされてしまうので、そこを踏まえた準備をしていかないといけない。

――今後のツアーやグランドスラムでの目標は? 

杉田:やっぱり来シーズンのスタートをいい形で切ることが、本当にここ(ツアーレベル)で定着するための大きな課題です。そのためには、先ほども言ったようにシードなんですよ。いろんな大会でシードを取れるようになるには、この年末までが勝負だと思っていて、そこで成績を残せれば、もちろん来年のスタートが、たぶんいい形でできると思うので、そこを目標にしたいですね。そうできれば安定して皆さんにいい報告ができるようになるかもしれないです。年末までできる限りランキングを上げて、いい形で今年を終えることが、来シーズンに向けて一番大事かなと思います。

――2020年東京オリンピックには出場したいですか。

杉田:年齢的にもいい時期になっているので、本当にいいパフォーマンスができるのはそこかもしれないですね。そこまでに上位に食い込んでいれば、本当にいい成績を出せる可能性があると思っているので、2020年というよりそこまでに、どういった道のりでそこへ辿り着けるかが勝負になって来ると思っています。

(おわり)

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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