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聖火リレーの費用、116億円は高いのか。ロンドン大会の聖火リレーはいくらだったのか。

谷口輝世子スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、東京オリンピック・パラリンピックの聖火リレーが続けられている。

 4月22日号の週刊文春によると、聖火リレーの費用は全国の自治体が負担しており、その総額が少なくとも約116億円に及ぶという。

 東京大会の聖火リレーだけ、費用がかかっているのか。それとも他の開催国でも聖火リレーにはお金がかかり、公金がつぎ込まれてきたのだろうか。

 2012年ロンドン大会の聖火リレーにかかったコストを見てみよう。

 2012年のロンドン大会の聖火リレーについて、ヘルプ・ミー・インべスティゲイトという団体が各警察当局や地方自治体に情報公開請求を行った。

http://helpmeinvestigate.com/olympics/the-6-5m-cost-of-policing-the-olympic-torch/

 それによると聖火リレーの警備に合計約650万ポンド(9億7400万円)を費やしたことがわかったという。ヘルプ・ミー・インべスティゲイトでは各警察当局が負担した費用をグラフ化掲載。他からの助成金が含まれているという但し書きをつけている。

 2012年のロンドン大会の聖火リレーの警備には、日本円換算で10億円近い税金が使われている。これらは聖火リレーの警備に対してそれぞれの地域の警察当局が負担したコストの合計なので、週刊文春の報じた116億円と単純には比較できない。

 しかし、週刊文春によると昨年度、東京都の聖火リレーの予算は44億円が計上されており、内訳は警備、ランナーの公募業務、看板設置とある。ロンドン大会では前述したように警備にかかった650万ポンド(9億7400万円)以外の費用負担もあった可能性もあり、単純に比較できないが、ロンドン大会よりもはるかに大きな額が投じられていると考えてよいのではないか。

 各警察当局への情報公開請求から、次のようなこともわかっている。総額650万ポンドのうち、286万ポンド(約4億2859万円)は警官とスタッフの時間外の残業労働に支払われていた。警察官を派遣したりするなどの相互援助として約69万ポンド(約1億340万円)かかっている。

 また、2013年3月6日のガーディアン紙電子版は「ヘルプ・ミー・インベスティゲイト」の資料から、以下のような費用のかかったことを伝えている。

・アバディーン市議会とルイシャム市の2つの自治体は、聖火リレー予算のうち7389ポンド(約111万円)を新しいCCTVカメラに費やした。

・ダンディー市の3万ポンド(約450万円)の聖火リレー費用は環境予算から出された。チェスターフィールドでは、アートフェスティバルとフードマーケットの費用が使われた。(本来ならば、聖火リレー以外に使っていた予算を、聖火リレーにあてたということだろう)

 ちなみにロンドン大会の聖火リレーに使われたトーチは、リレー走者が215ポンド(約3万2219円)を支払うと自分のものとして所有できる。2012年6月20日のBBC電子版が伝えている。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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