米国高校野球。投球数制限導入とその「抜け穴」問題。

(写真:アフロ)

 米国の高校野球は今年から全米50州のうち44州で投球数制限規則が導入された。

 中高校生の投手たちが肩やひじを痛めたり、ダルビッシュ投手も経験したトミー・ジョン手術と言われる側副靱帯再建手術を受けたりすることが増えていたからだ。投球数の制限だけで、肩や肘の故障を完全に防止できるわけではないが、少なくともリスクを減らす効果はあると考えられている。

 私が取材した米ミシガン州の投球数制限は次のようなものだ。

(投球制限下での試合についてはこちらの記事『投球数制限は「らしさ」を奪うか』で伝えているので、目を通していただければ幸いです)

 1日105球まで

 76球以上投げた投手は3日間休む。

 51球以上投げた投手は2日間休む。

 26球以上投げた投手は1日休む。

 連投できるのは、前日の投球数が25球以下だった場合だけだ。

 高校生よりも年少の子どもがプレーするリトルリーグベースボールでは、10年前の2007年から投球数制限規則を設けている。

 

 13-16歳は1日95球まで。

 11-12歳は1日86球まで

 9-10歳は1日75球まで

 7-8歳は1日50球まで。

 14歳以下は66球投げると4日間の休養、16歳以下は76球投げると4日間の休養などと休養日数の規則もある。

 しかし、投球数と休養日の規則がこれほど厳格に定められているのに、規則の「抜け穴」があるのだ。逆説的なようだが、米国の高校野球のシーズンが短いことや、小中学生の野球チームが毎日練習しないことが関係している。

 米国は州によって気候が大きく異なるため、高校野球シーズンも州によって異なるが、多くは早春から六月下旬まで。最初の数週間は練習が中心だが、その後の活動期間は試合中心だ。

 学校の野球部は六月下旬で活動が終了するが、夏休みになるとサマーリーグなどと呼ばれる民間主催のリーグに参加する選手が少なくない。これらのリーグはメジャーリーグと米ベースボール協会の定めた「ピッチスマート」という投球数制限と休養日規則を適用しているところもあれば、そうでないところもある。学校の野球部では規則下で投球過多から守っていても、外部のリ―グやトーナメント大会で投げすぎてしまうことがある。 

 

 また、米国では、上位レベルであっても、小学生の野球チームは週7日活動しているところは意外と少ない。週3日練習、週2回試合などというスケジュールが多いようだ。

 子どもは毎日でも練習や試合をしたいと思う。週3-4日の活動では物足りない。親も毎日、もっと練習したほうがよいのではないかと感じる。子どものころから、シーズン毎にトライアウトや入団テストがあり、エリートになるための競争は激しい。

 そのような事情もあって、リーグの異なる2つのチームを掛け持ちする子どもが出てくる。

 例えば、ある投手がチームXで先発し、土曜日に80球を投げたとする。リトルリーグや米ベースボール協会の投球数と休養日規則に従えば、4日間は投げられない。しかし、この選手はチームYにも所属している。Yチームの監督は、この選手が別のチームで土曜日に80球を投げていたことを知らない。リーグも別であれば、公式記録のやりとりもないので、記録上でも把握されていない。この投手は翌日にはYチームの投手として、相当数のピッチングをしてしまう。

 これを防ぐのは、規則でもなく、監督でもない。保護者だろう。掛け持ちすることや二重登録を完全に禁止する必要はないかもしれないが、他のポジションでプレーするなど、監督と保護者で話を通しておく必要はある。

 日本でも、学校の運動部一辺倒だけでなく、学校外のクラブチームとの掛け持ちや、運動部活動をしながら、プライベートレッスンを受ける子どもも出てきている。子どもたちがスポーツできる場を選ぶことができるのは良いことだろうし、掛け持ちを完全に禁止しなくてもよいと思う。

 しかし、掛け持ちによるオーバーユースを防ぐには、監督やコーチだけでなく、複数のチームや学校外のリーグへ送り出す保護者の適切な判断が求められる。競争の厳しさのなかで、簡単ではないかもしれないが、米国の投球数制限の抜け穴を見て、そう思う。