10年前から全員がフルリモートワークな会社の新型コロナ対応が問う「サステナブルに働く」とは?

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新型コロナウイルスの流行で、これをお読み下さっている皆さんのお仕事、暮らしにも様々な影響が及んでいるかと思います。

皆さん、いかがお過ごしでしょうか?

筆者には小学生の子どもがおり、このたびの国の小中高等学校の一斉休校要請に伴って、3月2日(月)以降は完全に在宅リモートワークに切り替えました。元々オフィスに毎日通うワークスタイルではありませんが、リモートワークやリモートでのプロジェクト運営に理解があり、慣れている仕事仲間の皆さんへの感謝が、日を追うごとに増しているところです。

パートナーの状況に寄り添い、不安を軽減する

そんな私がご一緒にお仕事させていただいている会社の一つ、(有)エコネットワークス(以下ENW )は、サステナビリティやCSRを専門に、企業やNGOのレポート制作や翻訳、調査分析、コミュニケーション支援を手掛けています。同社はもう10年余前から、国内外各地にちらばるパートナー全員がフルリモートで仕事をしていて、地域やライフステージを問わず専門性を持った個人が多様な関わり方ができる「チームサステナビリティ」をコンセプトにしたチーム運営を通じて事業を営んでいます。

2月27日木曜日の安倍首相による突然の全国一斉休校要請がなされた翌日の28日金曜日夕方、同社代表取締役・野澤健さんと取締役・二口芳彗子さんの連名で、以下の内容を記したメールが現在同社に関わっている約70名のパートナー宛てに送られました。

【パートナーの皆さまへ】新型コロナウイルス感染症に関する対応について

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ここには、「先が見えない不透明な状況の中で、また対応による負担が一部の人に偏っていってしまう状況の中で、(中略)本来社会として大切にすべき方向性について議論した」とした上で、組織としての考え方、組織内と取引先に向けた対応方針、ENWに関わるパートナーへの支援策が示されています。

メールをいただいた2月28日(金)夕方というタイミングは、日本じゅうの多くの働く親たちが、翌週からの一斉休校にどう対処しようか頭をフル回転させて考え、段取りを打っているさなかだったと思われます(私もそうでした)。私は早速「急激な混乱が広がる中、冷静かつ温かみのあるメッセージを発信されたことに、まずは心からの敬意と感謝をお伝えさせて下さい」とメッセージさせていただきました。他にも、パートナーたちからたくさんのメッセージがお二人のもとに届いたそうです。

ENWで国内外で翻訳、取材・執筆、コンサルティング、調査分析などの領域を専門とし、子育てをしながら仕事をしているパートナーは約半数。今回の組織としてのメッセージの発信は、パートナーの多くが置かれているであろう状況に寄り添い、少しでも不安を軽減しようとするアプローチでした。

組織内外での対応方針の根拠を「考え方」として明示

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って「静かな非常時」とも言えるような状況下では、組織としてトップが、あるいはチームとして一貫した考え方にもとづいて、組織内外での業務の進め方についての対応方針が明示されることが重要です。

今回ENWが示した考え方には、これからの時代に求められる企業に必要な5つの姿勢が凝縮されています。

1)社会全体が混乱するような状況では、政府からの指示に受け身に反応するだけでなく、組織や個人の単位でそれぞれが実践できることを行っていくことが大切です。

2)ENWは、ミッションである「サステナブルな社会を実現するため、波を起こす一滴の雫になる」ことを実践していきます。

3)先が見えず、悪いニュースばかりが飛び込んでくる状況の中で、ENWは少しでも安心できる心の拠り所となる存在でありたいと考えます。

4)学校の休校措置は子どもを抱える親にとって、時間面や収入面で大きな負担を強いる。「子どもが家にいると問題」のように聞こえる伝えられ方は、子どもが自身を負の存在として捉えてしまう危険性があり、こうした状況だからこそ、本来は子どもが安心して居ることのできる環境づくりが大切です。

5)不透明な状況が続きますが、今回の危機を力を合わせて乗り越え、個人とチームの危機管理と対策をみんなで一緒に考えるきっかけにしていきましょう。

これらは、企業が何を大切に考えているかを表す「価値観」とも言えるものです。こうした価値観の上に「(必要に応じて納品の延期などを含む)業務の優先順位の見直し」「業務遂行が困難な時は、支援可能なメンバーで協力」「内外部のミーティングを原則すべてオンライン化」といった具体的な対応方針が明示されたことで、内部での納得感と外部への説得力がもたらされます。

メンバーの収入減などへの支援策も

さらに、ENWは新型コロナウイルス感染症対策に伴う対応で個人に費用や損失が生じた場合に、内部留保から総額最大300万円をパートナーに補助するとした支援策を提示しました。メールで個別に相談してくれれば、基本的には応じたいとの意向を示しています。世論の突き上げを受けてフリーランスへの給付支援の方向性を打ち出した政府よりも、はるかに素早い意思決定です。

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(2020年4月30日追記)

ENWはその後、パートナーへの第二弾の支援策として、同居する18歳以下の子ども一人当たり2万円を支給することにしました。給食がない状況での食費軽減とともに、安心して子どもたちが家庭で過ごせるようにするための補助費用としてです。子育て世代の多いENWパートナーに寄り添う施策と言えるでしょう。

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こうした形でパートナーへの呼びかけを行った経緯について、代表取締役の野澤健さんに聞きました(以下敬称略)。

なぜ、パートナーへの呼びかけを行うことにしたのですか。

野澤:こうした形に至ったのは、これまで一緒にやってきたパートナーの方々と(半年程度に一回集まる)集いなどの場を通じて議論・共有してきたことが積み重なり、形になったものと言えます。

パートナーへの経済面での支援を打ち出しました。

野澤:仕事を通じて利益が生み出され、こうした緊急事態に備えて利益を蓄積しています。その利益は、パートナーと組織が一緒に創ってきたもの。少しでもパートナーが安心できるように、その利益を使っていきたいです。支援対象は過去3年以内にENWで一緒に仕事をさせていただいたパートナーとしましたが、パートナーの立場はフルタイムか業務委託かといった契約体系を問いません。

先が見通せないような状況の中で今必要なことは、少しでも先が見通せる状況をつくること。それは、部分的でもいいから経済的な見通しが立つこと、収入が保証されること、費用負担が担保されることです。

その後、第1弾の発表以降の動きやパートナーからの反応も紹介したいと思い、新たにまたブログ記事を掲載しました。

(記事はこちら

素早い対応、発信も印象的です。

野澤:私たちの場合、このようにすることが組織の存在意義でもあるし、今後も組織が価値を提供し続けていくためにも必要なことだと考えています。特に、今のように社会が混乱した状況では、社会が前提とする仕組みから外れる人に負担が偏っていってしまい、支援も行き届きにくいと思われますから。

もちろん、私たちだけで全てを解決できません。できる組織が、個人が、できることを行動に移していってほしい。そして、支援を本当に必要としている人が取り残されないようにしてほしいという思いで動いています。

フルリモートワークの“パイオニア”が蓄積したノウハウ

ENWでは、10年以上前からフルリモートワークを実践してきた経験を踏まえて、リモートワークのノウハウをまとめた冊子「リモートワーク実践BOOK」を発行してきました。リモートワークを初めて本格的に体験している組織や個人が増えている今、冊子の存在をSNSなどで改めて積極的に発信しています。

2016年発行の「暮らしと仕事の質を高めるリモートワーク実践BOOK vol.1」では、メンバーとして参画するワーカー、管理する立場としてのマネージャー、経営者、クライアントというそれぞれの立場で、リモートワークによって円滑に仕事を進めるために留意すべきことがまとめられています。

「暮らしと仕事の質を高めるリモートワーク実践BOOK vol.1 個人編」
「暮らしと仕事の質を高めるリモートワーク実践BOOK vol.1 個人編」

こちらのページからダウンロードできます。

また、2018年発行の「暮らしと仕事の質を高めるリモートワーク実践BOOK vol.2ライフイベント編」では、育児、介護、病気など生きている中で遭遇しうるさまざまなライフイベント別のリモートワークのノウハウが詰まっています。

「暮らしと仕事の質を高めるリモートワーク実践BOOK vol.2ライフイベント編」
「暮らしと仕事の質を高めるリモートワーク実践BOOK vol.2ライフイベント編」

こちらのページからダウンロードできます。

ENWの取り組みは、会社の規模から見れば、また社会全体から見れば小さなものかもしれません。しかし、私たち一人ひとりに「なぜ働く?」「どう働く?」をめぐる、大きな問いを投げかけているように思えてなりません。パートナーに宛てていち早く示した新型コロナウイルスの影響への対応策からは、私たちは本来何のために、誰のために仕事をしているかということを考えさせられました。日ごろ当たり前のように行っているフルリモートワークからは、平時に取り組んでいるからこそ、非常時にスムーズに実践できるということを改めて実感させられました。

ENWのワークスタイルと組織としての互助のあり方は、一つの会社で全員が正社員として一生働くことが“唯一の正解”だった時代の終わりに、私たち一人ひとりに、社会全体へ、持続可能なこれからの働き方のありようを問いかけているように思うのです。