東京五輪の野球復活。この際、プロではなくアマの参加にしたらどうでしょう?!

(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 東京五輪での野球種目復活が実現しました。復活濃厚と言われてはいましたが、いざ実現となると関係者たちの尽力には頭が下がりますし、野球に携わるメディアの端くれとしても嬉しくないわけはありません。ただ実際の現場(選手、関係者)やマスメディアは、案外と醒めています(表向き盛り上げていくでしょうが)。

理由は、いくつもあります。ランダムですが挙げてみます。

1. 参加国が6カ国しかない。

 今回、IOCとの折衝で、野球復活の作業部会を率いたWBSC(世界野球ソフトボール連盟)は思い切った手を打ちました。それはJOCと連携し、IOCが加入させたかったサーフィン、スポーツクライミング、スケートボードなど新興3競技も盛り込み、野球に消極的だった委員たちを押さえ込んだのです。

 結果、参加する選手の数は増えました。規定では追加種目に与えられた枠は500人。そのため「最低でも8カ国の参加が望ましい」(熊崎NPBコミッショナー)という希望を取り下げ、6カ国にせざるを得ませんでした。

 

 6カ国では、上位半分がメダルを獲ることになります。その違和感。また現実的に、参加国はホストの日本以下、アメリカ、キューバ、韓国、台湾までは実力的にいって参加濃厚です。この“顔ぶれ”、率直に言って新鮮みに欠けると思われる野球ファンも少なくないでしょう。

 

 そもそもWBSCとして、野球とソフトボールをあわせ同一競技としてアピールしたことも、策士と言えば策士ですが、発足当初から「競技より五輪復活ありき」と指摘された要因のひとつでした。 

 

2. メジャー選手が出る可能性がない。

 これは当初から言われていることなので、今更取り上げるまでもないことですが、そもそも野球が五輪から外れたのは、「世界のトップ選手が出ない」というIOC側の言い分が通ったためです。当時、IOCは競技の関心度を高めるため、バスケ(NBA)のドリームチームメンバーを参加させるなど、躍起でした。一方、野球はメジャーが出ない。今回も、関係者は「ギリギリまで参加を呼びかける」としていますが、MLB(メジャーリーグ機構)側の反応は、ずっとクールなままです。日程的にも、夏場の参加はメジャーの日程自体を中断させる必要があり、不可能。

 

 それ以上にケガの補償が大変です。昨季の調べですが、メジャー選手の平均年俸は約5億円。今季ではダイヤモンドバックスと契約したザック・グレインキー投手は、6年総額約230億円。1年では約38億円と言われています。ちなみにヤンキースの田中将大投手も22億円以上と言われています。

 かりに、これらの選手が出場するとしたときのケガの補償は天文学的な金額になってしまいます。

 

 と同時に、メジャー機構の人たちの考えには「メジャーリーグが世界一を競う場であり、五輪ではない」という発想が根強くあります。言い換えれば「ただのイベントにメジャーの選手を出せるはずがない」ということです。

 おそらく現実的には五輪時もマイナーリーグから編成されたチームか、あるいは大学生を主体としたチームで参加するのでは、と言う見方が濃厚です。 

 

3. 東京五輪限定の参加というネック。

 今回の復活は、東京五輪でのみの復活で、以後の大会での参加を保証したものではありません。せっかく参加しても、4年後だけ。無論、関係者はそれ以後の種目維持を目指すとしていますが、上記のようなマイナス要素を覆さない限り、維持は難しいと思われます。

 IOCの関係者が常に「野球は環太平洋を中心に、限定された国だけで盛ん」という発言をしています。これは事実ではありません。国際野球連盟に加盟している国・地域は、同連盟の発表によると77。競技人口も3500万人とされています。ただプロは10チームで、実際に興行として突出しているのがアメリカ、日本などの環太平洋というのは否定できないことかも知れません。またIOCはヨーロッパの委員が強い影響力を持っていると言われています。ヨーロッパでもオランダ、イタリアなど高いレベルの国もありますが、彼らからすれば、やはり「遠い極東と太平洋のむこうでやっている競技」という印象が強いのです。そうした委員たちの偏見を覆すことは容易ではありません。

 となれば「東京五輪のあと」のために汗を流し、金を使うより、むしろ東京での復活までの間に、野球という競技を馴染みない国に浸透させていくか、各国のレベルを高めていくか。派手な招致より、そうした地道な活動こそ大事になってくるように思います。五輪に出る、出ないより、まず広げ、高めていく作業。

4. プロが出ること、アマが出ないこと。

 2000年のシドニー五輪からプロが参加となりました。これは上記のIOCの「ベストメンバーでの参加」という要請に添った形で実現したものでした。いわばプロ選手は、多くは「出たい」ではなく「招かれて出た」わけです。結果、アテネの銅が最高で、メダル獲得できなかった大会も目立ちました。その理由をここで改めて記す余裕はないですが、多くの大会を取材してきた立場からの経験で記させて貰うとすれば、一言、モチベーションだったと思います。言い換えれば選手の能力でも、監督の采配でもない、と筆者は感じています。単純に、他の競技の選手が4年に一度の大舞台を目指してそれまでの4年間を過ごしているのに対し、プロ野球選手は直前になって集められ、戦う。いかに日の丸を大事に思ったとしても、それで勝てるとは限らないのが野球という競技の特殊性です。皮肉にも、五輪という国際大会の短期決戦が、野球という競技の難しさを示していると思うのです。

 

 ならば社会人選手などアマが五輪挑戦するのもひとつの方法ではないでしょうか? シドニー以前はそうでした。彼らは自社のために野球をしつつ、同時に五輪を目標に、4年間かけて強化合宿を繰り返し、ひとつのチームとしてのレベルとまとまりを築き上げていきました。そうしたチームに東京五輪の舞台を提供するのもいいのではないか。彼らなら、必死になってこれからの4年間を東京五輪に向けて傾注してくれることでしょう。

 

 無論、IOC相手にそんな芸当が出来るとは思えませんが、なまじ「要請されたから出るプロ」より素晴らしいプレーを披露してくれそうな気がします。少なくともそれだけの期待をさせてくれるはずです。

 

 どうせ東京以後、ない競技種目なら……それくらいアッといわせて欲しい気がします。

 野球とソフトを統合したくらいの知恵がある人たちなら……。