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目玉はLINEと実現したコネクテッドか? トヨタ・カローラハッチバック(仮称)

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
写真は全て筆者撮影

ユーザー平均年齢70歳のカローラを若い人達に

 先週、トヨタが今後発表予定のカローラハッチバック(仮称)プロトタイプの試乗会が開催された。トヨタは今後発表予定のクルマの試乗会を行なう際は、車名+プロトタイプで表記するが、今回はなぜか車名とプロトタイプの間に(仮称)と付けた。これはその車名では発表しないことを表しているのだろう。実際、巷では車名は変わると囁かれており、中でも「カローラスポーツ」が最有力ではないかと言われている。

 そんなカローラハッチバック(仮称)は今回、カローラとして12代目となるモデルである。開発責任者の小西良樹さんは「今回のカローラにおける開発の想いで、まず挙げておきたいのは『カローラを若い人達に』ということです。なぜなら現行カローラ・アクシオのユーザーの平均年齢は実に70歳、ワゴンのカローラフィールダーでユーザーの平均年齢は60歳です。こうしたユーザーの方を大切にしつつ、今回は20~30代の方にも買っていただけるようなクルマにしたいという想いで開発しました」

 そしてこのために、2軸によるクルマ作りを意識したという。

「2軸とは、コネクテッドとクルマ本来の楽しさを併せ持ったクルマということです。コネクテッドはこれから重要な繋がる技術を入れるということ。そしてクルマ本来の楽しさとはデザインや走りの従来的な魅力です。そこで今回、本来ならばここでコネクテッド技術についてお話ししたいのですが、残念ながらこれは6月26日(おそらく発表日)までお待ちください」ということだった。そしてデザインや走りについての解説がなされた。

 デザインや走りに関しては動画を参照にしてほしいが、簡単に記せばデザインは新世代トヨタの中でもさらにアグレッシブな造形としている。一方でインテリアは極力シンプルなものとしながら、上質で大人っぽいものを目指したという。

 メカニズムに関しては、トヨタの新世代アーキテクチャであるTNGAのGA-Cプラットフォームを用いた第3弾モデル(プリウス>C-HR>カローラ)となる。搭載されるパワーユニットはプリウスでお馴染みの1.8L+THS-IIのハイブリッドで、これはリッター34.2km・Lを実現するという。また1.2Lの直噴ターボ・エンジンも用意しており、こちらはCVTとiMTという2種類のトランスミッションが与えられる。

1.2L直噴ターボにはiMTが用意される
1.2L直噴ターボにはiMTが用意される

 C-HRと比べると、ステアリング剛性をアップしてステアリングフィール向上をはかり、新開発アブソーバでスムーズな乗り心地を実現。そして静粛性も向上しているという。

 実際に走ってみると、確かに走りがこれまで以上に上質で、走り出しのスムーズさが印象的。さらに乗り心地も洗練されていたが、一方でサーキットを走った際にハンドルからハッキリとしっかり感が伝わってきて頼もしさも確実にあった。これまでのカローラといえば、どちらかといえば走りはあまり印象に残るものではなかったが、今回の新型は実際に走らせて納得のいく仕上がりの良さを手にしていたといえる。

走りは好印象。しかし主役は『コネクテッド』

 しかしながら、先のチーフエンジニアの小西氏が「残念ながらお待ちください」といった、もう1つの軸である「コネクテッド」こそが今回のカローラのハイライトとなると筆者は見ている。小西氏も「このカローラがトヨタのコネクテッドにおける最初のモデル」と言っている。そしてこの部分の仕上がりよって、若い人達にも注目されるか否かが決まるだろうと予測する。

 なぜならば自動車の従来価値であるデザインや走りによるクルマ本来の楽しさは、最近では備えていて当たり前の事項である。時代はむしろ、それ以上のプラスアルファを求めているし、特にクルマにそれほど詳しくないユーザーにとっては何が新しいのか? は重要なPRポイントになる。そうした中でこうした従来価値は備えて当然だ。また同時にこうした従来からの価値は、デザインであればさておき、走りの良さに関して言うと多くの人に訴えかける内容ともいえない。より多くの人に訴えかけるのはクルマ本来の楽しさでいえばやはりデザインだろうし、性能に関して言えばむしろ安全性や運転支援についてどうなのかが注目ポイントになっているのが現状だ。そしてそれ以外でみれば、世の中的な話題性ということになる。その意味においても、今回トヨタが謳う「コネクテッド」には多いに注目が集まっているはずである。

LINEのClova搭載でメルセデスのMBUXを超える?

 最近ではメルセデス・ベンツの新型Aクラスが全く新しい新世代インフォテイメントシステムであるMBUXを搭載し、インテリジェントボイスコントロールを搭載したことで、新たな時代の自動車を感じさせたし、これ自体が大きなインパクトだったことを筆者も先日お伝えしている。こうした動きに対してトヨタは果たして、どのようなコネクテッドを見せてくるのか? トヨタは昨年にLINEと協業基本合意書締結を行なっており、その後東京モーターショーではLINEのAIアシスタント「Clova」をプリウスに搭載してデモンストレーションしている。そう考えると、このカローラにLINEのClovaが載るのは確実だろう。ならば実際に東京モーターショーでデモンストレーションした以上の機能が加わっているか? が注目といえる。

果たしてどんなコネクテッドが実現するか?
果たしてどんなコネクテッドが実現するか?

 東京モーターショーのデモンストレーションでは、LINEメッセージの読み上げや、音楽の検索および再生操作、天気やニュースの検索などの4つの機能を見せていたが、果たしてさらにどんなものが加わるか? 新型Aクラスでは車内の快適装備等のコントロールまで可能としていたが、果たしてカローラは何を見せるだろう?

 筆者は今回、カローラハッチバック(仮称)を試乗して、その走りに関しては確実に進化しているし、若々しさを感じさせる走りを手にしていたことも理解して評価している。しかしながら、それ以上の価値を見せるだろう「コネクテッド」こそが、この新型カローラにおける目玉であると見ている。果たして発表が待ち遠しい1台である。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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