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【動画で見る】驚きの走り。ボルボ新型XC40の実力【試乗編】

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

内外装の完成度に加え、走りも驚き

 前回、動画とテキストで内外装の印象や詳細チェックをお伝えした通り、驚きの完成度を持っていたボルボの新世代SUVであるXC40。しかしながら、さらに驚いたのはむしろその走りだった。

 実際に走り出してすぐに、助手席の同業者と顔を見合わせたほど。思わず「すごいね」と言葉が出た。僕も助手席の同業者も1年間に数百台のクルマに乗るから、走り出してすぐに大体の感触を理解するし、大抵のことでは驚かないわけだが、XC40はそうした状況の中で僕と彼に、これまで感じたことのないフィーリングを届け、思わず顔を見合わせさせるほどの印象を残したわけだ。

 まず気がつくのはハンドルの感触、いわゆるステアリング・フィールがとても素晴らしいこと。ハンドル自体を操作した時の重さはこのモデルの場合、設定で様々に変えられるのだが、この時はもっとも軽い状態にセットされていた。ハンドルの操作感が軽いと不安に感じることもあるのだが、XC40の場合はハンドルが軽いのに芯がしっかりとある。ゆえに操作しやすいながらも、キッチリと動く。またその軽さとは裏腹に、ハンドルからのインフォメーションもしっかりと入ってくるという、実に高レベルなステアリング・フィールが実現されていた。

 そしてステアリング・フィールが良いクルマはまず間違いなくシャシーの性能が良いのだが、XC40は当然その例に漏れない仕上がりを見せた。サスペンションがとても良く動いて路面の荒れたところや段差を上手くいなし、どんな状況でも常に姿勢をフラットに保ちつつ、操作に対しては意のままに動くという、理想のハンドリングを手に入れていたのだった。

新たなCMAプラットフォームの計り知れぬ実力

 さらに驚きなのは、今回の試乗車はRデザインという最もスポーティなモデルかつ、20インチサイズのタイヤ&ホイールを履いたモデルに関わらず、乗り心地も悪い印象を見せる状況が皆無だったことだ。もちろん20インチともなると、荒れたところや段差が酷ければボディもブルブルするが、このモデルではそんな状況が極めて少なく、多くの場合ピタリと路面を捉えて気持ちよく走る。

 さらに驚きは身のこなしの軽やかさ。車両重量が約1700kg近くあるにも関わらず、ハンドルを切るとほぼ車体の傾き(ロール)を感じさせずにスッと曲がる。背高かつヘビー級ながらも、抜群の身のこなしを披露する走りがそこに展開されているのだ。だからSUVにも関わらず、これはワインディング等で積極的に走って楽しい! とすら感じたのだった。

 ではその走りが、どれほど良いのか? を簡単に記すならば、思わず「日本の自動車メーカーの皆さん、これを買ってその完成度の高さを調査・研究してください」といえるレベル。ドイツのライバルと比べても確実に同等以上を実現しており、むしろドイツ車にはない味わいがここに生み出されている。そう考えると、このXC40から用いられるボルボの新コンパクトプラットフォームであるCMAプラットフォームの実力はかなりのもの、と見ることができるわけで、今後このプラットフォームを用いた展開にも大いに注目されることになるだろう。また、これまでの経験上こうした優れたプロダクトが送り出された後には、ブランドが活性化されていくことがほとんどである。

 だから今回のXC40を見て触れて感じるのは、ボルボがいま自動車メーカーとして非常に良いポジションを築きつつあるという点である。中国のジーリーの傘下になって以降、むしろ戦略が明確になり、パワートレーンやアーキテクチャの体系が取捨選択されてシンプルになったことで、プロダクトはわかりやすくなると同時に、クオリティも大幅に向上してきたからである。しかもそれをわずか数年のうちに実現できている辺りを考えると、今後は自動車作りにおいて要注目のブランドとなることも間違いないだろう。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数50万人)を持つ。

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