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道迷い遭難を防ぐ5つのポイント

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
苔むす森を進む *記事の中の写真はすべて筆者が撮影

山歩きを始めて間もない方に伝えたい道迷いを防ぐ5つのポイントを紹介します。

山の高さにかかわらず、人が歩くことで”道らしきもの”はできてしまいます。頂上へ至るコースが一つであることは稀です。また、人里に近い低山であれば、土石災害防止工事や林業などの仕事道、電力線の保守管理道など多くの「道」が存在します。

1:歩き出す前に周りの景色・地形・人工物を良く観察し地図上の現在位置を確認します。紙の地図でもスマホのアプリであっても同じことです。ほかの登山者が歩き出すのを見て慌てて歩き出すのはちょっと待ってください!

基点を押え、仲間と登山コースを共有することを忘れずにしましょう。

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2:靴底に伝わる感覚が急にフワフワと柔らかくなり、枯れ枝や体勢を崩しやすい石ころが突然多くなったら立ち止まる必要があります。樹林の中であれば急に蜘蛛の巣が顔にかかって、おやっと感じる時も同様です。

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一般に多くの登山者が歩く「登山道」は硬く踏みしめられていたり、土壌がえぐられていることが多いものです。明らかに登山道の様子が大きく変化したのなら、「枝道」に入り込んだ可能性が大です。早く確認すればするほど元の正しい登山道に戻るのが容易となるのです。

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3:道標やテープなど登山道にある人工物、道の分岐点があった時は小まめに地図(紙でもスマホでも)と照合します。この作業に正確性は必要ありません。少々不正確でも細かなタイミングで手早く行うのがコツです。

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4:どの山に、どのコースで登るのかを家族に伝えておきます。インターネット登山届「山と自然ネットワークコンパス」を使えば、家族友人山岳組織と登山計画を共有できるのでとてもお勧めです。助けられ易い自分を作って山に入るのは守りたいマナーのひとつです。

その上で、できるだけ早朝から登山を開始し、下山は遅くとも13時までに開始するように心がけます。時間の余裕を十分にもった下山なら、少々の判断ミスやトラブルを自分自身で対応できるものなのです。焦りは更なるミスを呼び込むということを忘れないようにしましょう。

5:脳と筋肉の疲労は集中力低下と判断ミスを呼び込み、小さな道間違いから道迷い遭難に拡大させることになります。行動中の水分・栄養補給は小まめに行い、特に下山開始時にはしっかりと補給するようにします。下山するのに2時間を超えるようであれば、その途中で補給する水分・栄養は必ず用意しておかなければいけません。

下山は心臓への負担は小さいですが、足腰の筋肉への負担はとても大きいのです。多くの遭難は下山時に発生していることを忘れないでおきましょう。

判断ミスは誰もが起こすものです。

道迷い遭難にならないために必要なこと、それは「判断ミス」に早く気付き、修正できる「自分の体力と精神力」を維持しておくことなのです。

まだまだ暑い日々が続きます。都会を抜け出し緑の山へ出かけてみてください。

「道に迷ってしまった時、するべき5つのこと」⇒ こちら

日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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