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登山初心者が絶景を楽しむために大切にしてほしい5つのポイント

加藤智二日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン
雲海に沈む太陽に向かって *記事の中の写真はすべて筆者が撮影

日本は多様な自然環境が創り出す景観、そこから自分だけの絶景を見つけるための5つのポイントです。

澄んだ空気と360度の展望の山登り、温泉や大地の息吹を感じる山歩きなど、着眼点を変えるだけでとっておきの絶景を体験できます。

1:ゆっくり景色を楽しむには十分な歩行時間を見込んだ早朝出発が大切となります。登山ガイドブックに記載されている標準時間には個人個人の「お楽しみ時間」は含まれていないことに留意が必要です。行動可能時間に余裕があれば、ルート状況を落ち着いて良く観察できます。ちょっとした間違いから起きる焦りやミスの連鎖を防ぐことが可能になります。でも安全面のメリットだけではありません。太陽の光が演出する景色の変化などのお楽しみがあるので是非、実行することをお勧めします。

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夜明け前に出発すると茜の空

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朝露の飾りをつけた草むらに出会えることでしょう。

2:素敵だな!と感じた時には「まず立ち止まること」です。その時の天気や太陽光線、季節の花々、仲間の笑顔かもしれません。

いつも見慣れたアングルからの景色も目線を下げて見ることを試してみましょう。

大切なことがあります。登山道を外れることは自然の植生にダメージを与えるだけでなく、スリップ転落の可能性が高いのです。どんなに景色が良くても、足元が不安定な場所では立ち止まってはいけません。これは自然を守り、登山を安全にする大切なマナーですのでお忘れなく。

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3:山小屋に泊まってみましょう。日帰り可能な山であっても暮れゆく景色、星空と小屋の明かり、登る朝陽を居ながらにして体験できる山小屋に泊まるのが一番です。この夏稜線にある山小屋で自分の絶景を発見するなら、防寒着を忘れてはいけません。標高3000mともなれば酷暑の下界より20度程度気温は低くなります。風は風速1m/s 増す毎に体感温度は1度下がるといわれています。更に、晴れた夜ともなれば放射冷却によってグッと気温は下がります。参考:標高100m上げる毎に、平均0.65度気温が低下します。

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4:一緒に歩く相手を替えてみる。趣味や知識の多様性が新たな喜びを生み出すのです。

山岳を舞台に様々な歴史や地理、地形と地学、植物と植生、昆虫や動物などが描きだす一瞬の絶景に気づくことでしょう。

5:小まめに水分と栄養を補給します。喉が渇いたりお腹が空いたりといった状況になってから、慌てて補給しても直ぐには回復しません。

五感を鈍らせないこと!体調維持が判断ミスによる道迷いやスリップや転倒からの怪我を防ぐことになるのです。

脳と筋肉を健全な状態に保って絶景を見逃さないようにしましょう。

皆さんの絶景を楽しみにしていますね。

「夏山シーズン到来、クールな登山者がしている山小屋9つのルール」⇒ こちら

日本山岳ガイド協会認定山岳ガイド・カメラマン

ネパール・パキスタン・中国の8000m級ヒマラヤ登山を経験。40年間の登山活動で得た登山技術、自然環境知識を基に山岳ガイドとして活動中。ガイド協会発行「講座登山基礎」、幻冬舎「日本百低山 日本山岳ガイド編」の共同執筆。阪急交通社「たびコト塾(山と自然を学ぶ)」、野村證券「誰でもできる健康山歩き」セミナー講師。山岳・山歩きに関するテレビ番組への出演・取材協力。頂上を目指さない脳活ハイキングの実践。登山防災協議会会員、一般社団法人日本山岳レスキュー協会社員、公益社団法人日本山岳ガイド協会安全対策委員会委員長、山岳ガイドステージⅡ。

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