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ダーマペンも人気!アフターコロナに向けて‟美容医療”で顔メンテナンス。目指すのは‟自己ベストな顔”

加藤智一美容ジャーナリスト・エディター
ニキビ跡などの治療で若年層に人気が高いダーマペン4。写真:シロノクリニック銀座

新型コロナのワクチン接種が進み、日常生活の回復への兆しが見えるようになりましたが、それに伴い、ニーズの高まりを見せているのが‟美容医療”です。

対人コミュニケーションがコロナ禍のオンラインから、アフターコロナのオフラインへとシフトすることを見越して、見た目の印象を整えるために美容皮膚科へ訪れる人が増えているといいます。

ただ、その治療リクエストは、以前のように、‟目を大きくしたい”とか、”唇を厚くしたい”ということではなく、自分の顔立ちをベースに、若々しさを添えたいといった内容が主流に。美容医療の仕上がりで、目指す‟理想像”にも大きな変化が起きています。

10年前の自分の顔に戻りたい中高年層

美容皮膚科「衣理クリニック表参道」の片桐衣理院長も「カウンセリングで仕上がりの理想像を掲げる方は圧倒的に少なくなりました」と、治療希望者が掲げる理想像の変化を挙げます。

「芸能人やモデルではなく、自分の顔のいい部分を引き立てさせながら、コンプレックスを改善するという治療のご要望が増えています」と話します。

「衣理クリニック表参道」では、中高年層にはヒアルロン酸やボトックスなどの注入治療と、スレッド(溶ける糸)リフトの複合治療が人気 写真提供:「衣理クリニック表参道」
「衣理クリニック表参道」では、中高年層にはヒアルロン酸やボトックスなどの注入治療と、スレッド(溶ける糸)リフトの複合治療が人気 写真提供:「衣理クリニック表参道」

また、「クロスクリニック銀座」の石川浩一院長も、「誰かと比べるというよりも、数年前の自分と比べて、治療方針を決めていくことが多い」と指摘。

美しさの基準が、自分の顔の良い部分を引き立てつつ、ブラッシュアップさせていく、という‟自分回帰”へと変わっているのがわかります。

超音波マシン「ウルセラ」などのマシン治療と、注入治療の併用にニーズが高い「クロスクリニック銀座」。写真提供:「クロスクリニック銀座」
超音波マシン「ウルセラ」などのマシン治療と、注入治療の併用にニーズが高い「クロスクリニック銀座」。写真提供:「クロスクリニック銀座」

これは、2007年頃からTwitterを中心に広まった“リア充”という価値観や、2010年からスタートしたInstagramの影響が大きいといえます。

それ以前は、自分の顔を美容医療で“バージョンアップ”したいと思ったとき、憧れの芸能人やモデルに自分の理想像を投影するのが近道でした。

しかし、SNSの普及により、アプリで自分の顔を少しだけ加工した仕上がりに満足感を得られたり、自分とは遠い存在の芸能人でなくても、可愛い、かっこいい同世代を見る機会が増えたことで、まったく違う誰かではなく、いまの自分を少しだけ“盛った”状態でも納得できる、幸せになれる……そんな心境に至っているように思えます。

コンプレックスを治療したい若年層

これは、美容医療のトレンドが、外科的手術が必要な治療よりも、より心理的ハードルの低い、ヒアルロン酸注射やボトックス注射などの“注入治療”へとシフトしていったことも一因と言えます。

加えて、最近は10代~20代前半の若年層を中心に、ニキビ跡を治療する「ダーマペン」や、古い角質を取り除き、肌の生まれ変わりを促す「ミルクピール」など、“肌質改善治療”も流行しています。

ニキビ治療などで母親が、中高生の子どもを連れて来院することが多いという「シロノクリニック銀座」の徳永真理院長も「若年層の美容医療は、コンプレックスの解消や、肌質の変化が目的」と言及。

加齢によるエイジング治療とは異なる、若年層ならではの治療ニーズが高まっていることを示唆しています。

「シロノクリニック銀座」で、若年層から最も人気が高い「ミルクピール」の施術シーン。写真提供:「シロノクリニック銀座」
「シロノクリニック銀座」で、若年層から最も人気が高い「ミルクピール」の施術シーン。写真提供:「シロノクリニック銀座」

整形から整肌へと多様化する

これまで美容医療といえば、“顔の造形を変える”という印象が強くありましたが、いま、その治療内容は肌質を整えるという“整肌”へと裾野が広がっています。

若年層からシニア世代まで、それぞれの世代で美容意識が高まるなか、そのコンプレックスや肌悩みを解消するべく、美容医療への期待とニーズはますます多様化していくでしょう。

美容ジャーナリスト・エディター

popteen(角川春樹事務所)、ViVi(講談社)、25ans(ハースト婦人画報社)など、女性誌の美容担当を経て独立。女性誌・男性誌・新聞など、さまざまな媒体で執筆。講演・PRアドバイスでも活躍。著書に「お洒落以前の身だしなみの常識」、「思わず触りたくなる美肌をつくる身だしなみメイク」(ともに講談社)などがある。

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