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ライブビジネスで一人勝ち、「ライブ・ネイション」過去最高の売上100億ドルに到達

ジェイ・コウガミデジタル音楽ジャーナリスト
ライブ・ネイション

世界最大のイベントプロモーション企業「ライブ・ネイション」が、2017年Q4(10-12月期)の業績と2017年度通年の業績を発表しました。

通年の売上高は前年比24%増加して103億ドル(約1兆1040億円)。7年連続で通年売上高は過去最高を更新し続け、同社で初めて通年で100億ドルの売上を達成した記録的な一年でした。

Live Nation IRより
Live Nation IRより

最も好調だったコンサートビジネスの売上高は26%増加して78.9億ドル(約8457億円)、純損失は48%減で9360万ドル(約100億円)と増収減益。

ライブ・ネイションがライブビジネスで注目する指標は、動員数の増加。2017年も好調を維持し、ライブ・ネイションは世界40カ国で3万回以上のライブを開催、動員は1500万人増え通年で約8600万人に達成。

アメリカのみでも過去10年間で「ライブ体験」への個人が費やす消費総額は毎年50億ドルにまで急上昇し、ライブ・ネイションはこのトレンドが世界各地のコンサートビジネスへ足を運ぶ要因になると予測しています。

もう一つの指標はチケット価格の変動。2017年通年でチケット価格の平均は5%増加し、2億5000万ドルの追加売上を生み出しています。

「アンフィシアター」形式(半円形のステージ、すり鉢型の客席を備えた会場)では、チケット価格は平均9%上昇した代わりに、フードおよびドリンクメニューの改良やグッズ販売の強化に注力してファン体験を向上させてきました。

スポンサービジネスは2桁の伸び率

スポンサーシップビジネスでは、通年の売上高は18%増加して4億4510万ドル(約477億円)、純利益は2億5150万ドル(約270億円)の増収増益を達成して、高利益率を実現しています。

増収の要因は、戦略的スポンサーとの連携で、50社以上の企業がスポンサー料に年間100万ドル(約1億円)以上を投下しています。トップクライアント企業からのスポンサー料は19%も増加しており、総額2億8500万ドル(約300億円)以上の売上をここだけで生み出すことに成功しています。

ライブ・ネイションが行った調査では、90%以上のブランドがライブ・ネイションのライブやイベント、プラットフォームを通じて「ミレニアル世代」にアプローチできるという結果が出ています。アーティストやファンだけでなく、ブランドに対してもライブを通じてポジティブな企業メッセージを発信できるビジネス価値を高めているライブ・ネイションのスポンサー戦略が結果として表れてきました。

転売、ダフ屋行為へ対抗策を導入したチケット事業

チケット販売事業を手掛けるチケットマスター(Ticketmaster)の業績は通年で17%増加して21億4380万ドル(約2298億円)、純利益は48%減少して9090万ドル(約97億ドル)でした。

手数料が発生する総取引額(Gross Transaction Value)は15%増加して300億ドルを達成。通年で購入されたチケット枚数は累計5億枚でした。

2017年Q4(10-12月期)のチケット売上が昨年は最も好調で、3カ月で購入されたチケット枚数は5000万枚以上。総取引額にして45億ドル以上(約4823億円)にも上ります。

チケットマスターが2017年に強化した取り組みは、悪質な高額転売へ対抗するために始めた新システム「Verified Fan」の導入でした。

これはアーティストがチケット販売の新しい方法で、「scalper」「tout」(ダフ屋)やボットからのチケット購入を防ぐため、事前に本人確認情報を登録し認証されたファンのみをアルゴリズムが認識して、チケットを先行購入できる特別コードを発行する、チケットマスターが独自開発したシステムです。

2017年3月にエド・シーランの「Divideワールドツアー」のチケット販売から実戦投入され、テイラー・スウィフトやU2、デミ・ロヴァート、パールジャム、ブルース・スプリングスティーン、ミュージカル『ハミルトン』まで、約80に及ぶさまざまなライブやイベントで「Verified Fan」システムが導入されています。

今後はライブ・ネイション関連のイベントにおける「Verified Fan」導入と、世界展開が予想されます。

さらにチケットマスターは転売ビジネスも強化しています。すでに世界最大のチケット転売のマーケットプレイス運営会社となったチケットマスターでは、「Verified」チケットを公式アプリ経由でチケットマスターのユーザー同士で転売が行えるようにするなど、画期的なシステムを導入しています。

北米のマーケットプレイスでは、ライブ・ネイション以外が運営するイベントもチケットマスターで取り扱い始めたことにより売上が25%増加する結果が生まれ、チケットを求芽ているファンに対して、統合したプラットフォームでニーズに答えていく戦略を打ち出しています。

2018年のライブビジネスの見通し

Live Nation IRよりAll Digital Music作成
Live Nation IRよりAll Digital Music作成

有名アーティストの世界ツアーから、ローカルなライブハウスでのイベント、巨大な野外フェス、EDMやメタルなどジャンル特化型のフェスまで、ライブ・ネイションが関わるライブビジネスは多岐に渡ります。

ライブ・ネイションの戦略のコアは、音楽関連のイベントやライブビジネスを世界規模で拡大させ、高利益率のグッズ販売や飲食販売、スポンサーシップ、チケットビジネスを成長させていく戦略を進めています。

ライブ・ネイションのCEOマイケル・ラピーノ(Michael Rapino)は、2018年はさらにグローバル展開を拡大しライブビジネス市場のリーダーとしての地位を高め、イベント会場での「ホスピタリティ」サービスを強化していくことを視野に入れています。

さらに大きな収益源としては、スポンサービジネスの領域で、多くのブランドがマーケティングやブランディング戦略の一貫として、ライブ・ネイションのプラットフォームから音楽ファンと直接つながる施策として捉えていることに今後も期待が高まります。

ソース

Live Nation Entertainment Reports Fourth Quarter And Full Year 2017 Results

デジタル音楽ジャーナリスト

専門は「世界の音楽ビジネス、音楽業界xテクノロジー」の執筆・取材・リサーチ。音楽ビジネスメディア「All Digital Music」、音楽業界専門のマーケティング支援会社「Music Ally Japan」や、音楽ストリーミング・データ分析プラットフォーム「Chartmetric」日本事業展開も担当。グローバル音楽業界、レコード会社、ストリーミングサービスのビジネスモデル、トレンド分析、企業分析に関する記事執筆多数。

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