「市民自治」の実践モデルが人口900人の村にある~岡山県新庄村議会「自分ごと化会議」~

構想日本スタッフ撮影

岡山県新庄村では現在、私がコーディネーターを務めて「村づくり自分ごと化会議」(住民協議会)を行っている。住民協議会とは、住民基本台帳や選挙人名簿から無作為に抽出し送付、その中で応募のあった人と行政の様々なテーマについて4~5回(各回3時間程度)議論し、方向性を見出していくもの。私が所属する構想日本が発案し全国の自治体において開催の協力をしている。

今回の新庄村のテーマは「役場庁舎の建て替えについて」。1月12日は第2回会議だった。

この回は、ナビゲーター(外部の専門家の立場で刺激を与える役割)として、元消費者庁長官で元我孫子市長の福嶋浩彦さんに来てもらった。

ナビゲーターの福嶋浩彦さん(右)とコーディネーターの筆者(左)(構想日本スタッフ撮影)
ナビゲーターの福嶋浩彦さん(右)とコーディネーターの筆者(左)(構想日本スタッフ撮影)

新庄村は人口が900人ほど。構想日本がこれまで130ヵ所程度の自治体で行ってきた事業仕分けや住民協議会の中で、最も人口の少ない自治体が約15000人なので、一気に桁が2つ減ったことになる。

この900人の村が今おもしろい。

今回の会議の一番大きな特徴は、議会が主催をして実施していること。昨年春、磯田議長が上京された際に住民協議会について説明して大変に関心を持ってくれて、これを議会で行うべく他の議員に声をかけ、夏には8人の議員皆さんで東京の構想日本オフィスまで来られて住民協議会の話を聞き、議長の決断で実施することに。議会が一枚岩となって行うのは、全国初の試みである。

磯田博基議長(構想日本スタッフ撮影)
磯田博基議長(構想日本スタッフ撮影)

「900人の村だったら無作為抽出する必要ないのでは?」

と思われるかもしれない。私も思った。議長曰く「行政や議会の集まりに出てくるのは『世帯主』(=男性かつ高齢)しかいない。それを変えるために無作為抽出をしてみたい」。そのくらいに、行政主催の会議では、決まった顔しか来ないと仰っていた。

120人を無作為に抽出して送付。その中から応募のあった人は17人。応募率にすると14.2%。これまで120回以上行ってきた同様の取組みの中で最高の応募率だった。さらに、17人のうち6名(35%)が女性。かつ40代以下が40%。「普段出てこない人ばかりが参加している」(議員の皆さんの声)。これだけでも半分成功したと思える。

そして2回目の議論。

庁舎の建替えに関して、大きく4つの選択肢を提示して意見を聞いた。

1.今の場所に建替え

2.ほかの場所に建替え

3.今の庁舎の大規模改修をする

4.既存の建物を活用する(役場機能の分散化)

1~3は一般的に庁舎建て替えの時に必ず出てくる論点とも言えるが、4つ目の役場の分散化は従来はあまり出ない。これは、無作為で選ばれた人から出てきた意見。そしてこの意見がどんどんとつながり、広がっていく。役場という建物があることが目的ではなく役場の機能が維持できて住民の満足度が低下しなければ何も悪いことではないのでは、という趣旨の話が続く。

構想日本スタッフ撮影
構想日本スタッフ撮影

この会議は4回でとりまとめを行う。一切のシナリオはない。だからどのように決着するのかもまったくわからない。それが住民協議会の醍醐味だ。残り2回、どのように議論が進むのか、とても楽しみ。

構想日本スタッフ撮影
構想日本スタッフ撮影

議会が多様な住民の意見を聞いて、そのうえで判断をする。これこそが市民自治ではないか。

新庄村議会は4月に選挙がある。つまり、間に選挙を経ながらこの会議を開催することになる。もしかしたら議員構成が変わるかもしれない。それでも、必要なことは行うという議員の皆さんの心意気には頭が下がる。本当に素晴らしい。このような議会は全国のモデルになってほしい。

第3回は、5月8日(水)18時~の予定。