ソニーの電気自動車コンセプトカーが見せているのは未来なのか?という疑問

ソニーのコンセプトカー・VISION-S(YouTubeより)

今年もラスベガスでCESが開幕し、早速各社のテクノロジーを中心とした発表が話題となっています。中でも、びっくりしたのが、まさかトヨタが街づくりの発表をして、ソニーが車を発表したことです。

特にソニーについては、今回はどう考えてもPS5の話が出てくるタイミングなのに、隠し玉としてコンセプトカーを出してきたのが面白いので、ちょっと細かく見ていこうと思います。

ソニーのコンセプトカーの名前は「VISION-S」です。なんでしょう、ソニーのビジョンということなんでしょうか?ちょっと名前だけではよくわかりません。

ということで、続けてそのコンセプトカーのコンセプト動画です。

ハンズオンという言い方を車に対して使っていいのか悩むところではありますが、すでにCESの現地からのレポートもアップされています。

これだけを見ると、私が年末に見せてもらったNISSAN ARIYAなどと比較して、そこまで未来感があるかな?という感じも正直あります。なお、ARIYAもコンセプトカーですが販売間近とも噂されているレベルのものです。

また、追加情報として入ってきているのが、以下の内容。

  • ソニーは車を製品として売る気はない
  • このVISION-Sの開発期間は約2年

まずは、部品メーカーなどの協力があれば、会場で実際に動くコンセプトカーを2年で作れてしまうことにびっくりしますが、製品として売る気がないと明言しているところがポイントです。

ちょっとソニーの立場を整理してみましょう。ソニーはもちろん映像を中心としたコンシューマー向けの製品やサービスを提供しているメーカーです。しかし撮像(CMOS)センサーなど他の会社の製品に組み込まれるための製品も手掛けており、その点ではいわゆるB2Bメーカーでもあります。

そして、その撮像センサーはこれまでもデジカメやスマホなどで活躍してきていますが、AIだのなんだのという領域になってきたときに、デジタルの世界と現実との接点としてセンサーどんどん重要になってきます。

例えば、ソニーのWebサイトにも「ソニーの車載用CMOSイメージセンサーは、自動運転の切り札となるのか?」というテクノロジーストーリーのページが用意され、こんなことが書かれています。

技術の差異化と、あとは提案力の強化ですね。お客さまがいま何に困っていて、それに対してわれわれの技術でできることを提案していくと、部品売りのビジネスから、もう少し上流のビジネスになっていくのではないかと思います。

出典:Sony Japan | テクノロジー | Stories|

つまり、2年前の時点でセンサーメーカーとしてのソニーには危機感があったんじゃないかと思うわけです。自分たちのセンサーを活用してくれれば、もっと車は進化できるのに!車メーカーなにやってんの!ということですね(笑)。

言ってみれば、その苛立ちの具現化がこのソニー「VISION-S」なんじゃないかと思うわけです。もう少しいやみな表現をすれば、車メーカーぜんぜんわかってない!もっとうちのセンサー買え!ということでもあるんじゃないかと。

例えば、CMOSセンサーでいうと、ソニーはかなり画期的なものをいくつも発表済です。

ひとつ例を挙げると、人の目に近い可視光領域だけではなく、そこにさらに赤外線の認識まで埋め込み可能になっているCMOSセンサーなんてのがあり、まもなく製品化されると言われています。これはつまりこれまで可視光だけでしか見えなかったものが赤外線で見えるものも含めて見えるようになるということです。もちろんこれまでも赤外線センサーはあるんですが、可視光センサーといっしょになっているところがすごいわけです。他にもほぼ暗闇でも検出できる暗所に死ぬほど強いセンサーなんてのもあります。

この辺のCMOSセンサーがこれまでのデジカメとかスマホに搭載されているものとなにが違うのかというと、別にそのセンサーで取得した情報できれいな写真とか動画を生成しようってわけじゃないところです。なにかを判断するための情報としての画像処理が必要なだけですから、きれいさよりも正確さとか、さらなる小型化・省電力みたいなものを求められるわけです。

そして、このVISION-Sがもう1つ提案しているのが、360度の立体音響体験である「360 Reality Audio」です。俗にホームシアター導入の最大の敵は、スピーカーの設置場所と家族の同意と言われるように、家の中で理想的な音楽環境とそのために必要なパーソナルスペースを確保するのは、それほど簡単なことではありません。

その点、車はパーソナルスペースが移動しているようなものですから、その問題が一気にクリアできます。その昔、車といえばカーステにお金をかける時代すらあったのも、そこに理由があります。さらに言ってしまえば、360 Reality Audioはすでにサービス段階にある技術です。

なにしろ、360 Reality Audioを使って家庭に立体音響を届けるための準備をアマゾンはすでに完了しています。3D音楽ソースはAmazon Music HDで配信され、さらに実質立体音響スピーカーであるEcho Studioを発表済みで、日本でも2月には家庭で楽しめる予定になっています。

そこまで現実的になっている技術を車に応用するとこうなりますよという現実化がVISION-Sの音楽機能になっているわけです。つまり、これも車メーカーに売りたい技術だし、というかきょうにでも売れる技術です。

さて、要するに私がなにを言いたいのかというと、ソニーがVISION-Sを開発している間に、車メーカーも車もずいぶん進化したんだなということです。そら、トヨタも次は街を作りますとか言うわけです。

ということで、結果的にですが、せっかくソニーが車を提案する!という種類のものであれば、もっとガッツリと未来が見たかったなあとも思うのです。どうしても思ってしまう。

窓は全部8Kディスプレイになっていて、もう外とか見なくても移動できますよ!とか、ハンドルとかいりません!とか、電車降りたらハチ公じゃなくてAIBOばりに駅前で待ってる!とか、実車で(車は動かないけど)がっつりグランツーリスモできますとか!なんだってあるじゃないかと妄想するわけです。いやさせて欲しいわけです。

ということで、結論としてはこの2年で車メーカーもソニーもずいぶんがんばったんだなあと、その結果同じようなところにたどり着いているのは、ホント自動運転含めつつ、とにかく安全に移動できる車社会が、もう先の未来ではなくて、あとは実行するだけの段階にきているんだなあと再認識しました。