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北朝鮮のシングルマザーに聞く コロナ苦境の女性たちは今 「体を売る女性が増えています」

石丸次郎アジアプレス大阪事務所代表
鴨緑江で洗濯する女性たち。現在は中国国境接近は厳禁だ。昨年9月に撮影石丸次郎

「コロナより飢えの方が恐ろしい」

春先から北朝鮮住民が心配していたことが現実になっている。

国境封鎖で貿易は壊滅、風邪の症状があるだけで長期隔離、中国国境に近づく者は銃撃せよと命令…常軌を逸した過剰なコロナ対策で経済は極度に悪化、売春せざるを得ない女性が増えるなど住民の苦境が深まっている。10月初旬、幼子を育てるシングルマザーに電話でインタビューした。

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◆「まだ子供のような女の子まで…」

皆が本当にしんどいです。コロナの前は商売をして何とか食べていけたんですが、市場が回らなくなって収入が減り家財道具を売り払う人、家を売って他人の家の倉庫で暮らしている人もいます。

(都市生活を放棄して)山奥に入って大豆やジャガイモを植え、山菜を採って食いつないでいる人もいます。もうすぐ冬なのに、どうするのでしょう? 

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体を売る女性がすごく増えました。20~30歳ぐらいの人が多いんですが、まだ子供のような女の子もいます。最近は取り締まりが厳しいので、紹介人を通して自転車に乗って呼ばれたところに行きます。

幹部や金持ちの浮気相手。1回行って20中国元(1元は約15.5円)、運がよければ30~50元。1カ月300元を与えて近くに住まわせている男もいる。私の周囲にもそんな女性が5人位います。捕まる人も増えました。

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中国との貿易が止まって何から何まで不足しています。便所紙もなくなりました。国産品で代替しようと国では言っていますが質が悪い。中国製のライタ-は、以前は2元だったのに今は10元します。食糧はどこの市場でも売っていて不足はありません。でも収入が減って庶民に白米を買う余裕がなく、トウモロコシや小麦粉を食べます。

切実なのは薬。7月以降は密輸もできなくなって中国の薬は消えてしまいました。それで鍼灸などができる人がもうけています。

工場はほとんど止まっていますね。平壌の方はわかりませんが、私の地元で稼働しているのは、木を原料にする製紙工場と、菓子やパンの製造工場くらい。食べ物は(生産すれば)市場で取引ができますから。

韓国の支援物資はまったく入ってきません。こちらでは「敵がコロナをわが国にまき散らそうと策動している」と宣伝しているので、支援は受け取らないのでしょう。

一番嫌なのは、建設だ、台風被災地の支援だという名目で国がお金を徴収すること。1カ月に100元も取っていきます。コロナで国境封鎖しているのを口実にして、政府が人民からむしり取って金もうけしているように感じます。

金正恩時代が始まってもうすぐ9年になりますが、(金正恩氏のことを)将軍様だ、天才だと宣伝しているけれど、昔も今もずっと貧しいままで何も変わらない。(政治は)自分たちのためにやっているんですよ。

私たちは一生懸命働いて自力で暮らしているのに金まで取られ宿題(賄賂)も求められる。動員作業もしょっちゅうです。まるで処罰を与えられているようです。

(政権は)外の情勢を知らせようとしません。何が怖いんでしょう? 人民が賢くなるのが恐ろしいのでしょうか? 

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※インタビューは搬入してある中国の携帯電話を使って行った。

アジアプレス大阪事務所代表

1962年大阪出身。朝鮮世界の現場取材がライフワーク。北朝鮮取材は国内に3回、朝中国境地帯には1993年以来約100回。これまで900超の北朝鮮の人々を取材。2002年より北朝鮮内部にジャーナリストを育成する活動を開始。北朝鮮内部からの通信「リムジンガン」 の編集・発行人。主な作品に「北朝鮮難民」(講談社新書)、「北朝鮮に帰ったジュナ」(NHKハイビジョンスペシャル)など。メディア論なども書いてまいります。

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