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強豪イタリアも撃破。ネーションズリーグ2022で全日本男子バレーボールが快進撃を続ける理由

市川忍スポーツライター
大阪ラウンドでの日本代表(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

『バレーボール・ネーションズリーグ2022』に参加している全日本男子バレーボールチームが強豪イタリア(世界ランキング5位/6月22日現在)をフルセットで破り今大会5勝目を挙げた。これで日本は総合成績を5勝1敗15ポイントとし、参加国16チーム中3位となった。

25日には東京五輪金メダリストで、今大会ここまで1位のフランスと戦う。

西田、石川の安定感に加え、あえて挙げたい2名の選手

まさに快進撃である。

西田有志、石川祐希の活躍は今さら触れる必要はないだろう。総得点で西田は全選手中、第1位。ベストサーバーランキングでも1位に位置している。

ただし、ネーションズリーグでの全日本の最大の長所は、各選手が自分の役割を理解し、徹しているところだ。

その全メンバーの中で、あえて立役者を二人挙げるとするならば、セッターの関田誠大とミドルブロッカーの山内晶大だろう。

関田は東京五輪でもベスト8入りに大きく貢献した。今年、春までポーランドの1部リーグ『クプルム・ルビン』に所属し、世界一とも言われるポーランドのバレーボールを肌で感じてきた。

大阪ラウンドでの関田選手
大阪ラウンドでの関田選手写真:YUTAKA/アフロスポーツ

ネーションズリーグ開幕前の会見で関田はこう語っていた。

「ポーランドでプレーをしたことで、プレーの幅が広がったと思っています。ポーランドのリーグではミドルブロッカーの攻撃を使うチームが多く、両サイドへのトスも速い。これが世界標準なのだと痛感しましたし、自分も世界で戦うためには、サイドへの速いトスを上げられるようにならないといけないと思いました。何より、上げるだけではなくて、しっかり得点にもつなげている。得点源になっているという事実がとても重要に思えました」

ネーションズリーグで驚いたのは石川とのコンビネーションでのスピードだ。石川が到達する高さを想定して、今までよりさらにスピードのあるトスを上げている。速さを追求すると、どうしても低いトスになりがちなのだが、関田の場合は高くて速い。

高く、速いトスを上げるコツ

以前、関田に「速いトスを高く上げるコツは?」と尋ねたことがあった。

「そりゃ怖いですよ。もしアタッカーのタイミングと合わなかったらそのまま失点になる可能性が高い。でも、思い切って上げることが大事だと思っています。特に試合での最初の1本目は丁寧にいこうとして低くなりがちなんですが、ブランからも『ミスしてもいいから思い切り上げなさい』と言ってもらっています」

その〝高さを生かした〟スピードのある攻撃はミドルブロッカーの山内とのコンビにも表れている。

山内が常に攻撃に入る準備をしているからこそ、サイドアタッカーへのマークが薄くなる。その得点数以上に山内の貢献度は高い。

「同じパナソニックのクビアク(ミハウ・クビアク)も(フェイクセットを上げる際に※注1)そうなんですけど、関田もどんな場所からも僕に上げようとしてくれるので、そういうセットを打つのは好きですね。〝遊び〟じゃないですけど、楽しみなから、遊び心をもってクイックの練習をしているので、それが試合で出せるととても楽しいです」(山内)

「バレーボールが楽しい」

山内は2014年に全日本入り。〝ネクスト4〟と名付けられ、将来を嘱望される選手としてマスコミに取り上げられた。高校に入ってからバレーボールに転向した異色の選手だったが、周囲との経験値の違いに苦しんだ時期もあったという。

「バレーボールが楽しくなったのはここ数年ですね。全日本に選ばれたばかりのころは、もうコートの中で何をしていいのかわからなくて……。本当に徐々に、自分のやるべきことが理解できて、実行できるようになりました。そして、そういうプレーができるようになってきたから、心に余裕ができて、こうして楽しめるようになったんだと思います」

関田も言う。

「ポーランドで実力のある選手たちとプレーしたり、対戦したことで、精神的に余裕が持てるようになったのが大きいですね。試合中に目の前のことでいっぱいいっぱいにならず、先のことや修正すべき点を冷静に考えられるようになりました。余裕が持てるようになった自分の変化にも期待したいです」

高いレベルに身を置く中で、努力を怠らず、着実に自信を手に入れてきた。そんな二人だから感じる〝楽しさ〟なのだろう。

全日本に感じる、どんな壁も乗り越えそうな図太さ

全日本男子は第2週でフランス、スロベニアと対戦したあと大阪に場所を移し、オーストラリア、カナダ、ドイツ、ブラジルと戦い決勝トーナメント進出を目指す。

ネーションズリーグ2022は東京五輪の翌年ということもあり、五輪後に世代交代に着手したことがうかがえるチームが多い。まだチームコンセプトが固まっておらず、チームを構築している最中の国も目立つ。これから試合を重ねるごとに、もっと結束し、もっと強くなり、パリ五輪を目指す全日本の前に立ちはだかるだろう。

しかし全日本のメンバーには、たとえ敗戦してもそれを糧とし、どんな壁でも乗り越えてくれそうな図太さを感じる。努力が結果として結実したからこそ得られる自信や、自分を磨くために挑戦し続けたという経緯から生まれる自信。

その自信を胸に、これからも目の前に現れる壁を乗り越えていくであろう全日本の姿に、この先も期待したい。

(注1 クビアクはアウトサイドヒッターだが、自分が打つと見せかけてブロックを釣り、ほかのアタッカーにセットするプレーを多用する)

スポーツライター

現在、Number Webにて埼玉西武ライオンズを中心とした野球関連、バレーボールのコラムを執筆中。「Number」「埼玉西武ライオンズ公式ファンブック」などでも取材&執筆を手掛ける。2008年の男子バレーボールチーム16年ぶり五輪出場を追った「復活~全日本男子バレーボールチームの挑戦」(角川書店)がある。Yahoo!公式コメンテーター

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