Web業界3大キーワード「ビジュアル×ソーシャル×モバイル」
クローズドSNSのPathが10億ドルの評価額での資金調達を計画しているというニュースが流れているが、先んじて、瞬間写真共有サービスのSnapchatは、1億ドルの資金調達に成功したらしい。報道によれば、評価額(プレ)は5億ドル。ということは、現在のSnapchatの企業価値は6億ドル、ということになる。Pathとともに、起業家なら誰でも憧れるワンビリオンダラークラブ入り(評価額が10億ドルを超えること)も間もなくというところだ。
そのSnapchatは、まだほとんどマネタイズしていない。にも関わらず、これだけの評価金額がつくのはなぜだろう?
Snapchatはわずか数秒間しか見られない写真を中心としたメッセージを友人同士で送りあうコミュニケーションサービスだ。
同じようなアイデアをサービスに取り入れることは非常に簡単だ。たとえばLINEがスタンプを送る代わりにおもしろい写真を加工し、それを数秒間だけ表示させるようなサービスを取り入れれば、日本ではSnapchatが本格上陸する前にこのようなニーズを押さえられるだろう。実際、Facebookのスマホアプリ「Poke」は、このSnapchatを相当に意識して開発された類似サービスだ。
こうなると、現在のインターネットビジネスで最重要なキーワードを「ビジュアル」「ソーシャル」「モバイル」の3要素だといわざるをえない。
「ビジュアル×ソーシャル×モバイル」を兼ね備える新興ベンチャーをリストアップしてみると以下のようになる。
評価額25億ドルの写真共有サービス
・Fab.com
評価額10億ドル超のデザイン特化EC
評価額10億ドルでFacebookの買収された写真共有サービス
・Pheed
直近の資金調達計画はわからないが、ユーザーにコンテンツ有料配信の機会を与えるマルチメディア型Twitter。2013年1月にはAppStoreでのダウンロード数でFacebookやInstagramを圧倒
・Path
評価額2億5000万ドル(2012年時点)で資金調達を成功させた小規模グループ専用のモバイルSNS
日本国内でもPinterestクローンといえるSumally、日本のオタクコンテンツの配信プラットフォームとして注目を浴びるTokyo Otaku Modeなど、多くのスタートアップが存在している。SNS構築支援サービスであるRevolverも、またそのひとつだ。
どれをとっても、UIは非常によく似ている。特にモバイルでの利用体験には驚くほど違いがない。違うのはコミュニケーションするか、写真を保存するか、写っている対象物を購入させるかなど、写真をクリックさせた後のユーザーの行動だけだ。
実物を手にした人はそういないだろうが、大正時代や昭和初期の雑誌はわずかな挿絵があるばかりで、ほとんどがテキストだけのものだった。しかし2013年のいま、コンビニに置いてある雑誌を手に取れば、どれもが写真だらけになっている。表面積でみても、70~80%が写真やイラストだ。それを思えば、PCやスマートフォンのように高彩度の画像を撮影したり閲覧できるデバイス上でも同じことが起きるのは当然だ。
現在のインターネットのコンテクストは、スマートフォンもしくはタブレットの比較的小さく(4~10インチ)、さらに縦型の画面上で流通し、さまざまなソーシャルメディアを介してシェアされている。逆にいえば、この制約条件の多い画面上で見やすくてシェアされやすいコンテンツは写真あるいは短い動画しかないということになる。
いま、天地で綴じている商業誌はまず見かけない。また雑誌自体の大きさも、週刊誌や月刊誌などの発刊タイミングに合わせて、ほぼ同一規格に収まっている。同じように、インターネットのコンテクストに合わせてユーザーファーストなサービスをつくろうとすれば、まずスマートフォンで写真や動画が見やすいUIを考えるべきである。そして雑誌同様に、ほとんどのサービスで同じようなUIに落ち着くのはやむを得ないことだ。
「ビジュアル×ソーシャル×モバイル」のキーワードに合わせてインターネットサービスを考えるときには、少なくとも現時点ではUIにあまり凝ることなく、不偏的な同一規格に甘んじたほうがよい。凝るべきなのは提供されるコンテンツそのものであることを、今一度考えるべきである。