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Googleリーダーは閉鎖され、MailBoxがDropboxに買収されたのはなぜか?

小川浩株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。
Googleリーダー、サービス停止

Googleリーダー(GoogleブランドのWeb型RSSリーダー=RSSフィードによるWebの更新情報を効率的に読むツール)がサービスの停止をするそうだ。

Yahoo! Japanを始め、さまざまな企業がGoogleリーダー愛好者の乗り換え先として名乗り出ている。GoogleリーダーはRSSフィードの登録先リストをダウンロードできるから、そのリストを別のリーダーにアップロードすれば、基本的に購読環境を再現できる。とはいえ、サービスというものは、UIこそが重要だから、乗り換えたところであまり使い勝手が良くなく、なじめなければRSSリーダーそのものの利用をやめる、という選択をするユーザーも多く出るだろう。

なぜGoogleがRSSリーダーの開発をやめるのかについては、ここでは深く触れない。メディアで流れるような最新ニュースの取得ということであれば、RSSリーダーではなくともTwitterやFacebookなどのソーシャルネットワーク経由でかなり代用されているので、GoogleとしてもGoogleリーダーではなくGoogle+にこのフィード購読機能は包含させていくほうが効率もいいし、戦略的に合っている、ということなんだろうと思う。

逆に、技術としてはあまりにもレガシーに過ぎる”電子メール”の送受信ツールであるGmailは、いまだにGoogleにとって非常に重要なツールであり続けている。そして、そのGmailをiOS(iPhoneやiPad)で読むためだけのモバイルアプリ「Mailbox」を作っているスタートアップ Orchestra,Inc.が、オンラインストレージで急成長を続けているDropboxに買収された。もちろんネガティブなものではなく、非常にいい条件での好意的なM&Aのようだ。一説によると1億ドル前後らしい。

Mailboxは、ベースはGmailであり、WebのGmailもしくはGoogle自身がリリースしているモバイルアプリのGmailよりも使いやすそうだということで、非常な人気を博している。未だにダウンロードできずに、順番を待っているユーザーが数十万人を超えると言われているほどだ。

つまり、GoogleリーダーはHTMLに続く重要技術と目されてきたRSSをベースとした、テクノロジー依存のサービスだったが、Mailboxは古臭いPOP/iMAPメールの読み書きに使うメールアプリに過ぎない。しかし、Mailboxは、その古臭いレガシーなテクノロジーを快適に使うための先進的な(スマホに最適な)使い勝手のUIをベースとした、デザイン依存のサービスなのである。

これは、正直比べて論じる類いの問題ではないのだが、スタートアップとしては、面白い技術や新しい概念といったテクノロジーそのものに賭けるよりは、昔から使い古されているけれど使い勝手のよくない、もしくは使い勝手の悪さに気づかないくらい一般化している事象に対して、よりよい使い勝手を提案する道に賭けるほうがよいのではないか?あくまで確率的な考え方であるが、スタートアップに挑むという大きなリスクをとるのであれば、勝てる方向を目指す方がよい、そう感じるのである。

株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。

複数のスタートアップを手がけてきた生粋のシリアルアントレプレナーが、徒然なるままに最新のテクノロジーやカッティングエッジなサービスなどについて語ります。

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