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PathがLINEに宣戦布告「スタンプではない、ステッカーだ」

小川浩株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。
ステッカーの有料化でマネタイズ?

プライベートSNS、モバイル専用SNSの両側面を持つ、シリコンバレーの有望株の一つであるPathが、LINEに触発されたと思われる新機能群とマネタイズプランを発表した。僕の予想通り、LINEの対抗サービスとしての顔を全面に出し始めたのである。具体的にいうとプライベートメッセージ機能を拡張し、スタンプに酷似したステッカーというサービスを提供し始めた。さらにステッカーの作成には有名デザイナーを起用し、今後有料ステッカーの販売(Shop)にも踏み込んだ。

LINEは相変わらず元気だ。無料通話アプリからモバイルSNSに進化し、そしてゲームなどを含むアプリ開発のためのオープンプラットフォームへと変貌しつつある。すでに世界200カ国以上で利用され、登録者は1億人を超えた。LINEはNAVERで知られる韓国企業NHN Corpの日本法人であるNHN Japanによって開発、運営されているのだが、和魂洋才ならぬ和韓洋才、とでも言えば当たっているかもしれない(笑)。

ソーシャルネットワークサービスは、Facebookが世界制圧した時点から大きく変容してきている。実名ネットワークとして誰もがアカウントをもち、共通の基盤としてはFacebookが圧倒的な勝利を収め、それを良しとしないGoogle+が基本的に同じコンセプト・同じサービス内容で追っている状況だが、誰もが使うサービスになるということは特殊なニーズには応えにくい、というジレンマに陥る。

その結果、米国では友人として登録できるのは150名までという“人数制限”および“モバイルベース”を売りにしたPathが登場した。そして“写真だけ”“モバイルだけ(Webに進出するらしいが)”縛りのInstagramが、10億ドルクラブの仲間入りをした。“写真だけ”縛りではPinterestが台頭したし、“マルチメディアコンテンツの共有”にフォーカスしたTumblrがTwitterを超える成長を見せている。彼らに共通するのは、なにかにフォーカスしていることと、原則としてモバイルサービスであることだ。

LINEは、上記のFacebook生態系の上や隙間に咲き始めた、新しいソーシャルネットワークサービス群の中でいえばPathに近い、と僕は思っていたが、いよいよ両者の差異は縮まってきた。Pathは2.5億ドルの評価額をもって、2012年の4月に3000万ドル程度の資金調達を行っており、日本人にはまだ見えないところで急成長を続けている。LINEは世界に打って出るうえで、おそらくはこのPathとの直接対決となるのではないか、と僕は考えていた。それがLINE側ではなく、Path側がLINEの模倣をすることではっきりした。

Pathの創業者でありCEOであるDave Morinは、元Facebookの社員であり、前述のようにFacebookが補えていないモバイル分野のサービスであるうえ、拡張しすぎたことでFacebookが失いつつある「本当にクローズドな関係=親や兄弟や親友たち」でのコミュニケーションに強いということから、出口戦略は結局Facebookに売ることであるかもしれない。となると、LINEの敵はやはりFacebook、ということになるかもしれないのである。

もちろんFacebookにLINEを売るという選択肢が、NHN Japanにはある。となれば、Path vs LINEは、Facebookにどちらが先に買ってもらえるか? というゲームになるのかもしれない。

via MdN Interactive (「LINEの行く手を阻むのはPathか?(2012年07月23日)」をリライト)

株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。

複数のスタートアップを手がけてきた生粋のシリアルアントレプレナーが、徒然なるままに最新のテクノロジーやカッティングエッジなサービスなどについて語ります。

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