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悪魔のZになるか、スクラップになるか。

小川浩株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。
悪魔のZになるか、スクラップになるか

人間というものは環境変化にはなかなか気がつかない。なぜかというと、人間は万物のすべての存在と同様に時間軸の上にいる、簡単にいうと年をとるからだ。

年をとることで経験を積めたのは20世紀までのことで、21世紀では豊富な経験より迅速な検索のほうがモノをいう。つまり、たいていのことであれば、年齢を重ねたことのメリットよりデメリットの方が大きくなってしまっているのだ。

環境変化の速度が圧倒的に速くなった現代では、経験値をアップする速度より知識が古びていく速度の方が速いから、せっかく上げた経験値はすぐに陳腐化する。なのに年をとることで知識を上書きしていく力がどんどん失われていく。まさしく現代ほど老害というものが巷に溢れ出し、広がっていく時代はないと言える。その意味で、ITやネットが人間そのものの価値を大きく変えつつあるのだ。

年功序列やキャリアップが社歴の長さに相当左右されてしまうような、官僚的な組織はまだまだ多いので、「いやいや若者には負けない」「俺の知識と経験は・・」などとのたまう方も多いのだが、そんなことを一言でもつぶやけば、それは既に老いている、もしくは粗大ゴミ化している証拠である。下克上のない、時代遅れで硬直化した組織体系に助けられた、ある意味幸福な存在なのだと自覚することさえできないかもしれない。

とはいえ、年をとることと老いるということは必ずしも同義ではない。

僕が好きなコミックに「湾岸ミッドナイト」(楠みちはる)というのがあるが、主人公が乗る車は悪魔のZという通り名を持つ、1970年代の旧車(フェアレディZ。型式はS30Z)だが、徹底したチューニング(改造)による性能向上と、乗り手の”乗り続けていくという意志”によって最新のスポーツカーにも負けない走りを見せる。時代遅れの恐竜と揶揄されながらも現役を退くことを拒否する。

要するに、人間も車と同じで、ほっておけば錆びるし朽ちていく。日常のメンテや、時として意を決して大改造に踏み切ることで、後から後から生まれてくる強敵と渡り合わなければならないし、それができる!という強い意志を持ち続けることが重要だ。

このテキストを読んでくれた人の年齢は様々だと思うが、若い世代ならばその優位に甘んじるなと言いたいし、僕と同じような世代であれば、ぼうっとしていると時代遅れのポンコツになるということを自覚しようと呼びかけたい。

株式会社リボルバーCEO兼ファウンダー。

複数のスタートアップを手がけてきた生粋のシリアルアントレプレナーが、徒然なるままに最新のテクノロジーやカッティングエッジなサービスなどについて語ります。

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