ビュッフェから進化した「ヒルトン東京」の新デザートフェアがスタート

2020年5月下旬、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が解除され、段階的な規制緩和が始まった。多くのホテルで人気の企画であるスイーツビュッフェも、6月中に準備を整え、この7月から新たにスタートし始めている。

4月以降、都内のホテルでは、館内のレストランやペストリーショップの休業や営業縮小が相次ぎ、特に「ビュッフェ」のサービスを休止したところが目立った。客側からは引き続き利用したいという声が多くても、共通のトングを使用することや、行列や撮影で人が過密になりがちなことへの対策など、サービス内容の見直しをせざるを得なかったのだ。

その結果、7月から新たに始まった各ホテルの企画は、単なる「スイーツビュッフェの再開」ではなく、ビュッフェの魅力を引き継ぎつつ、これまでとは異なる楽しみ方を提案する、「新しい生活様式」に即したやり方が注目されている。

ヒルトン東京「マーブルラウンジ」の新デザートフェアのプレゼンテーション台は華やかなフォトスポットに(筆者撮影)
ヒルトン東京「マーブルラウンジ」の新デザートフェアのプレゼンテーション台は華やかなフォトスポットに(筆者撮影)

新宿西口のホテル「ヒルトン東京」1階「マーブルラウンジ」では、2階まで吹き抜けの、広々としたラウンジで楽しめるデザートビュッフェが大人気だ。緊急事態宣言が出された時は、一年のうちでも最も人気の高い「いちごデザートビュッフェ」を開催中で、5月11日までの予定だった。しかし新型コロナの影響で、3月30日よりビュッフェ形式を中止し、デザートをプレートで提供するサービスに変更。4月8日にはそれも中止となり、デザートビュッフェ自体の営業を休止することになった。

このような状況を踏まえて、2020年7月1日~9月30日に開催の新たなデザートフェア「マリー・アントワネット スイーツ・オートクチュール」は、タイトルが示すとおり、これまでの「ビュッフェ」の枠を超えたサービスを提案する。

14:30又は15:00スタートの2.5時間制で、ホームページから予約を受け付けているが、席数を208席から160席に変更し、十分な距離を保った空間を確保。ホテルのグループ全体で掲げる「ヒルトン・クリーンステイ対策」に基づき、スタッフは全員マスクと手袋を着用といった基本的な感染予防対策を順守する。利用客にも、食事以外で席を立つ際はマスクの着用を呼びかけ、「体調がすぐれない、熱があるなどの場合は入店をお断りさせていただきます。」と掲げている。

一方で、日常を離れた優雅な雰囲気を楽しんでもらいたいという思いから、入店時の手指消毒も、マリー・アントワネットのイメージに合わせ、香水ボトル入りの消毒スプレーをふりかけて行うといった、遊び心を利かせた演出もある。

ヒルトン東京「マリー・アントワネット スイーツ・オートクチュール」ではアフタヌーンティースタンドも活用(筆者撮影)
ヒルトン東京「マリー・アントワネット スイーツ・オートクチュール」ではアフタヌーンティースタンドも活用(筆者撮影)

最も大きな変化は、デザートを取り分けるために会場内で大勢が並んでしまう可能性も高いビュッフェ形式を避け、様々な提供スタイルを採り入れたことだ。席につくと、鳥籠のフォルムが印象的なアフタヌーンティースタンドが1人ずつに用意され、幾種類ものデザートがセッティングされている。紅茶も、セルフサービスで取りに行くのではなく、10種類ほどの中から選んでオーダーすると、ポットサービスでテーブルまで各自に運ばれる。

ヒルトン東京「マリー・アントワネット スイーツ・オートクチュール」のプレゼンテーション台にはスイーツのサンプル品を展示(筆者撮影)
ヒルトン東京「マリー・アントワネット スイーツ・オートクチュール」のプレゼンテーション台にはスイーツのサンプル品を展示(筆者撮影)

これまでも、会場の入り口付近には、デザートと華やかな装飾を盛り込んだフォトジェニックなプレゼンテーション台があり、来場者にとって絶好の撮影スポットとなっていた。今回もそれを踏襲しているが、デザートは食べられない見本品に変更。今回はここから取り分けるということはなく、展示のみ。本物を置けば終了する頃にはとけてしまい、結果的にフードロスになることを思えば、エシカルで妥当な選択であると言えるだろう。

ヒルトン東京「マリー・アントワネット スイーツ・オートクチュール」ではワゴンサービスでもデザートが運ばれる(画像提供:ヒルトン東京)
ヒルトン東京「マリー・アントワネット スイーツ・オートクチュール」ではワゴンサービスでもデザートが運ばれる(画像提供:ヒルトン東京)

さらに、テーマに合わせて装飾されたデザートワゴンが各テーブルをまわり、デザートをサービスするというのも新たな取り組みだ。お菓子は、大きく作って切り分けるよりも、小さなサイズで1つずつ作る方が、何倍も手間がかかる。愛らしい作り込みに加えて、取り分ける時にうっかり形を崩してしまうこともなく、プロならではの美しい盛り付けも嬉しい。

ワゴンで運ばれた愛らしいミニサイズのデザート盛り合わせ(筆者撮影)
ワゴンで運ばれた愛らしいミニサイズのデザート盛り合わせ(筆者撮影)
ヒルトン東京「マリー・アントワネット スイーツ・オートクチュール」では出来立てのデザートを提供するコーナーも拡充(筆者撮影)
ヒルトン東京「マリー・アントワネット スイーツ・オートクチュール」では出来立てのデザートを提供するコーナーも拡充(筆者撮影)

加えて、パティシエ達が要望に合わせてデザートを仕上げる「ライブステーション」のコーナーも、以前に比べて広くなり、サクサクのパイに好きなトッピングを選べるミルフィーユや、ホワイトチョコレート細工でバラの花びら風に仕上げる白桃のムースなど、職人の技を間近に見ながら、7種類のデザートが完成する様子を楽しむことが出来る。

様々な提案の中に、名物の「デザートビュッフェ」の雰囲気を損なうことなく、よりいっそう楽しんでもらえるようにと試行錯誤するホテル側の思いが垣間見える。

席数6割に「マイトング」、新体制でのぞむ「ホテルニューオータニ」のスイーツプレゼンテーション

ホテルニューオータニ(東京)「ガーデンラウンジ」で始まる「サンドウィッチ&スイーツプレゼンテーション」(画像提供・ホテルニューオータニ)
ホテルニューオータニ(東京)「ガーデンラウンジ」で始まる「サンドウィッチ&スイーツプレゼンテーション」(画像提供・ホテルニューオータニ)

一方、赤坂の「ホテルニューオータニ(東京)」では、「ガーデンラウンジ」の人気企画だった「スイーツ&サンドウィッチビュッフェ」を、徹底した衛生管理と安全対策のもと、「サンドウィッチ&スイーツプレゼンテーション ~ピーチ・マンゴー・メロン~」として進化させ、2020年7月23日~8月30日の毎週木~日曜日限定で開催する。

ホテルニューオータニ(東京)の「ガーデンラウンジ」(画像提供・ホテルニューオータニ)
ホテルニューオータニ(東京)の「ガーデンラウンジ」(画像提供・ホテルニューオータニ)

館内の「ガーデンラウンジ」は、1万坪の日本庭園を一望できる抜群の眺望が人気のレストランだ。その中でも、ホテルの看板商品である「スーパーシリーズ」の生みの親であるグランシェフの中島眞介氏が手掛けるプレミアムなスイーツとこだわりのサンドウィッチが楽しめる「スイーツ&サンドウィッチビュッフェ」は、「最長50mの大行列ができ、連日満席となるほどのご好評をいただいてきました。」(ホテル広報担当者談)という。

5月からは新型コロナウイルス感染症への安全対策からこの企画を休止していたが、徹底した衛生管理と安全対策、混雑緩和に取り組み、新たに生まれ変わる。「名称を変更したのも、NEWスタンダードのもとで新しく生まれ変わったということを伝えるためです」(同担当者談)とのことだ。

ホテルニューオータニのホームページでは、レストランで取り組む新型コロナウイルス感染拡大防止のための様々な施策を掲げている(画像提供・ホテルニューオータニ)
ホテルニューオータニのホームページでは、レストランで取り組む新型コロナウイルス感染拡大防止のための様々な施策を掲げている(画像提供・ホテルニューオータニ)

「サンドウィッチ&スイーツプレゼンテーション ~ピーチ・マンゴー・メロン~」では、「ガーデンラウンジ」の座席数を従来の162席から約6割の96席に制限することで利用者間の距離を確保し、混雑回避のため予約制とする。各90分制で11:30~、12:00~、12:30~、13:00~、13:30~と分散。

また、入店時には非接触型検温器による検温、手指の消毒、マスクの着用を徹底する。一部エリアでは、ホテルスタッフが料理を取り分け、利用者が自分で取り分けるエリアでは、1名につき1つの専用トングを渡す。もちろん、トングは使用の度に高温洗浄にかけ、安心して利用できるようにしている。

ホテルニューオータニが取り組む、新型コロナウイルス感染拡大防止のためのスタッフの対策(画像提供・ホテルニューオータニ)
ホテルニューオータニが取り組む、新型コロナウイルス感染拡大防止のためのスタッフの対策(画像提供・ホテルニューオータニ)

今回のスイーツの目玉は、ピーチ・マンゴー・メロンの、みずみずしいサマーフルーツ達を使用したバラエティ豊かなラインナップだ。注目のチーズケーキをヘルシーに仕立てた「豆乳バスクチーズケーキ」や、和の素材を使った東京ならではの甘味「新edoくず餅ゼリー」も登場。「ホテルニューオータニ」を代表するシグネチャースイーツ、静岡県産の糖度14度以上のマスクメロンを採用したパティスリーSATSUKIの「スーパーメロンショートケーキ」も、ビュッフェサイズで用意する。

サンドウィッチの品揃えも豊富で、ホテル伝統のローストビーフをはさんだ「ローストビーフサンドウィッチ」をはじめ、料理長のこだわりとアイデアが詰まった品を一口サイズで楽しめる。

実際のところ、このようなクオリティを変えることなく席数を6割にも減らしたら、採算が合わないのでは?と気にかかるところだ。ホテル側でも、利益率が厳しくなる点は覚悟の上である。しかしまずは、安心できる環境で、家では味わえない贅沢なスイーツと雰囲気を満喫出来る楽しさを提供することで、「あのホテルで特別な時間を過ごしたい」と思ってもらえることが第一歩と考えているそうだ。

もちろん、今のスタイルで完成形という訳ではなく、試行錯誤しながら、客側にもホテル側にも望ましい、より進化した形を作っていきたいという。

連日、感染者の人数の増減が報道される中、「感染者ゼロ」にすることの困難さを感じつつ、私達は今後、「新型コロナのある中でどう暮らすか」に向き合う必要性に迫られている。

withコロナ時代に、都内屈指の人気を誇るスイーツビュッフェがどのように進化していくのか、利用客はもちろん、ホテルや飲食関係の同業者からも注目を集めている。美しく手の込んだスイーツと行き届いたサービスに心を満たされ、また頑張ろう!という気持ちになってもらえたならば、作り手やサービスを提供する側にとって何よりのやり甲斐となると共に、選ばれる存在価値となるだろう。