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中元日芽香、元アイドルという強み活かすカウンセラーとしての日々「なんでも聴くよ。」

長谷川まさ子フリーアナウンサー/芸能リポーター
カウンセラーとして充実の日々を語る中元日芽香さん(撮影:すべて長谷川まさ子)

 “体調不良で休業”…頑張りすぎて心と体が悲鳴をあげている。“無くならない誹謗中傷”…命を断つ人がいても、法的に訴えてもそれは続く。元「乃木坂46」の中元日芽香さんは、自らも「適応障害」を経験し、アイドルから心理カウンセラーとしてリスタートした経験を持つ。そんな彼女が、カウンセリング・エッセイ『なんでも聴くよ。』を上梓。そう、人に話し、聴いてもらうことって大切なのかもしれない。

―前回(2021年6月)は“カウンセラーになるまで”の話を伺いました。実際に活動して一番感じることは?

 カウンセラーとしての未熟さと葛藤しながらも、真摯に取り組んできました。そんな中で、相談者さんからはコロナ明けのお悩みを聞くことが多くなりました。

 コロナ期間中は、リモート授業やリモートワークという環境になったことで、人との繋がりに悩んでいた方たちは、「無理にみんなと仲良くしなくていいんだ」と力を抜き、自分の時間を取れていたようです。そこから徐々に日常の生活が戻り「やっぱり集団生活って疲れるなぁ」とか、逆に「仲良かった人と疎遠になっちゃった」と悩んでいる方もいて、時代の変化に即した悩みがあるなと感じています。

―カウンセラーとしてのリスタート、ご自身にとっては?

 私にとっては、すごく必要なことだったと思います。アイドルとしては目標に到達してしまったなと感じていた中で、やりたい仕事を見つけて、今続けられていることは幸せだなと思います。

―元アイドルで現在27歳の中元さんには、どんな相談が多いですか?

 “元アイドル”という事実が、私を知っていただくきっかけや、カウンセリングを受けるきっかけとなっている方も多くいらっしゃいます。とはいえ、普段のカウンセリングは会社員の方が多く、人間関係だったり、自分自身の将来に対する不安であったりというご相談が多いです。

 確かに、「アイドルになりたい」「テレビ局に就職したい」といった、業界の話が聞きたい方も時々いらっしゃいますが、一番は“自分に自信が持てない”という不安をお持ちの方が多いです。

―なぜ中元さんに相談しようと思ったのか、聞いたことはありますか?

 YouTubeに出演している動画や、前回本を出した時のインタビュー動画などを目にしたり、過去のアイドル活動を見た上で「性格が似ていそうだな」「柔らかい雰囲気だったので話をしに来ました」とおっしゃってくださる方が多いです。

 一般的なカウンセラーといえば、ホームページに写真と経歴が載っているだけ…というパターンが多いと思います。そういった方々に比べると、私は多少世に出ている情報が多いので、頼っていただく入り口としては安心できるのかなと解釈しています。

―今回、相談事を本にしようと思ったのはなぜですか?

 相談者さんや知人に「お悩みに答えている本を読んでみたい」とリクエストをいただいて、いつかチャレンジしたいと思っていました。前作はあくまで実体験だったので。とはいえ、「自分の本棚にあるとお守りみたいで安心する」とおっしゃって下さった方もいて。悩んでいる方にちょっと寄り添うことができるならと思い、執筆に至りました。

―どんなことを意識した内容になっていますか?

 元々カウンセラーは“決めつけ”をあまりしないので、「こうした方がいい」ということは書かないように心がけました。

 普段のカウンセリングでも気をつけていますが、相談者さんがAとBで迷っている時に私が「Aの方がいいよ」と言ってしまうと、相談者さんが決めた答えにならないですよね。私はその答えに責任を持てないし、相談者さんも中元が「Aがいい」と言ったからそうしたけど納得いかないな、となってしまう。

 カウンセラーとは、“AかBかを一緒に迷ってあげる人”“相談者さんの気持ちを整理する人”だと思っています。それを本で実践するのは対話以上に難しかったです。なるべくカウンセリングに近い体験が出来るような書き方を目指しました。

―回答では、自分の経験を引き合いに出されていることが多いように思いました

 執筆時に一つ思ったのが、私もその経験のある当事者だということ。もちろん全てを分かるわけではないですけれど、やっぱりその道を通った人にしか分からない気持ちはたくさんあると思っているので。

 例えば、しんどくて家を出られない気持ち…ちょっと分かるなとか。そんな時に私はこう思っていたよ、こんな言葉をかけてもらってちょっと救われたよというのを、あくまで一つの参考としてですが“自分だけじゃないんだな”と思っていただけたら嬉しいです。

 普段のカウンセリングでは「中元さん、これどう思いましたか?」と聞かれて参考までにお話しすることはあります。ですが、1時間という限られたカウンセリングの中で、私の話をたくさんしてしまい、相談者さんの話したいことが話せなかったという事態だけは避けたいなと思っています。

―カウンセリングは、言葉選びが大切だと思いますが…

 すごく考えていますし、今回の執筆でもいっそう難しさを感じました。多種多様なニュースを見聞きし、いろいろな人が日々闘っている中で、この言葉は言っていいのかなとか、これを言ったことでさらに悲しくなってしまう人がいたらとか。

 書くこと自体への葛藤もありましたが、それでもやはり言葉を使うのが“心理カウンセラー”だと思っています。言葉を交わすことで傷つく可能性もあるけれど、なるべくその傷つくことを最小限にしたいなと思った時に、配慮という意味で“言葉探し”はしました。「この表現でいいかな?いやこっちの方が適しているかな?」とか。文字は声のようにトーンや表情が分からないから、単語選び一つで刺さり具合というか鋭さが変わってくるので。

―以前より、カウンセリングを必要としている人が増えたようですが、背景に何があると思いますか?

 私が高校生の頃にスマートフォンが出始めて、Twitter(現:X)などが始まって。それまでは、ネガティブなことでも「学校で友達が悪口を言っているらしい」「近所から嫌われているらしい」という距離感だったはず。

 それが、SNSの台頭によりちょっと発信したことに対して、全く知らない世界中の人から攻撃を受ける世の中になってきました。SNSはいろいろな意見が入ってきて知識が増えますし、様々な人がいるのだということも分かります。でも、それらの情報を集約して“自分はどう考えるか”という作業にまで至らないと、ブレが生じてしまうというか、自分の軸を持つことが難しくなったと感じています。

 フォロワーさんのリアクションの良し悪しで、「自分は承認されているな」「自分の発信には価値がある」とか、逆に「価値がないな」と思ってしまう。すっかり他人軸で、自分の軸がブレやすくなっていることも、気持ちを病んでしまう要因の一つなのかなと感じます。

―誹謗中傷する人も、心が疲れているのでしょうか?

 友達やカウンセラーなど誰かに話してスッキリするのであれば、SNSに書くというところまで行かなかったりするのかなと。SNSは形に残るし多くの目に留まり、自分が知らない誰かを傷つけてしまうかもしれない。そういうところまで頭が回らないまま、簡単に書きこんでしまうこともあるのではないでしょうか。

 実はそういう方こそ会話を求めていて、話をする場が必要だと思います。でも、ご自身がそう思わないと、そういったチャンスにアクセスできないだろうし難しいです。

 誹謗中傷をして、そこに「イイネ」が付くことにより賛同を受けている、1人じゃない、自分の居場所はここにあったんだ!などと安心感を得ると、その方にとってその瞬間は、きっといい気持ちになるのだろうなと。

 でもそのままだと、また自身に注目してほしいという時に“誹謗中傷”をしてしまう。現実の世界だったらそんなことはしないけれど、自分が安心感を得るために“刃物”を振り回してしまうようなことも、SNSだからいいかとなってしまっている。現実とSNS上の使い分けは難しいですけれどとても大事です。

―心の病になる前に、本当は自分で気付けたら良いと思いますが…

 予兆、サインは私の時もありました。でもそれがサインだと知らなかったので、無視し続けて蓄積してしまった。手前でのサインが、もっと皆さんに広まるといいなと思っています。

 サインの出方は人それぞれですけれど、例えば「ここ2ヵ月くらい、前の自分と比べて、なんか涙もろくなったな」「なんでもない時に泣いているな」みたいなことや、「食べ物がおいしいって感じられなくなっているな」「寝たのに疲れが取れないな」とか。

 一つ一つのサインは小さいです。仕事や受験といったストレスイベントを乗り越えると同時にサインも消えた…という短期的なものなら良いけど、長引いていないかどうかは気にしてもらえたらなと思います。

 サインが長引いている時は、いつもより早く仕事を切り上げて自分の時間を取る…といったような対処ができると「うつ病」や「適応障害」などの精神疾患も、生活習慣病などと同じように予防ができるのではないかなと思っています。

―カウンセリングを受けることに、まだハードルが高いと思っている人も多いように思います

 カウンセリングで話すという事を、もう少し楽にとらえてもらえたらいいなと思っています。例えばメンテナンス。健康診断行くとか定期検診に行くとか、そんな感覚で“心のメンテナンス”もしてもらえたらうれしいです。ちょっと疲れたなという時に、何か頼る先の一つとして覚えておいていただけたら。

 カウンセリングはまだ透明性があまりないので、一度受けてみるまではどんなものなのだろうかと不安だと思います。でも、悩みがちょっと大きくて自分にはどうにもできないなという時に、誰かにちょっと話してみる感覚で受けてみると何か変わるかもしれない。受けてみて、向いてなかったらやめてもいいのです。

 カウンセリングじゃなくても、大笑いをするとか涙を流すというセルフケアもいいし、自分にとって向いているメンタルケアを見つけてほしいです。

―カウンセリングを受けた方の感想で、印象深い言葉は?

 「自分が思っているより大した悩みじゃないことに気がついて、意外とすっきりした」という方がいらっしゃいました。

 また、カウンセリング前には「1時間も話すことがあるかな」とおっしゃっていた方が、「仕事疲れたなぁ」「そういえば人間関係もいろいろあった」など、お話しするうちに自分の思ってもみなかった深いところに気付ける瞬間があった…という方もいらっしゃいました。

 カウンセリングでは、病院のように何か薬を処方することもないし、アドバイザーではないので「こうした方がいい」「これしないほうがいい」「宿題はこれね」というようなこともない。“一度きりの関係性”と捉えていただいたら、少しカウンセリングへのハードルが下がるのではないかと思います。

―カウンセラー中元さんの“ウリ”は?

 他のカウンセラーの方と比べると、年齢が若いので、年上のカウンセラーだとちょっと緊張しちゃうな…という、同世代の皆さんの力になれたらいいなと思っています。

 後は、全く違う業界への転身、そして「適応障害」や「睡眠障害」を経験しているので、当事者として分かってほしいなという方にとっては、よりリアルにお力になれたらうれしいです。

■インタビュー後記

2年半ぶりに中元日芽香さんに会った。印象的だったのが、前回より社会人の顔、“プロの顔”になっていたこと。仕事が人の顔を変えた…。そして今回のインタビューで印象に残ったのが、彼女の「言葉探し」という表現。我々も相手に伝える時に自然と言葉を選んではいるが、「選ぶ」は反射神経的に出来ていることだと思う。「探す」となると、そこには時間と苦悩、もしくは発見や喜びがあるかもしれない。そしてこの作業ができるカウンセラーだから、日芽香さんに話を聞いてもらいたいと思うクライアントがいる…そう思った。

■中元日芽香(なかもと・ひめか)

1996年4月13日生まれ。広島県出身。早稲田大学人間科学部eスクール卒業。2011年から6年間、アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーとして活動したのち、2017年にグループを卒業。認知行動療法やカウンセリング学などを学び、2018年にカウンセリングサロン「モニカと私」を開設し、心理カウンセラーとしての道を歩み始める。2021年、初の書き下ろしエッセイ『ありがとう、わたし 乃木坂46を卒業して、心理カウンセラーになるまで』を刊行。現在はオンラインでのカウンセリングをメインに、メディア出演、執筆など多方面で活動中。2023年12月10日、文藝春秋より『なんでも聴くよ。』を上梓した。

フリーアナウンサー/芸能リポーター

群馬県生まれ。大学在学中にTBS緑山塾で学び、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」で7年間アシスタントを務める。ワイドショーリポーター歴はTBS「3時にあいましょう」から30年以上、皇室から事件、芸能まで全てのジャンルをリポートしてきた。現在は芸能を専門とし、フジテレビ「ワイドナショー」、日本テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」ほか、静岡・名古屋・大阪・福岡の番組で芸能情報を伝える。趣味は舞台鑑賞。

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