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結婚しても職場で旧姓を通称として使い続けたい人は4割近く(2023年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
婚姻により名字を変える必要がある時に、職場では旧姓を使い続けたい人は(写真:イメージマート)

日本の婚姻では「婚姻状態にある夫婦が同じ名字(姓)を名乗らねばならない」とするのが現行の法令制度。法務省の見解は【選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について】にある通りで、「選択的夫婦別氏制度の導入は、婚姻制度や家族の在り方と関係する重要な問題ですので、国民の理解のもとに進められるべきもの」とし、現状では否定的な意見が多分を占めているとの認識を基に、否定的な見解を展開している。それでは戸籍上の名字(姓)が変わった後に、法的には問題のない通称として、職場で旧姓を使いたいと思う人はどれほどいるだろうか。内閣府が2023年3月に発表した「男女共同参画社会に関する世論調査」(※)の結果から確認していく。

日本の現行法では法的に選択的夫婦別氏、つまり婚姻前の旧姓を婚姻後も引き続き使い続けることは認められていない。一方で、ペンネームのような形で通称として旧姓を用いることは、その環境下で許容されている限り何の問題もない。

それでは回答者自身が仮に結婚して(結婚している人は当然その状況下で)名字が変わった場合、働くときに旧姓を通称として使いたいと思うか否か、その判断を択一で答えてもらった結果が次のグラフ。全体としては4割近くが使いたい、6割近くが使いたいとは思わないとの結果となった。

↑ 仮に結婚して戸籍上の名字(姓)が変わったとした場合、働く時に旧姓を通称として使用したいと思うか(男女別・年齢階層別)(2022年)
↑ 仮に結婚して戸籍上の名字(姓)が変わったとした場合、働く時に旧姓を通称として使用したいと思うか(男女別・年齢階層別)(2022年)

実状としては個人の心境以外に就業環境や職種、さらには就業年数や立場、そして子供のいる・いないなどで大きな差異が生じるため、あくまでも一般論的な話となるが、通称としても旧姓を使いたい人は4割近くいることになる。男女別では男性が4割強なのに対し、女性は1/3ほどにとどまっている。

年齢階層別ではおおよそ若年層ほど希望者が多く、18~29歳では47.8%・30代では51.8%もいるが、70歳以上では27.4%にとどまっている。この類の調査では高齢層ほど無回答の回答値が増えるのが常だが、今件では70歳以上の区切り以外はその傾向が見られない。高齢層にも関心の高い、こだわりのある話なのかもしれない。

これを居住地別で見ると次の通り。

↑ 仮に結婚して戸籍上の名字(姓)が変わったとした場合、働く時に旧姓を通称として使用したいと思うか(居住地別)(2022年)
↑ 仮に結婚して戸籍上の名字(姓)が変わったとした場合、働く時に旧姓を通称として使用したいと思うか(居住地別)(2022年)

居住地別では都市圏、特に東京都区部における希望する値が高く、5割を超えている。地方に行くほど希望する値が低くなる傾向にあるのは、古来の慣習の浸透度に加え、年齢階層別の居住者率の差異がそのまま表れているのだろう。地方ほど高齢者が多く、そして高齢者は希望しない傾向があるからだ。

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※男女共同参画社会に関する世論調査

数年に一度、不定期の形で実施されている世論調査。直近分は2022年11月24日から2023年1月1日にかけて、日本国内に居住する18歳以上の日本国籍保有者から層化2段無作為抽出法によって抽出された人を対象に、郵送法で行われている。有効回答数は2847人。男女比は1534対1313。年齢階層比は18~29歳272人・30代307人・40代443人・50代501人・60代503人・70歳以上821人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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