Yahoo!ニュース

政府に期待する受動喫煙対策のトップは「病院・学校・行政機関などの敷地内の禁煙(最新)」

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
喫煙者本人は気が付かなくとも周囲の人は気になる受動喫煙。政府に何を求めるか(写真:アフロ)

本人が喫煙をしていなくとも、周りの人のたばこの煙(副流煙)にさらされることを受動喫煙(間接喫煙)と呼んでいる。当然これも健康に悪い影響を与えるため、非喫煙者にとっては好ましいものではない。この受動喫煙について、人々は政府にどのような政策を求めているのだろうか。その実情を内閣府大臣官房政府広報室が2022年11月に発表した「たばこ対策に関する世論調査」(※)から確認する。

今調査において、包括的なたばこ対策として「受動喫煙対策の強化」を求めている人は48.3%に達している。その人達に具体的な対策の要望を複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。報告書では「受動喫煙対策の強化」と答えた人における割合が示されているが、今グラフでは調査対象母集団全体比を算出して作成している。例えば「事務所の禁煙推進」は18.0%とあるので、「受動喫煙対策の強化」と答えた人のうちの18.0%ではなく、全体の18.0%が事務所の禁煙推進を政府として取り組んでほしいと考えている。

↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見)(2022年8月)
↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見)(2022年8月)

最上位の回答は「病院・学校・行政機関などの敷地内の禁煙」で29.5%。全体の約3割が望んでいる。次いで「路上・公園など屋外の喫煙場所削減」が28.7%、「飲食店(小規模店舗を含む)の禁煙」が24.5%、「タクシーや鉄道などの禁煙」が22.4%、「ホテル・旅館などの客室禁煙」が21.8%と続く。具体的に政府がこれらの事案にどのような対策を講じるかは言及されていないが、法令による規制や補助金制度の制定、公的機関ならば該当設備の新設・改善などが考えられる。

ある意味当然ではあるが、公的要素が低い場所への値は低いものとなっている。政府がそこまで手を差し伸べる必要は無いとの認識だろう。

これを回答者の男女別に見たのが次のグラフ。おおよその項目で女性の方が高い値を示している。

↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見、男女別)(2022年8月)
↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見、男女別)(2022年8月)

唯一男性の方が高い値を示しているのは「建物内喫煙室や建物外喫煙所の増加」だが、これは男性の方が利用率が高いと考えれば納得はできる。一方で「事務所の禁煙」「パチンコ・麻雀・カラオケなど遊興・娯楽施設の禁煙」でも女性の方が高い値なのはやや意外な感はある。

最後は年齢階層別。

↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見、年齢階層別)(2022年8月)
↑ 受動喫煙対策に関する政府への要望(複数回答、全体比、上位意見、年齢階層別)(2022年8月)

「建物内喫煙室や建物外喫煙所の増加」では18~29歳の値が飛び抜けており、26.4%との値が出ているのが目にとまる。それに限らず複数の項目で18~29歳が高い値を示しており、若年層が強い要望を持っていることが分かる。

一方で「事務所の禁煙」「パチンコ・麻雀・カラオケなど遊興・娯楽施設の禁煙」などでおおよそ若年層が低めで年齢とともに値が積み増しされていくのは、その施設での利用度合いが影響しているのだろう。70歳以上で「事務所の禁煙」の値が落ちる一方、「パチンコ・麻雀・カラオケなど遊興・娯楽施設の禁煙」は大きく増えるのは印象的ではある。

実際にはそれぞれの施設の公共性、利用者数、影響度合いなどを勘案する必要があるため、単純に要望しているとの値そのままを判断材料にはできない。しかしどの属性が個々の場所での受動喫煙対策を望んでいるのかを知るのには、今調査結果はよい参考資料となるに違いない。

■関連記事:

【米喫煙者は非喫煙者ほど「間接喫煙」のことを気にしない】

【室内でタバコを吸う時お父さん どの場所一番 利用しますか?】

※たばこ対策に関する世論調査

2022年8月4日から9月11日にかけて、全国の18歳以上で日本国籍を持つ人3000人を対象に郵送法で行われたもので、有効回答数は1556人。男女比は698人対858人、年齢階層比は18~29歳が163人、30代が170人、40代が240人、50代が298人、60代が287人、70歳以上が398人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事