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全体では22.9%が利用中…いわゆるキュレーションサービスの利用実情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
忙しい時のニュースのざっと読みにはキュレーションが便利との話もあるが(写真:イメージマート)

多様な情報を処理することが求められる日常生活において、高機能で高機動力なスマートフォンの登場は人々のライフスタイルを一変させてしまった。そのスマートフォンの普及とともに注目されている新サービスが「キュレーションサービス」。ニュースサイトを中心に、利用者の需要に合わせて自動的にコンテンツを集約して再構築し、あるいはダイジェスト版を作成し、独自のウェブ総合誌として提供するもので、情報を効率よく入手したい人に対するコンシェルジュのような存在。今回は総務省が2022年8月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、そのキュレーションサービスの利用状況を確認する。

次に示すのはいわゆるキュレーションサービスの利用状況。今調査の調査用質問用紙では「スマートニュース、グノシー、NewsPicksなどのニュースアプリ」とあり、具体的にスマートニュースとグノシー、NewsPicksの名前が挙げられている。しかしながらその内情、性質、機能からは一次ニュースを公開しているとの錯誤が生じやすい「ニュースアプリ」の表記よりも、「キュレーションサービス」の方がより適切であるため、また報告書でも「キュレーションサービス」との表記が行われていることから、今記事ではそちらを用いる。

↑ ニュースを読んでいる媒体(複数回答、キュレーションサービス)(2021年)
↑ ニュースを読んでいる媒体(複数回答、キュレーションサービス)(2021年)

全体では22.9%、男女別では女性の方が割合は高い。単純な年齢階層別では40代がもっとも多く25.3%、60代でも23.9%は利用している。

就業形態別では専業主婦・夫の利用が多いのが目にとまる。世帯年収別では低年収層の利用率は低め。利用可能な端末(多分にスマートフォン)の利用傾向が影響している部分もあるのだろう。

今件について、複数のテキスト系ニュースメディア(紙媒体の新聞やニュースサイトなど。映像媒体であるテレビニュースや音声媒体のラジオニュースは含まず)の中でもっともキュレーションサービスを利用していると回答した人の割合で見たのが次のグラフ。要はニュースサイトや新聞よりも、キュレーションサービスをニュースの取得ツールとして活用している人の割合。

↑ もっともニュースを読んでいる媒体(択一回答、キュレーションサービス)(2021年)
↑ もっともニュースを読んでいる媒体(択一回答、キュレーションサービス)(2021年)

全体では6.4%。おおよそ16人に1人。年齢階層別では40代が7.7%で最大。就業形態別では専業主婦・夫と学生が多く、無職が続く。短時間でニュースを効率よく取得できる点を活用しているのだろうか。世帯年収別では600-800万円未満でもっとも多く9.2%だが、法則性の類は見られない。都市規模別でも特段傾向だった動きは無い。

つまみ食い文化とも表現できるように、スマートフォンの限定された面積の画面を用い、短時間でできるだけ多くの情報を、ざっと見したい需要に、シンプルにまとめられたソーシャルメディアのニュースや、さらにそれを取捨選択するキュレーションサービスは大いに応えている。

他方最近では各コンテンツの美味しい所取りで情報作成元では恩恵がほとんど得られない、キュレーションの大本の語源となるキュレーター(学芸員)のような正確さに欠け、集約された情報が雑多でノイズが多いとの意見もある。キュレーションサービスは言い換えればニュースにおける検索エンジン的な役割を求めているとも表現できるが、その検索エンジン同様情報の雑多さや運営側の思惑により、精度の劣化が起きている感もある。

今後同サービスがどのような進化をしていくのか、注目したいところだ。

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※令和3年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2021年11月30日から12月6日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13歳~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「経年での利用時間などの変化については、調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きを入れている。さらに2020年分の調査については「令和2年度調査は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う、11都府県を対象とした緊急事態宣言下で行われたものであることにも留意が必要」との補足があった。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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