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消費量トップは中国の41.77億トン…世界各国の石炭埋蔵・採掘量の実情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
今もなお多方面で用いられている石炭(写真:ロイター/アフロ)

化石エネルギーとしては石油や天然ガスとともに注目を集め、多方面で用いられている石炭。その埋蔵量や採掘量などの実情を、アメリカ合衆国のエネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)による提供値を基に確認する。

石炭といえば、かつて日本国内では主要エネルギーの一つであり、国内でも大量に採掘されていた。1961年には年間5541万トンもの採掘が行われピークを記録したが、それ以降は石油に主要エネルギーの座を譲り渡したことや、外国産の石炭の方が割安との状況下で国内産の採掘量は激減。現在では年間消費量約1億8237万トン(2019年度)のほとんどが輸入品の状況にある。主な輸入元はオーストラリア・インドネシア・ロシア(エネルギー白書より)。

その石炭についてだが、技術的・経済的に採掘が可能な埋蔵量は約1.0兆トン(2019年時点)にとどまっている。その埋蔵量の上位国を列挙したのが次のグラフ。今件データはEIAでは2019年のものが最新値として収録されており、それをそのまま用いている。

↑ 石炭埋蔵量トップ15(採掘可能量、億トン)(2019年)
↑ 石炭埋蔵量トップ15(採掘可能量、億トン)(2019年)

トップはアメリカ合衆国、次いでロシア、オーストラリア、中国の順。なお今記事の「石炭」とは、瀝青炭・無煙炭・亜瀝青炭・褐炭のすべてを含めた値である。石炭の採掘、輸出でよく名前が上るオーストラリアは第3位に名を連ねている。上位国のうちドイツの名前は意外に思う人もいるかもしれない。

次いで年間の採掘量上位国、そして採掘量の上位国におけるその国の消費量をかぶせたグラフを併記する。エネルギーの需要は効率性や環境などの観点から原子力や太陽電池、石油、ガスなどに主軸を移している国が多い。必ずしも石炭の消費量の大きさが、エネルギー関連の技術の先端性を意味するものではないことに注意する必要がある。

↑ 石炭採掘量トップ15(億トン)(2019年)
↑ 石炭採掘量トップ15(億トン)(2019年)

↑ 石炭採掘量トップ15とその国の消費量(億トン)(2019年)
↑ 石炭採掘量トップ15とその国の消費量(億トン)(2019年)

埋蔵量の順位とは入れ違いがいくつか見られ、トップは順位こそ変わらないものの、他国を大きく抜きん出る形で中国、ついで大きく差をつけられる形でインドがついている。これは石炭の工業使用が技術的に容易であること、さらには安価で経済的に優れていることに起因する。ただし石炭は「適切」で比較的「高い技術力」による処理をしないと、二酸化炭素の排出量など環境面での負担も大きい。

また、消費量との重ね合わせグラフを見ると、大量の採掘量を示している中国やインドが、(少なくとも数字の上では)自国内消費分でほぼ消費してしまっているのが分かる。特に中国は(言葉通り)桁違いで採掘と消費を行っていることが理解できよう。

上記グラフは「採掘量順の」消費量。そこで次に純粋な消費量のみでの上位陣をグラフ化しておく。

↑ 石炭消費量トップ15(億トン)(2019年)
↑ 石炭消費量トップ15(億トン)(2019年)

中国の消費量の多さが改めて実感できる。第2位以降の14か国分全部を合わせても、中国の消費量の方がまだ多い(第2位から第15位までの計14か国の合計は30.179億トン)。また日本や台湾のように、石炭を輸入に頼る国の名前が入っている(採掘量上位のグラフでは出てこなかった)のも確認できる。

石炭は製鉄の原料として使われるだけでなく、発電用エネルギー源としてもいまだに重要な役割を担っている。今後も石炭の動向に注目したいところだ。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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