出版物の分類別売上推移をさぐる(2020年公開版)

↑ 日々多彩な出版物が発売されるが、分類別で売上に違いは?(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

シェア動向では雑誌は落ち、コミックは上がる

インターネットの普及とともに出版物の販売状況は大きな変化の中にある。しかし雑誌もコミックも一様に同じ変化を示しているわけではない。その実情を日販の「出版物販売額の実態」最新版(2020年版)を基に確認する。

「出版物販売額の実態」には主要分類別の売上高構成比と、総売上が記載されている。そこでこの2項目を掛け合わせれば、概算による推計値ではあるが分類別の売上高が算出できる(分類別売上構成は1月から12月の暦年、総売上高は4月から翌年3月までの年度での値のため、3か月のずれが生じることになるが、ここは妥協する)。

一方出品物の分類においては、「出版物販売額の実態」では過去2回変更が行われており、これを放置すると計算が非常に複雑なものとなる。そこで変更対象となった「学参」「辞典」「実用」「旅行地図」「専門」「ビジネス」はすべて「その他」扱いとし、変更とは無関係の「雑誌」「コミック」「文庫」「新書」「児童書」「文芸」のみ今回の精査対象とする。

各分類毎の各年の売上、そして総売上に対する構成比の推移を算出した結果が次のグラフ。

↑ 出版物分類別売上(推計、億円)
↑ 出版物分類別売上(推計、億円)
↑ 出版物分類別売上(推計、一部、億円)
↑ 出版物分類別売上(推計、一部、億円)
↑ 出版物分類別売上構成比(推計)
↑ 出版物分類別売上構成比(推計)

出版物の総売上が減少傾向にあるのはすでに先行記事で解説した通りだが、その過程で少しずつ分類毎の構成比に変化が生じているのも確認できる。手元のデータで一番古い2000年から最新の2019年に至る構成比の変化を見ると、増えたのは「コミック」「文庫」「児童書」。一方、「雑誌」「新書」「文芸」「その他」は値を減らしている。

総額そのものも落ちていることから、構成比が減った「雑誌」「新書」「文芸」はもちろんだが、構成比上では増えた分類の多くも売上そのものは減少してしまっている。売上そのものにおいて一番大きな減少を示しているのは「雑誌」で、2006年比では実に5割を超えてしまっている。他方「コミック」は根強いファンがいるためか、あるいは定価が漸次引き上げられている影響もあるのか、ヒット作にけん引される部分もあり、減少率は2割台にとどまっている。

唯一セールスを伸ばす児童書

構成比動向で目に留まるのは「児童書」。総売上に対する構成比は大きくないものの、わずかながらも構成比・売上ともに増加しているようすがうかがえる。

実際、2006年から2019年の売上の変化を算出すると、唯一プラスの値を示していることが分かる。

↑ 出版物分類別売上(2006年から2019年における変移)
↑ 出版物分類別売上(2006年から2019年における変移)

「児童書」の2019年における売上は推計で927億円、総売上に占める構成比は6.4%。しかし唯一伸びを示している分類として、注目に値する。

元々一定量の需要は常に存在する児童書だが、ひそかに需要、そして供給ともに増加を示している。この事実(少なくとも売上の面で)は、注目すべき動きに違いない。

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(C)日販営業推進室出版流通学院「出版物販売額の実態2020」

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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