アニメやゲームなどのエンタメ誌の実情は…ゲーム・エンタメ系雑誌部数動向をさぐる(2020年7~9月)

↑ かつてはゲームをする際にも専門誌は必要不可欠な存在だったのだが。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

部数公開誌は4誌のみのまま…部数現状

インターネットのインフラ化に伴い速報性が重要視され、ゲーム関連をはじめとしたエンタメ情報の提供媒体として、紙媒体の専門誌の立ち位置が危ぶまれる昨今。ゲームやエンタメ専門誌の部数動向を、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から確認する。

まずは最新値にあたる2020年の7~9月期分と、そしてその直前期にあたる2020年4~6月期における印刷証明付き部数をグラフ化し、現状を確認する。

↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2020年4~6月期と2020年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数(ゲーム・エンタメ系雑誌、万部)(2020年4~6月期と2020年7~9月期)

最大部数を示しているのは「Vジャンプ」で、このポジションは前期と変わり無し。他の雑誌と比べると群を抜いて部数が多い「Vジャンプ」の立ち位置は、少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」と同じようだ。

3期前の2019年10~12月期では「声優アニメディア」「メガミマガジン」「アニメディア」の3誌の部数が一度に非公開化された。いずれも学研プラス発行の雑誌で、現状でも電子版だけでなく紙媒体版でも定期的に刊行が行われており、休刊(準備)のために部数が非公開化されたわけではない。恐らくは発売元の判断で非公開化が実施されたのだろう。

もっとも学研プラスの他の雑誌、例えば「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」「ムー」「歴史群像」は今期でも部数公開が継続されている。学研プラスで刊行している雑誌のうち、ゲーム・エンタメ系に限った非公開化だと推測できる。

似たような現象は以前「週刊アスキー」「電撃PlayStation」「ニュータイプ」でも起きており、やはり発売元の判断であった可能性がある。株式公開企業や大型企業による法的な公開義務は無いものの、すでに公開していた数字を非公開化する施策は残念と評せざるを得ない。

ともあれ現在印刷証明付き部数を提示しているゲーム・エンタメ系雑誌は、今期でも4誌。すでに公開サイトにおけるジャンル区分で「パソコン・コンピュータ誌」は皆無なのが現状。今後も減少傾向が続くようならば、「ゲーム・エンタメ」の定義で包括しえる、類似カテゴリの雑誌を加えることも検討せねばなるまい。

しかしながら類似の主旨を持つカテゴリが存在しそうにないのも悩みの種。類似・同一ジャンルの雑誌としては例えば「週刊ファミ通」「電撃Nintendo」「Nintendo DREAM」「MC☆あくしず」などが挙げられるが、いずれも印刷証明付き部数は非公開。残念ではある。

前四半期からの変化を確認

次に四半期、つまり直近3か月間で生じた印刷数の変化を求め、状況の確認を行う。季節による変化が考慮されないため、季節変動の影響を受けるが、短期間における部数変化を見極めるには一番の値となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2020年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前期比)(2020年7~9月期)

前期比でプラスを示したのは「アニメージュ」のみで誤差領域(プラスマイナス5%以内)を超えた上げ幅。一方マイナスを示したのは「Vジャンプ」「PASH!」「声優グランプリ」の3誌。

「Vジャンプ」は誤差領域を超えたマイナスとなるマイナス7.2%。同誌は特集や付録で大きく上下感を見せるものの、長期的には部数減少の傾向にある。話題性のある付録で一時的な部数の引き上げを果たしても、それが継続するには至らない状態が続いている。ここ数年は部数に大きな変化はないものの、わずかずつ減少しているように見える。

↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)
↑ 印刷証明付き部数(Vジャンプ、部)

ゲームそのもののプレイヤーが一定数存在することが前提となるが、ゲームと密接な関係にある付録を常につけることで雑誌の集客力を高めさせるのも、雑誌販売の一スタイルとして認識すべき方法論であり、「Vジャンプ」の必勝方程式として定着している。しかし部数動向を見るに、その方程式が必勝とは言い難い状況なのは否定できない。

なお「Vジャンプ」では電子雑誌方式に関しては、紙媒体誌を購入した人限定で閲覧できる仕組み「購入者特典」の形での提供のため、電子書籍版のセールスが伸びたので今件値(紙媒体として印刷された部数)が減少しているとの解釈は難しい。販売スタイルは今でも原則として紙媒体の雑誌のみである。

前年同期比ではどうだろうか

続いて前年同期比を算出し、状況確認を行う。年単位の動きのため前四半期推移と比べれば長期間の動きの精査となるが、季節変動を気にせず、より正確な雑誌のすう勢を確認できる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2020年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(ゲーム・エンタメ系雑誌、前年同期比)(2020年7~9月期)

プラス誌は「PASH!」と「アニメージュ」の2誌。誤差領域を超えたマイナスを示したのは「声優グランプリ」「Vジャンプ」の2誌。

「PASH!」は前期比では大きなマイナスだが前年同期比では大きなプラスを示している。

↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)
↑ 印刷証明付き部数(PASH!、部)

「PASH!」は特集記事や付録による部数への影響が大きく、部数変動が他誌と比べると大きくなる傾向がある。例えば2016年1~3月期は「おそ松さん」特需、2016年10~12月期は「ユーリ!!! on ICE」特需によるもの。今期が前年同期比で大きなプラスを示したのは、前期の創刊10周年記念号としての「アイドリッシュセブン」特集などで大きく伸ばした部数の余韻が影響していると解釈してよいだろう。当然、その前期からは部数を大きく落としているため、前期比では大きなマイナスとなっている次第である。

同業他誌で取り上げられていた劇場版「鬼滅の刃」の表紙展開や特集があれば、あるいはもう少し部数の維持はできたかもしれないが(部数は非公開だが「アニメディア」の2020年10月号で表紙を飾り、特集記事も組まれている)。

日本国内の家庭用ゲーム機業界の市場は縮小を続けている。少なくとも利用者人口は堅調な動向にあるスマートフォンアプリ向けの紙媒体専門誌のアプローチも、情報の公知特性を考慮するとビジネス的には難しい。新しい付加価値の創生、アイディアの想起など、あらゆる手立てを講じて有効策を見出さない限り、今後も当ジャンルの低迷は続くことだろう。

3期前には3誌がまとめて部数非公開化に踏み切り、その状態が今期も続いているため、「三大アニメ誌」の動向の確認などが不可能となり、記事構成の大幅縮小の状態が継続している。部数の非公開化は発売元の出版社、あるいは編集部による判断である以上仕方がないが、褒められる話ではないのは言うまでもない。部数の非公開化という判断もまた、雑誌動向にかかわる情報となるからだ。

■関連記事:

【子供達が「妖怪ウォッチ」を受け入れた理由(上)…メディアミックス編】

【付録付き雑誌「魅力を感じる」約4割】

※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。