テレビやインターネット、新聞、ラジオ…主要メディアの利用時間をさぐる(2019年公開版)
年齢階層間で3倍以上も違うテレビの生放送視聴時間
普段からよく見聞きしている「若者のテレビ離れ」「高齢者はインターネットが苦手」の実情はいかなるものか。総務省が2019年9月に情報通信政策研究所の調査結果として発表した「平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)を基に、利用時間から確認する。
次に示すのは調査対象母集団および各年齢階層における、主要5メディア(テレビは視聴スタイル別だが)の1日あたりの平均利用時間。例えば10代のテレビ(生)は71.8分と出ているので、テレビを観ていない人も合わせ10代は平日にテレビを平均1時間12分ほど観ている計算になる。またインターネットは回線をつないでいる時間ではなく、実際に利用行動を行った時間。他方利用端末はパソコンに限らず、スマートフォンや従来型携帯電話、タブレット型端末、さらにはインターネット接続ができるテレビによる関連サービスの利用も含まれる。
なお「ながら行動」についてだが回答用紙の限りでは「連続して10分以上行った場合は該当」とのみ読み取れ、重複行動はそれぞれ行動したと記録する様式となっている。例えばテレビを観ながら新聞を読む時間帯があった場合、テレビと新聞それぞれに加算されることになる。
全体平均ではテレビのリアルタイム視聴が約157分、録画視聴が20分ほど、合わせて約3時間。インターネットが112分ほど、新聞やラジオはそれぞれ10分前後となる。メディア関連の調査の常の通り、年齢階層別で大きな差異が生じているのはグラフの形状を見れば一目瞭然。
「若者のテレビ離れ」のフレーズの通り、テレビ視聴時間は概して若年層ほど短く、高齢層になるほど長くなる。特に60代は長めで、1日平均248.7分。4時間強もテレビを観ている。一方インターネットは10代の利用時間が一番長く3時間近く。以後利用時間はおおよそ減る傾向で、60代になると1時間ほどに留まってしまう。
新聞の閲読者、ラジオの聴取者の減少はよく知られるところではあるが、10代では双方とも平日の1日平均で1分も消費されていない。20代も同じようなもので、40代でようやくラジオは10分を超える程度。60代で新聞もラジオも1日あたり20分強の時間が費やされることになる。
興味深いのはテレビの録画放送の視聴時間。10代はやや短めだが、20代以降は20分前後の視聴時間を維持している。見方を変えれば年齢階層による差異がそれほど大きくはない。スマートテレビ、HDDプレイヤーの普及によりテレビ番組の録画再生が容易となり、年齢階層を超えて利用されている雰囲気ではある。
1年間の変動の中身
続いて前回調査、つまり2017年時点での状況を確認し、今回発表分となる2018年分との差を算出したのが次のグラフ。
ざっと見で目に留まるのは20~30代でのインターネット利用時間の減少と、それ以外の年齢階層での増加。特に10代は大きな増加を示している。またテレビ(生)は20代での増加と50代での減少が目立つ。
それ以外はテレビ(録画)がおおよそ全般的に少しずつだが伸びている程度で大きな動きは無い。
減少を示しているテレビ(生)の動向として記録を取得可能な過去7年間の動きを確認すると、ところどころでイレギュラーな動きがあるものの、おおよそどの年齢階層でも減少の傾向に見える。
直近年において20代が前年比で大きく増えたのは、直近年がイレギュラーな動きを示したのではなく、2017年の過度な減少の反動と見た方が道理は通る。
2018年の時点では10~20代でインターネットの利用時間がテレビ(生放送)を抜いている。つまり「20代以下においてはテレビ<インターネットの時代」である。多分にスマートフォンの普及によるところが大きく、この傾向は今後も続くものと考えられる(今件は各年齢階層毎の平均値であり、該当メディアを利用していない=利用時間ゼロの人も含めているため、普及率が高いほど平均値も底上げされる)。
スマートフォンの普及がさらに進めば、将来は30代においてもテレビの利用時間をインターネットが抜くようになるかもしれない。
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※平成30年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
2019年2月23日から3月1日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。
なお今調査は例年11~12月にかけて行われるが、直近分は2~3月となっている。グラフや本文上の表記や考察は、報告書に準ずる形で2018年と表記する。また調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが生じているが、報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。