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高齢者の外出手段の実情をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 高齢者による自動車運転。事故が社会問題化しているが。(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

最多利用は自動車やバイク、スクーター

年を取り身体的な衰えを覚えるようになると、移動にも色々と考えを巡らせる必要がある。高齢者の移動手段の実情を、内閣府が2015年3月に発表した「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査」(※)の結果から確認する。

調査対象母集団に対し、自分一人で利用できる外出手段を挙げてもらった結果が次以降のグラフ。例えば配偶者や子供に自動車を運転してもらって移動する場合は、今件には該当しない。また歩行には杖やシルバーカーの利用を含む(今調査ではいわゆるシルバーカー、シニアカーと呼ばれている低速の電動式移動車両による移動は、特記無き限り歩行扱い。現在の道交法でも歩行者扱いされている)。

↑ 主な外出手段(複数回答、男女別)(2014年)
↑ 主な外出手段(複数回答、男女別)(2014年)

もっとも多い手段は自動車やバイク、スクーター(自前の自動走行車両)で6割近く、次いでバスや電車が5割強、自転車が4割近く、タクシーの利用が3割強。近所への歩行や15分以内の歩行が1/4強でその後に並び、車椅子や外出事例が無いことは少数派。

男女別に見ると男性は自動車や自転車など個人で運転する車両の利用が多く、女性はバスやタクシーなどの公共交通機関の利用が多い。若い時分に利用していた移動スタイルをそのまま踏襲している、自分の車両の保有状態が大きく影響しているものと考えられる。また車両による移動は年を取るに連れて難しくなることから、より年上の人が多い女性で値が平均化される際に、低くなるのも一因。

年齢階層別で見ると

今件結果を年齢階層別で区分し直したのが次のグラフ。

↑ 主な外出手段(複数回答、年齢階層別)(2014年)
↑ 主な外出手段(複数回答、年齢階層別)(2014年)

自動車や自転車のような、運動・判断能力が多分に必要となる車両による移動は、年を取るに連れて利用率が低くなる。60代前半では8割近くを示す自動車も、80代に入ると3割を切る。またバスや電車のような公共交通機関も利用が減っていくが、これは利用地点にたどり着くのに難儀するのが要因だと考えられる。自宅まで迎えに来てくれるタクシーの利用は、年を取っても大きな差が生じないからだ。

歩行も自宅周辺は大きな違いが無いのに対し、15分以上になると漸減していく。高齢になるに連れて長距離歩行が困難になる実情がうかがえる。また「自分一人で外出することはほとんど無い」の回答も年齢とともに増加し、80代後半以降では2割に近づくようになる。

年とともに身体の衰えが生じ、移動手段が限られていく状況は大いに注目したい。居住環境次第では同居人が居なければ社会的に孤立した状態となりかねず、買い物難民問題にも大きく絡んでくる点に違いない。

さらには昨今問題視されている、高齢者の自動車運転時の事故に絡み、第三者から見れば運転を止めた方がよい状況にもかかわらず継続する理由とも合わせ、考えねばならないことは少なくない。

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※平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査

2014年12月4日から26日にかけて層化二段無作為抽出法によって選ばれた日本国内に住む60歳以上の男女に対し、郵送配布・郵送回収形式で行われたもので、有効回答数は3893件。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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