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フジ・テレ朝が上昇…主要テレビ局の直近視聴率をさぐる(2019年3月期下半期・通期)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 家族団らんに欠かせない存在のテレビ。その視聴率は。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

全日もプライムも日テレがトップ

テレビ局の番組や局のメディア力のすう勢を推し量るのに、一番明確な指標が(世帯)視聴率。キー局における最新となる2019年3月期(2018年4月~2019年3月)の下期と通期の視聴率を確認する。なお具体的な検証は通期の値を対象とする。

各種データはTBSホールディングス・決算説明会資料集ページ上で発表された「2019年3月期 決算資料」からのもの。なお「キー局」と表現した場合、一般的にはNHKは含まれないが、よい機会でもあるので合わせてグラフに収める。

↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2019年3月期・下期)
↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2019年3月期・下期)
↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2019年3月期・通期)
↑ 主要局視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2019年3月期・通期)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているが、他の4局と比べれば放送内容の特異性(比較的経済に特化した内容が多い)の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、フジテレビが一段低く、TBSとテレビ朝日とNHKがやや高め、日本テレビが高ポジションについており、3階層状態にある(全日(6~24時)のみで判断するとTBSとフジテレビ、NHKが低めで、日本テレビとテレビ朝日が高めの2階層と読める)。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19~22時)とプライムタイム(19~23時)。その双方で10%を切っているのは(テレビ東京以外では)TBS(プライムタイムのみ)、フジテレビ、NHK。

今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。他局と比べてゴールデンタイムとプライムタイムの差異が大きいのが目に留まる。ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、22時から23時の夜間における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっているのが分かる。もっともこれは番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方がない話ではある。

それぞれの局のゴールデンタイムとプライムタイムの視聴率を比較すると、おおよその局でプライムタイムの方が低い値を示しているが、唯一テレビ朝日だけが高い値となっている。これは22時から23時の時間帯で放送される番組の人気が影響を与えていると見てよい。具体的には同局の「報道ステーション」がプライムタイムの値をけん引しているのだろう。

前年同期からの変化を確認

視聴率の変移を前年同期(2018年3月期・通期)との比較で表すと次のようになる。

↑ 主要局視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2019年3月期・通期)
↑ 主要局視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2019年3月期・通期)

元々テレビの局単位での視聴率は、特番や特定の番組、さらにはイベント的な放送に大きく影響されるところがある。例えば社会現象を引き起こすほどの人気を博したNHKの「あまちゃん」、TBSの「半沢直樹」が好例。

フジテレビではここ数年放送事業などの主事業で売上が低迷し、視聴率も減少を継続していた。しかし今期では視聴率において久々のプラスを示すこととなった。もっともフジテレビ単体の決算内容を精査すると、放送事業は原価・番組制作費・売上ともに減少し、副事業となる催事や映画の売上が大きく伸びて、フジテレビ単体全体の売上、そして利益を底上げしていることが分かる。視聴率は前年と比べてアップしているが、放送収入は減少してしまっているのが実情。

他方視聴率がアップしたこと、そしてそれにもかかわらず放送収入が増えなかったことを受けてだろうか、現在進行期においては「制作費を増額して戦略的に投下、レギュラー番組を中心にタイムテーブルを強化し放送収入の増収を目指す」とし、テレビ事業の商品となる番組の制作への投入リソースを増やすという、あるべき姿に立ち戻ろうとしているのは評価できる(直近期では番組制作費は前年比でマイナス3.7%だった)。ただ同時に「構造改革を継続的に実行、一般管理費などは一層の効率化を図る」としており、局全体の士気や作業効率の低下が懸念される。

一番視聴率を下げた日本テレビだが、決算短信および説明会資料には、「平昌オリンピック2018」の反動がある一方でレギュラー番組は好調さを見せたなどの説明がある。他方、番組制作費は前年比で0.8%のマイナスを示しているのが気になるところ。

また第3四半期の資料を見るに、「デジタルメディアに対抗し、テレビ番組の個人へのリーチ力・コンテンツ力を把握し、人の数を基準とする指標により、テレビの価値をより正しく表現できると判断。番組を『世帯』ではなく、より多くの『人』にみてもらう、ということを改めて意識」などとの文言があり、構造改革の際に生じがちなマイナス影響が先行して出たのも一因と考えられる。

この数年は各局ともターニングポイントを迎えている気配を示している。ある局はVの字回復を見せ、ある局は低迷を続け、ある局は下落傾向が継続している。単発のヒーロー的番組やイベントのおかげで一時的な盛り返しを見せることはあっても、根本的な体質、視聴者への姿勢の部分がしっかりとしていないと、次第に低迷さが顕著になる。

中にはそのドーピング的効果に味を占め、魅惑に取りつかれ、繰り返しその効果を望んでいるような行動を示す局も見受けられるが、「待ちぼうけ」の歌にある通り、常に切り株にうさぎがやってくるとは限らない。それを期待するどころか、切り株を増やすべく樹の伐採を繰り返し、かえって地道な努力の成果である果実の収穫量を減らすような動きすら見受けられるのは残念な話(昨今の「報道」番組では特にその傾向が見受けられる)。

4大従来メディアの中では最大の影響力を持つ一方、その力に翻弄される面も見せているテレビ放送。そのような状況下で、各局がいかなる姿勢を見せ、その姿勢が視聴率の動向にどれほど成果として結びついていくのか。今後も注意深く見守りたいところだ。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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