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移籍連載開始で部数アップ…女性向けコミック誌の部数動向をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 入荷した新刊の連載をチェック中。女性向けコミック誌の動向は。(写真:アフロ)

・女性向けコミック誌の印刷証明付き部数(※)のトップは「BE・LOVE」。直近の2018年7~9月期では7.8万部。「プチコミック」「Kiss」が続く。

・前期比では女性向けコミック誌においてはプラス誌は「MELODY」のみ。5%を超える下げ幅を示したのは5誌。

・前年同期比では女性向けコミック誌においてはプラス誌は「MELODY」のみ。5%を超えた下げ幅は8誌、10%超は7誌。

女性向けコミック誌のトップは「BE・LOVE」

日々進歩を見せる技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀無くされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりで無く、少女・女性向けのものにも及んでいる。今回はその雑誌のうち、女性向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されている雑誌群よりも対象年齢は上。おおよそ大学生以上が対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数から、実情をさぐる。

まずは女性向けコミック誌の現状。最新データは2018年7~9月のもの。

↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2018年4~6月期と2018年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数(女性向けコミック誌、万部)(2018年4~6月期と2018年7~9月期)

トップの「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がやや突出、「プチコミック」「Kiss」が続く。トップ以外の部数は各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べるときれいな傾斜ができていた。ただし第2位と第3位の雑誌はここしばらく激しいつばぜり合い、さらには順位の差し換えの動きを続けている。

部数順位では下の方ではあるが「MELODY」が前期から大きく伸び、「フラワーズ」が大きく落ちているのが確認できる。これについては次の項目で解説する。

プラスは1誌…四半期変移から見た直近動向

次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前期比)(2018年7~9月期)

唯一のプラス計上誌「MELODY」は隔月刊誌で今回対象期では刊行されたのは1誌のみ。同じ出版社から発行されていた「別冊花とゆめ」の休刊に伴い、今誌への移籍が決まっていた日渡早紀氏の「ぼくは地球と歌う」の連載再開が始まっており、これが部数引上げの要因となったのだろう。

↑ 印刷証明付き部数(MELODY、部)
↑ 印刷証明付き部数(MELODY、部)

部数動向は2017年10~12月期を底に反転上昇の動きを示している。今回の「ぼくは地球と歌う」の連載再開で勢いがつけばよいのだが。

大きく下げた「フラワーズ」だが、2018年5月発売の7月号から「ポーの一族」の新シリーズ「ポーの一族 ユニコーン」が始まったものの、今回対象期の2018年7月発売の9月号でいったんお休みとなり、来年春に再開予定となった。

↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)
↑ 印刷証明付き部数(フラワーズ、部)

9月発売の11月号では「海街diary」の番外編が掲載されるなど、底上げ要因は他にもあったのだが、「ポーの一族 ユニコーン」の休載の影響は大きかったようだ。

「フラワーズ」はここ数年の間においては部数を3万3000部でほぼ固定した状態となっており、「ポーの一族 春の夢」の登場による特需での部数上昇(読み切りと短期集中連載)がきれいな形で表れている。今期の部数は通常部数に戻った形ではある。

季節変動を考慮しなくて済む前年同月比では

続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年7~9月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(女性向けコミック誌、前年同期比)(2018年7~9月期)

前期比でプラスを計上した「MELODY」が前年同期比でもプラス。少女・女性向け合わせて唯一のプラス誌となった。「フラワーズ」は前年同期も「ポーの一族」特需が終わった後だったため、誤差範囲の下げ幅に留まっている。

それを別にすると、1割以上の下げ幅は7誌、2割超えの下げ幅も「Cookie」「FEEL YOUNG」が計上してしまっている。あまりよい状態とは言い難い。

「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族」の新連載が好例。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。

他方、他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減っている可能性は否定できない。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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