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年齢階層別に乗用車普及率の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「若者の乗用車離れ」は数字として表れているのか。(写真:アフロ)

・総世帯の乗用車普及率は29歳以下で56.6%、30~59歳以下で78.6%、60歳以上で65.3%(2018年)。

・59歳以下の乗用車普及率は大よそ少しずつだが減少中。

・29歳以下では中古車を購入する事例が多い。

「若者の乗用車離れ」が叫ばれる昨今、世帯ベースではどの程度の乗用車が保有されて、それはどのような推移を遂げてきたのだろうか。内閣府の消費動向調査(※)の結果から世帯主の年齢階層別に実情を確認する。

まずは総世帯(全部の世帯)における、世帯主年齢階層別の乗用車普及率は次の通り。

↑ 乗用車世帯主年齢階層別普及率(総世帯)(各年3月末時点)
↑ 乗用車世帯主年齢階層別普及率(総世帯)(各年3月末時点)

若年層(29歳以下)の普及率が低いのが目に留まる。2005年と2011年には60歳以上の年齢階層を上回る状況が発生したが、それもつかの間の話。むしろ2011年をピークとし、それ以降は下落を継続、全般的には全年齢階層の中で一番低い普及率となる立ち位置に居続け、より強固なものとしている。直近年ではやや持ち直したが、60歳以上との差異は8.7%ポイント。

中年層(30~59歳)の普及率も少しずつだが減少中。特に2014年以降の下落が目に留まる。なお若年層・中年層の減少の一因は、単身世帯の増加も一因と考えられる。二人以上世帯よりも乗用車の必要性は低いものとなるからだ。

現状では、乗用車の保有は若年層では大体2世帯に1世帯のみ。それに対して中年層世帯では5世帯のうちほぼ4世帯となる。未婚が多い29歳以下では、乗用車の必然性も低いと考えれば道理は通る。

これを新車で買ったのか、中古車で買ったのかで確認すると次の通り。

↑ 乗用車世帯主年齢階層別普及率(総世帯)(新車購入)(各年3月末時点)
↑ 乗用車世帯主年齢階層別普及率(総世帯)(新車購入)(各年3月末時点)
↑ 乗用車世帯主年齢階層別普及率(総世帯)(中古車購入)(各年3月末時点)
↑ 乗用車世帯主年齢階層別普及率(総世帯)(中古車購入)(各年3月末時点)

若年層の新車購入率の低さが改めて確認できる。2007年に一度逆転し、その後は直近年でようやく二回目の逆転現象が生じているが、それ以外は「中古車購入>>新車購入」の状態が継続している。新車へのこだわりのある無しでは無くむしろ、初期購入費用の高さによるものと考えてよい。

若年層の動向を見ると2013年から2014年にかけて中古車で大きな減少が生じたが、その後一時的な巻き返しがあり、その後で再び下落に転じている。中期的には減少の流れにあるようだ。新車は押しなべて減少の動きにあり、「若者の乗用車離れ」なるものは新車・中古車を問わずに生じているのが確認できる。ただし直近年では前年比で5%ポイントの上昇をしているのが目に留まる(対象世帯数が141世帯に留まるため、統計上のぶれの可能性も否定できないが)。

中年層は新車・中古車ともに積極的に購入・利用している。一方高齢層(60歳以上)は新車へのこだわりが強く、若年層とは逆に「新車購入>>中古車購入」の傾向が継続中。大型車両を購入する必要もあまり無く、小型車で十分な場合も多いことから、わざわざ中古車で買うメリットも無い以上、新車に手が出せるのだろう。金銭的な余裕も大きな要因。

また、全体のグラフからも把握できるが、若年層では「新車購入」と「中古車購入」を足したものがほぼ「乗用車普及率」に近い値なのに対し、中年層では「乗用車普及率」<<(「新車」+「中古車」)の図式が見られる。

これは「中古車も新車も数台所有していても、全体の普及率としては『あり』『無し』でしかカウントしない」ことに起因する。つまり「若年層が世帯主の世帯は乗用車を1台しか持っていない場合が多い(単身世帯も多い)」「中年層は複数台持っている世帯が多い」状況を意味する。

二世代家族、あるいはまだ親離れしていなくとも乗用車を持つ子供がいる事例は容易に想定でき、当然の結果といえる。さらに買物や子供の送迎、パートの出勤に利用するため、妻が夫とは別に自分自身の乗用車を所有する事例も十分想定されよう。

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※内閣府の消費動向調査

今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することにより、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査時期は毎月1回で、調査時点は毎月15日。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。

毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の普及・保有状況」を今件精査では用いている。これは「回答者の世帯において対象品目を回答時点(直近分の場合は2018年3月末時点)で持っているか否か」「持っている場合は保有数量はどれほどか」を尋ねた結果。具体的な利用状況は尋ねていない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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