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学歴で賃金はどれほど違いがあるのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「高学歴は高賃金」との話は本当か。厚生労働省の統計データから確認する。(写真:アフロ)

・2017年における一般労働者の平均賃金は男性で高卒では29.07万円だが大学・大学院卒だと39.77万円となる。

・平均賃金は高学歴ほど高く、女性より男性の方が高い。

・2017年の一般労働者の平均賃金の前年比は高卒では男女ともプラス、高専・短大卒では男性でプラスだが女性でマイナス、大学・大学院卒は男性がマイナスで女性がプラス。

人が高学歴を求める理由の一つとして「高学歴ほどよい会社に入れ、高い賃金をもらえる」との認識がある。本当に高学歴ほど高給の傾向はあるのか、その実情を厚生労働省が2018年2月に発表した、賃金構造基本統計調査の報告書から確認する。

今回検証する賃金は報告書では「賃金(所定内給与額)」と呼ばれているもの。これは各企業の規定などで定められている方法・条件によって支給された現金給与額から、超過労働給与額(残業代)や賞与などを除き、さらに所得税などを控除する前の額を指す。要は基本給に家族手当などを足したもの。

また対象としているのは「一般労働者」のみ。契約社員や派遣社員などのような非正規社員もフルタイム労働者なら該当するが、パートやアルバイトのような就労時間が短い労働者は(「短時間労働者」に該当するため)今件検証からは除外される。

まずは直近分となる2017年における学歴別・男女別の平均賃金。

↑ 学歴・男女別平均賃金(千円)(2017年)
↑ 学歴・男女別平均賃金(千円)(2017年)

どの学歴でも女性よりも男性の方が平均賃金は高い。また学歴が高い方が賃金も高い傾向がある。この結果を見る限り、高学歴ほど高賃金との話に間違いは無い。

報告書では他の記述項目において、2017年は前年と比べて賃金が女性では上昇しており、男性では低下しているとの報告がされている。今回の学歴別で見ると、男性の賃金下落は高学歴に該当する大学・大学院卒において低下したことが主要因だったことが分かる。

↑ 学歴・男女別平均賃金(前年比、比率)(2017年)
↑ 学歴・男女別平均賃金(前年比、比率)(2017年)
↑ 学歴・男女別平均賃金(前年比、金額・千円)(2017年)
↑ 学歴・男女別平均賃金(前年比、金額・千円)(2017年)

さらに動向を年齢階層別に詳しく見ると、「男性就業者が早期退職制度の適用や定年退職などで離職後に低賃金水準で再雇用される」事例が多々生じていると考えられる動きが確認できる。

↑ 学歴・年齢階層別平均賃金(前年比、比率、男性)(2017年)
↑ 学歴・年齢階層別平均賃金(前年比、比率、男性)(2017年)
↑ 学歴・年齢階層別平均賃金(前年比、比率、女性)(2017年)
↑ 学歴・年齢階層別平均賃金(前年比、比率、女性)(2017年)

得てして高齢層の方が、とりわけ高学歴において前年比で低い値が出ている。

性別は生まれながらのもの。しかし学歴は個々の努力や運など後発的な要素によるところが大きく、「生まれながらの運命」的要素はあまり無い(家庭環境などの問題はある)。そしてやり甲斐や社会的意義はもちろんのこと、その他さまざまな要素が「仕事」には存在するが、「賃金」もその一つに違いは無い。まずは失職しないのが大前提なものの、同一条件下なら学歴が高い方が賃金も高くなる傾向にある。もちろん同じ仕事内容なら、賃金は高い方がありがたい。

学歴を得るためにはそれ相応の勉学を積み重ね、知識を吸収する必要がある。その過程で人脈も技術も資格も自分のものとして取得する機会が得られる。「学歴偏重」を賛美するわけでは無いが、「学歴」が社会に、そして自分自身にもプラスとなる「勲章」「証明」だと考えれば、それらに注目することはおかしい話では無い。

学生時の勉学によって得られるのは「将来のための選択肢」であり、それは多ければ多いほど、よりよいものを選ぶチャンスが増えることになる。今件データも、それを裏付けるものに過ぎない。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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