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年齢階層別に自動車乗車中の交通事故死者数の推移をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 交番などの看板には数字のみで示される交通事故の死者。その中身は。(ペイレスイメージズ/アフロ)

・自動車乗車中の交通事故死者数は減少中。

・年齢階層別の自動車乗車中の交通事故死者数では高齢層が多い。

・経年推移ではどの年齢階層も自動車乗車中の交通事故死者数は減っているが、高齢層の減り方が他の層と比べて大人しいため、高齢層の全数比率は増加する傾向にある。

高齢者の交通事故死亡事件が相次ぎ報じられているが、実態として高齢者の死者数は交通事故全体のうちどれほどの割合を示しているのか。警察庁が2017年2月に発表した報告書「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」から確認する。

まず最初は自動車乗車中の年齢階層別、死者数推移。公開されている元データから年齢階層区分を仕切り直し、未成年(19歳以下)、成年(20歳から64歳)、高齢層(65歳以上)の3区分に再構築を行ったものも併記する。今件はあくまでも自動車乗車中の事故により死亡した人の数を計上したもので、該当者が運転手であるとは限らない。一方、自動車運転免許の取得は日本の法令上16歳以上で無いと不可能なため、15歳以下は原則的に「自ら運転している」状況は有りえないことに注意。

↑ 自動車乗車中の交通事故死者数推移(~2017年)
↑ 自動車乗車中の交通事故死者数推移(~2017年)
↑ 自動車乗車中の交通事故死者数(2017年、年齢階層別)
↑ 自動車乗車中の交通事故死者数(2017年、年齢階層別)
↑ 自動車乗車中の年齢階層別交通事故死者数推移(主要年齢階層区分別)(積み上げ、人)(~2017年)
↑ 自動車乗車中の年齢階層別交通事故死者数推移(主要年齢階層区分別)(積み上げ、人)(~2017年)

自動車乗車中の死者数は漸減の動き。2009年から2010年にかけてはわずかに増加したが、2011年には再び大きく減少し、そして2012年以降もその傾向は続いていた。10年の経過でおよそ半分にまで減少。多種多様な努力に対し、相当な成果があったと見てよい。無論人口の減少も影響しているが、減少度合いは比べものにならない。

他方2011年以降は減少の動きが穏やかになり、下げ幅も限定的。さらに2016年では前年比でプラスを計上するまでとなった。統計上のぶれも一因だが、高齢層の該当者数が増加しているのが大きな要因。直近2017年でその動きを打ち消すかのような減少が生じたのは幸いではある。

年齢階層別の人数では、未成年者や成年が減少傾向にある中で、高齢層は漸減から横ばい、さらには増加の推移にある。これは高齢層の人口そのものの増加による上乗せと、安全対策の強化や医療技術の発達による減少作用が均衡していた、そして前者の影響力が強まり数を底上げしたものと考えられる。もっともその高齢層の死者数も直近2017年では大きく減少し、これが全体数の減少にも大きな影響を与えている。

続いてこれを主要年齢階層別に区分し、各年毎に「全体数に占める比率」を算出する。高齢者の比率が漸増し、他の層が少しずつ減っている様子が見て取れる。

↑ 自動車乗車中の年齢階層別交通事故死者数推移(主要年齢階層区分別)(比率)(~2017年)
↑ 自動車乗車中の年齢階層別交通事故死者数推移(主要年齢階層区分別)(比率)(~2017年)

最初のグラフを見直せば分かるように、高齢層も2007年までは減少、2008年以降は横ばいに推移、その後やや増加の動きにすら転じている。他方それより下の層は(人口そのものの漸減も一因だが)数を減らしており、結果として全体に占める高齢層の比率は少しずつ上乗せされる形となる。10年の経過で2倍近くの比率増加は、看過できない状況に違いない。直近年では自動車乗車中の事故による死者のうち、5割近くが高齢者との結果が出てしまっている。

高齢者数そのものの増加や、自動車保有率の変化(ライフスタイルや可処分所得の多い少ない、居住地域の利便性の問題から、若年層は自動車の利用が減り、高齢者が増える)を鑑みると、高齢者の自動車乗車中による死者「数」は現時点のようなもみ合い状態が継続、そして増加トレンドに転じる可能性はある。要は該当層人口の増加率が、取り締まりや技術進化による減少率を上回ってしまうリスクがある。

高齢者においては片意地を張らずに、現状を認識した上で運転する・しないの判断をしてほしいもの。無論それに併せて地域社会における居住環境の整備問題、特にインフラ関連については、さらなる検証と対策が求められよう。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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