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新聞の読者はどの記事を読んでいるのだろうか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 朝食をとりながらの新聞タイム。さてどの記事を読んでいるのか…(写真:アフロ)

・新聞でもっとも読まれている記事は社会関連。次いで地元関連。

・「必ず読む」記事に限定するとテレビ・ラジオ欄がもっとも読まれる。次いで地元関連。

・経年変化を見るとテレビ・ラジオ欄を読む人は減少中。

ウェブサイトやブログ、ソーシャルメディアのようなインターネットメディアは「つまみ食いメディア」とも呼ばれている。読者が好む部分を、あるいは好まれそうと推奨された部分のみに目を通し、該当する内容すべてに目を通す人は少ない傾向にあるからだ。例えば新聞社のウェブサイト上に掲載されている新着記事すべてに目を通したり、ソーシャルメディア上で自分が追いかけている対象者すべての新規書込みを読んでいる人はさほどいない。検索機能の便利さがそれに拍車をかけている。他方、紙メディア、例えば雑誌や新聞は時間があれば隅々まで読み通す人も少なく無い。それでは実際に、新聞記事はどの種類の記事が読まれているのだろうか。新聞通信調査会が2018年1月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)の結果から、新聞読者における「目を通している記事」について確認する。

今調査対象母集団において頻度は問わず、朝刊・夕刊まで含めた新聞を読んでいる人は68.9%。その新聞閲読者に対し、新聞で読む記事(必ず読む、よく読む、たまに読むの合計)としての回答率を示したのが次のグラフ。もっとも多くの人が目を通しているのは社会関連の記事で、93.5%の人が該当する結果となった。

↑ 新聞で読む記事(新聞を読む人限定、「必ず読む」「よく読む」「たまに読む」の合計)
↑ 新聞で読む記事(新聞を読む人限定、「必ず読む」「よく読む」「たまに読む」の合計)
 ↑ 新聞で読む記事(2017年度)(新聞を読む人限定)(「必ず読む」の回答率)
↑ 新聞で読む記事(2017年度)(新聞を読む人限定)(「必ず読む」の回答率)

「必ず読む」に限定すると、記事種類別に大きな違いが出る。テレビ・ラジオ欄がもっとも多く46.5%、次いで地元関連で32.6%。さらにスポーツ・芸能関連、社会関連が続く。しかし「よく読む」「たまに読む」の範ちゅうまで含めると、さほど大きな違いは生じない。文化関連や国際情勢関連、経済関連などがいくぶん低いが、それでも8割以上の人が回答している。頻度はともあれ紙媒体の新聞は、記事に関しては隅々まで読まれる可能性があるメディアに違いない。社説を除けば、だが。

より長い経年推移で「必ず読む」「よく読む」「たまに読む」の合計値の動向を確認したのが次のグラフ。

↑ 新聞で読む記事(経年推移)(新聞を読む人限定、「必ず読む」「よく読む」「たまに読む」の合計)
↑ 新聞で読む記事(経年推移)(新聞を読む人限定、「必ず読む」「よく読む」「たまに読む」の合計)

社会関連、地元関連の鉄板ぶりが明確に出ている。閲読者の生活に直結する部分も多く、必要性が高いのが主要因だろう。全国、あるいは世界規模の情報がメインとなる全国紙よりも、発行地周辺の地元色が強い地元紙の方が、都心部以外で盛況なのも納得できる。

テレビ・ラジオ欄はやや減少傾向、それ以外は大きな変化が無い。テレビ・ラジオ欄が減り始めているのは、新聞閲読者においても、テレビの視聴者が減っている、あるいはインターネットの番組表にその需要を奪われているのかもしれない。

もっとも、新聞の読者自身は減少中であることは、今調査でも明らかにされている通り。元々記事に目を通すことにあまり価値を見出さなかった人が新聞を閲読しなくなったため、一定水準の意義を見出している人のみが新聞の閲読を続けていることから、高い水準が維持されている可能性は否定できまい。あくまでも今件は、新聞を読んでいる人限定での、読まれている記事の割合なのだから。

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※メディアに関する世論調査

直近分となる第10回は2017年11月2日から11月21日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は3169人。有効回答者の属性は男性1526人・女性1643人、18~19歳63人・20代274人・30代422人・40代567人・50代504人・60代601人・70代以上738人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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