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男は中堅・女は高齢ほど肥満者が多い実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 女性は年を取るほど肥満者が増える?(ペイレスイメージズ/アフロ)

・男性は50代までは年とともに太るがそれ以降はやせる。女性はほぼずっと年とともに太る。

・男性は50代が肥満者のピークで1/3強が肥満判定。女性は60代がピークだが、それでも1/4に届かない。

・20代のやせの者は男性で8.2%だが、女性は2倍以上の20.7%に達している。

男女で肥満者の傾向は大きく異なる。その実情を厚労省の「国民健康・栄養調査」(※)の公開データから、肥満度を表す指標のBMIを用い、確認していく。

BMIとは肥満度を表す指標の一つで、Body Mass Indexの略称。計算式は簡単で「体重÷身長÷身長」。BMI値が測定できた人を肥満(BMI≧25.0)・普通(18.5≦BMI<25.0)・やせの者(BMI<18.5)に区分し、この区分に従い、調査対象母集団を年齢階層別に「肥満者」「やせの者」、そしてそれ以外の「その他(=BMI値は肥満者とやせの者の間、つまり普通)」に分けたのが次のグラフ。

↑ 肥満者(BMI>=25)とやせの者(BMI<18.5)、それ以外の者比率(2016年)
↑ 肥満者(BMI>=25)とやせの者(BMI<18.5)、それ以外の者比率(2016年)

第一印象としては男性の方がオレンジ部分(肥満者)が多く、女性の方が青色部分(やせの者)が多いが、

・男性では50代までは年を重ねるにつれて太る傾向が強く、それ以降はやせていく。一方女性はほぼ一様に歳とともに肥満者率が底上げされる。

・男性は50代が肥満者のピーク。1/3強が肥満判定。女性は60代がピークだが、それでも1/4に届かない。

・20代のやせの者は男性で8.2%だが女性は2倍以上の20.7%に達している。

特に男性50代は3人に1人強が肥満者判定を受ける状態で、同階層でやせ形が約3%しかいないのは、少々問題ではある。また女性は20代から30代においてやせの者が極めて多く、肥満者の比率を超えている。若年女性層では過度なほどに体格への心配をする人が多いと言われているが、その行動性向が数字に表れているのかもしれない(ただし統計の上で妊婦が除かれているのも一因ではある)。

これらの区分の変移について、いくつかの特徴のある属性を抽出してグラフ化したのが次の図。なお「20歳以上の女性のやせの者の割合」は各年のばらつきを少なくするため、該当年次の値に前後の年次結果を足して3で割る移動平均値を適用している。よって2016年分はまだ存在しない(2017年分が計上されていないため)。

↑ 肥満およびやせの者の割合(20歳以上)推移(一部)
↑ 肥満およびやせの者の割合(20歳以上)推移(一部)

年齢とともに増加していく女性の肥満者だが、これでも昔と比べれば減少をしているのが分かる。一方で成人男性の肥満者率は上下を繰り返しつつ、中期的には増加の一途をたどっている。

体重が一番気になるであろう、それゆえに過度のダイエットなどで健康を害するリスクもあり、むしろやせ形の人の割合が気になる20代女性における「やせの者」の動向だが、やや起伏はあるものの、かつては23%内外で行き来をしていた。この属性では20.0%以下に抑えるのが目標(「健康日本21」(第2次))だが、直近の2016年分では単年の値ではあるものの、目標値を超える値を計上している。

なお「国民健康・栄養調査」では2014年分(2015年発表分)から経年変化の一部データで、年齢階層別の人口比によるデータのぶれ(高齢者の人口比率の上昇に伴い、全体値では高齢者の傾向に偏る動きが生じてしまう)を考慮し、年齢で大きな差異が生じる経年データでは、年齢調整を行った値を併記している。その値を元に、2004年分以降の男女それぞれにおける肥満者・やせの者・その他の人の割合の推移を示したのが次のグラフ。

↑ 肥満者(BMI>=25)とやせの者(BMI<18.5)、それ以外の者比率(2004年-2016年)(年齢調整後)
↑ 肥満者(BMI>=25)とやせの者(BMI<18.5)、それ以外の者比率(2004年-2016年)(年齢調整後)

単純な全体平均では上昇傾向があるように見える男性も、実のところ大きな変化は無く、肥満者率の高い中堅層以降の人口比率が上昇したことで、全体の肥満者率が上がっていることが分かる。むしろ女性のやせの者判定者の比率が、中期的にいくぶんだが増加している感は否めない。

全体としての肥満者率はアップしているとの事実に変わりは無いが、年齢階層別人口比率の変化によるものとの構図は、例えば貯蓄率の低下などと似ており、物事の本質を推し量る際には留意を払う必要があることを書き記しておく。

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※国民健康・栄養調査

健康増進法に基づき、国民の身体の状況、栄養素など摂取量および生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的とするもの。直近年分の調査時期は2016年10月から11月。調査実施世帯数は10745世帯で、調査方法は調査票方式。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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