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20代が「自家用車を買ってもいいな」と思える年収をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 自家用車があると色々と便利には違いないが…(写真:アフロ)

車の所有率が若年層の間で減少していると語られる機会が増えたが、そのもっとも大きな原因は現状、そして将来に渡る見通しとしての可処分所得の減少。見方を変えれば金銭的な充足があれば、若年層も自家用車の所有に積極さを見せることになる。それ自身は極めて当たり前の話ではあるのだが、ならば年収でどれぐらいの額を確保できれば、所有を考えるようになるのだろうか。SMBCコンシューマーファイナンスが2017年12月に発表した調査「20代の金銭感覚についての意識調査2017」(※)の結果を基に確認する。

次に示すのは年収の一定区分別の「この年収ならば自家用車を所有してもよいと思う」回答率と、累積回答率を併記したもの。例えば年収400万円に達した時点で取得してもよいと考える人は、年収500万円の条件でも当然取得したいと考える。400万円より500万円の方が、金銭的余裕は一層あると考えられるからだ。そこで各年収の仕切り別回答率に加え、累積の回答率も併記している。例えば自家用車で300万円の累積回答率は28.4%だが、これは「年収を問わず所有したい」の13.3%、「200万円」の3.6%、「300万円」の11.5%をすべて足した結果。

↑ 所有・購入しようと思える世帯年収は(自家用車、円)(2017年)
↑ 所有・購入しようと思える世帯年収は(自家用車、円)(2017年)

個々の区分回答率では年収を問わずに調達したいとは思えないとの意見がもっとも多く19.6%。具体的金額では500万円が16.4%でもっとも多く、次いで300万円、400万円が続く。ボリュームゾーンとなる300万円から600万円の値を合わせると5割近くの回答率となる。もっとも「世帯年収600万円まで」と評する場合には、それ以下の条件でも所有したいとの累積回答率の考えが必要になるため、64.2%の値が導き出される。つまり、年収600万円が維持確保できれば、20代の大よそ2/3は自家用車を所有しようと考える。

年収700万円以上の具体額における区切りでは、回答率は少なめ。若年層の自動車所有率を高めたいのなら、関連各方面は該当世代の年収を600万円程度に引き上げ、安定化させる方策が費用対効果の上でも望ましい切り口となる。

同様の調査は前年、前々年も実施されており、その累積回答率を併記したのが次のグラフ。

↑ 所有・購入しようと思える世帯年収は(自家用車、累積、円)
↑ 所有・購入しようと思える世帯年収は(自家用車、累積、円)

一部イレギュラーな動きもあるが、大よその階層で値が減少している、つまり自家用車を所有しようとする人が減っている。特に直近の2017年では前年から大きな減少が生じており、グラフの上でも小さからぬかい離が生じているのが確認できる。20代の自家用車離れが数字となって現れた形ではある。

自家用車は仕事柄、居住地域の状況から取得が不可欠な人もいる。個々の環境によって所有動機は大きく変動するため、年収はあくまでも要素の一つ。

一方で金銭上の問題が大きな影響を与えることも事実。消費の活性化を若年層に望むなら、それを後押しすべく、その年齢階層の年収の底上げと安定化を推し量ってほしいものである。

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※20代の金銭感覚についての意識調査2017

2017年10月2日から5日にかけて、携帯電話を用いたインターネット経由で20代男女に対して行われたもので、有効回答数は1000件。男女・20代前半と後半の仕切りで均等割り当て。未婚者822人、既婚者178人。調査協力機関はネットエイジア。

今件における「年収」とは特に設問中で定義がされていないため、世間一般に認識されている通り、手取り(所得)では無くサラリーマンなどなら天引きされている税金や社会保険料を含めた金額を意味するものとする。また、世帯「主」年収では無く、世帯年収であることに注意。回答者が世帯持ちだった場合、配偶者の収入も合わせて計上される。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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