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米国のロボットやコンピューターの仕事代替への姿勢は支持政党で大きく異なる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 新技術普及による人の仕事の影響への認識も支持政党別で違いが(筆者作成/撮影)

新技術の代表格であるロボットやコンピューターが人の仕事を代わるようになるに連れて、様々な影響が生じ変化が現れる。人々はその影響変化にどのような意見を持っているのか。米国では支持政党別で大きな意見の違いがあるようだ。その実情を同国の民間調査会社Pew Research Centerが2017年10月に発表した、技術と人々の暮らしに関わる調査報告書「Automation in Everyday Life」(※)をもとに確認する。

次に示すのは現在人がしている仕事の多くを、技術進歩に伴いロボットやコンピューターが行えるようになった時に、対応を検討すべき事柄について、賛成できるか否かを尋ねた結果。強い賛成・賛成・反対・強い反対の選択肢のうち、強い賛成と賛成の意見を賛成派として合算した結果を算出している。なお民主党とは前米大統領オバマ氏の所属政党でリベラル志向、共和党とは現米大統領トランプ氏が所属する政党で保守志向である。

↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになる場合、次の事柄に賛同するか(支持政党別、強い賛成・賛成・反対・強い反対の選択肢のうち賛意派合計)(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになる場合、次の事柄に賛同するか(支持政党別、強い賛成・賛成・反対・強い反対の選択肢のうち賛意派合計)(2017年5月、米国、18歳以上)

機械には危険な、非健康的な仕事に限定して任せるべき、機械でなく対面のやり取りでは対価が上乗せされるべきとの意見は支持政党別でほとんど変わりはない。大きな違いが出ているのは、政府が関与する項目。ベーシックインカムの導入や、人の仕事を創生するための公共事業の創設では、民主党支持者は多数が賛成派だが、共和党支持者は少数派となってしまう。

これは元々共和党がさまざまな分野への政治介入を避け、経済を優先する立場(保守的考え)を持つのに対し、民主党では平等博愛主義や環境保全問題への積極姿勢を持ち、政府もかじ取りをするべきであるとの考え(リベラル志向)なのが主要因。そのような考えを持つ人がそれぞれの政党を支持する場合が多いため、結果として政府主導の経済介入には、民主党支持者は大いに賛成し、共和党支持者は背を向ける人が多くなる。

ロボットやコンピューターの導入浸透に伴う失職者の増加や経済効率に関する姿勢も、支持政党で大きな違いを示す。

↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになる場合……(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになる場合……(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになる場合……(代替の制限について)(2017年5月、米国、18歳以上)
↑ 現在人がしている仕事の多くをロボットやコンピューターができるようになる場合……(代替の制限について)(2017年5月、米国、18歳以上)

職を失った人への手当てについて、たとえ税金が増えても政府は面倒を見るべきであるとの意見は、全体ではほぼ半分。回答者の学歴別ではわずかだが高学歴ほど自己責任だから面倒を見る必要は無いとの意見が増えていく。

他方、支持政党別では明らかに、民主党支持者は面倒を見るべき、共和党支持者は自己責任の回答が多数派となっている。経済優先か、平等主義かの姿勢が数字となって現れている。

ロボットやコンピューターのような機械による仕事の成果が費用的、品質的に優れていたとしても、人の仕事を奪うことになるため、機械への代替は何らかの制限をすべきだとの意見は、全体では6割近く。しかし学歴別では明確に、高学歴の方が費用や品質で優れているのなら、積極的に機械への代替を進めるべきだとしている。経済効率を重視する考えが支配的なのか、あるいは回答者自身が代替される側に立つとは考えていないのかもしれない。

支持政党別では失職関連の話と比べれば差は明確ではないものの、やはり民主党支持者の方が人の仕事を守る立場の意見が強い。しかし共和党支持者でも、経済効率第一との意見は44%で、機械への代替に制限を設けるべきとの意見の方が54%と多くなっている。

ロボットやコンピューターの導入で仕事は効率化されることに違いは無いが、それで人が幸せになれるのか否かはまた別の話。どこに重点を置いているかによって、姿勢は大きく違ってくる実情を、あらためて知ることができる結果には違いない。

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※Automation in Everyday Life

調査専用の調査対象母集団(RDD方式で選択された固定電話・携帯電話を有するアメリカ合衆国の18歳以上を対象に選択)を対象に2017年5月1日から15日にかけて実施されたもので、有効回答数は4135人、うち就業者は2510人。国勢調査の結果を基に性別、年齢、学歴、人種、支持政党、地域、就業中か否かなどの属性でウェイトバックが実施されている。

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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