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全体比で1割強…テレビのネット接続機能の使われ度合いをさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ テレビでネットもできる時代に(ペイレスイメージズ/アフロ)

テレビでネットを利用した世帯、全体比では11%

2011年7月にテレビのデジタル化(地デジ化)が行われたのに伴い、テレビ受信機の世界も大きな変化の時代を迎えている。ブラウン管タイプから液晶タイプへのシフトだけでなく、インターネット接続機能をはじめとしたスマートテレビ化により、テレビも総合的なデジタル端末としての様相を示しつつある。それではその新機能の一つ、インターネット接続機能はどれほど使われているのだろうか。その現状を総務省が2017年6月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に探る。

次に示すのは各属性における、過去1年間にインターネット対応型テレビ受信機でインターネットを利用したことがある世帯の割合。全体では11.0%とあるので、全世帯のうち1割強がインターネットに接続できるタイプのテレビを使って、インターネットを利用した経験があることになる。インターネットに接続できるタイプのテレビを持つ世帯のうち1割強では無いことに注意。

↑ インターネット対応型テレビ受信機でインターネットを利用した世帯(利用率)(2016年)
↑ インターネット対応型テレビ受信機でインターネットを利用した世帯(利用率)(2016年)
↑ インターネット対応型テレビ受信機でインターネットを利用した世帯(利用率)(2016年)(世帯構成別)
↑ インターネット対応型テレビ受信機でインターネットを利用した世帯(利用率)(2016年)(世帯構成別)
↑ インターネット対応型テレビ受信機でインターネットを利用した世帯(利用率)(2016年)(世帯年収別)
↑ インターネット対応型テレビ受信機でインターネットを利用した世帯(利用率)(2016年)(世帯年収別)

まず世帯主の年齢別だが、中堅層の利用率が高い。40代をピークに30代から50代がボリュームゾーン。他方、60代以降でも1ケタ%台の利用率は維持されている。インターネットテレビと高齢者との相性はさほど悪くない、「ほとんど使われていないのでは?」といった世間一般のイメージよりは良いことが分かる。

世帯年収別では概して高年収の方が高い値を示している。多分に世帯年収と世帯主年齢は連動性があることを合わせ考えると、やはり他のデジタル機器とは異なり、デジタルテレビにおけるインターネット接続機能は、高齢者にも門戸が広いことがうかがえる。

とはいえ世帯構成別を見ると、高齢者が含まれる世帯における利用率は低めとなる。テレビそのものとの相性は良いとはいえ、そのテレビを用いてのネット利用となると、単純にテレビ観賞と比べればハードルは高いようだ。他方、特に子供がいる多人数家族における、娯楽・コミュニケーションツールとして、インターネット対応型テレビ受信機でのインターネット機能が利用されていることを示唆する結果が出ているのは興味深い。家族の目の前でのアクセスとなるから、当然といえば当然なのだが。

テレビでネットにつないで何をしているか

デジタルテレビ放送でインターネットに接続をして、具体的にどのようなことをしているのか。利用者に具体的利用目的を聞いた結果が次のグラフ。

↑ インターネット接続機能の利用目的(2016年、複数回答、インターネット対応型テレビ受信機でインターネット接続機能を利用している世帯限定)
↑ インターネット接続機能の利用目的(2016年、複数回答、インターネット対応型テレビ受信機でインターネット接続機能を利用している世帯限定)

番組の内容に関連する情報の閲覧がもっとも多く40.8%、ほぼ同率でVOD(ビデオオンデマンド、要望に応じてその場で視聴できるタイプの映像)の配信番組が38.3%。そしてウェブ閲覧が25.2%と続く。自分が好きな番組を観たり、番組に関連する情報を確認してさらに造詣を深めたり、ウェブサイトを巡回して普通にインターネットアクセスを楽しんだりと、多様な使い方をしている。

これを世帯主の年齢階層別に見たのが次のグラフ。

↑ インターネット接続機能の利用目的(2016年、複数回答、インターネット対応型テレビ受信機でインターネット接続機能を利用している世帯限定)(世帯主年齢別)
↑ インターネット接続機能の利用目的(2016年、複数回答、インターネット対応型テレビ受信機でインターネット接続機能を利用している世帯限定)(世帯主年齢別)

番組の内容に関連した情報は押しなべて高め、VODは20代はイレギュラーとしても(該当世帯数が27)、歳が上になるほど高い利用率を見せるようになる。ウェブの利用はともかく、テレビ番組そのものや番組に直接関わり合いのある情報は、高齢者も積極的にテレビを用いてネットを利用しているようだ。ただし、番組の予約や視聴までは難儀するようで(あるいは需要が無いらしく)、若年層ほど高い値を示す。テレビ番組とは直接関係のないオンラインゲームも同様。

インターネット接続機能を有するテレビでアクセス環境を整備し、利用ハードルを下げることで、いわゆる実況タイプのインターネット利用(パソコンやスマートフォンでチャット、掲示板、ソーシャルメディアに参加しながらテレビを視聴し、その内容についておしゃべりをすること)において、シニア層が強い関心を示し、利用するようになるだろうか。テレビ番組をより楽しくする手法の一つとしては有益に違いないのだが、VODや番組関連情報への取り組みは積極的であるものの、ウェブの利用率がいまいちであるところを見ると、難しいのかもしれない。

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※通信利用動向調査

2016年11月~12月に世帯向けは都道府県及び都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に、企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に対し、郵送・オンラインによる調査票の配布及び回収の形式によって行われている。有効回答数はそれぞれ1万7040世帯(4万4430人)、2032企業。調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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