年収別でネット機器として使う携帯電話やパソコンの利用率を比較してみる
インターネットの窓口となるパソコンも携帯電話(従来型携帯電話とスマートフォンの双方)も、そして家庭用ゲーム機やタブレット型端末ですら、昔と比べると価格面では随分と手に入りやすくなったが、それでもなお、誰もが気軽に購入できるものでは無い。当然その所有率・利用率は個々のお財布事情と浅からぬ関係がある。いわゆる「デジタルデバイド」の要因として経済力が挙げられる一因。今回は総務省が2017年6月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値などを元にして、所属世帯の年収別に主要インターネットアクセス機器の利用状況を検証する。
まずは「パソコン」「携帯電話」「タブレット型端末」「家庭用ゲーム機」における、インターネット機器としての利用率。「インターネット利用の有無を問わず、該当属性全体に対する比率」で算出していることに注意。
例えば「パソコン」は58.6%なので、調査対象母集団の6割近くが「パソコンをインターネット端末として利用している」と回答している。携帯電話は67.9%と「パソコン」を抜いており、「インターネットへのアクセス窓口は携帯電話が最上位」な状況にある。これは2013年から継続している状況で、2013年は日本のインターネット上の歴史における転換点と定義しても良いだろう。
これを回答者の所属世帯における年収別で区分したのが次のグラフ。参考値として、機器を問わず過去1年間にインターネットを利用した経験があるか否かも合わせて算出する。
概要的には「自分が所属する世帯が低年収ほど、パソコンも携帯電話もタブレット型端末も(インターネット)利用率が低い」傾向が見える。特に低年収区分では利用率の低さが目立つと共に、パソコンと携帯電話との差が大きい。コスト面ではパソコンよりも携帯電話の方が(特に初期費用の点で)安上がりなため、低年収層では重宝がられているのだろう。そしてその傾向も合わせ、低年収世帯では、インターネットの利用が(多分に)金銭的なハードルに阻まれていることが推測される。パソコンの利用率は1500~2000万円未満まで漸増していくが、携帯電話は800~1000万円未満でほぼ頭打ちとなるのも、その裏付け的な動きといえる。
一方、ゲーム機などは年収別の差異はほとんど無い。やや高年収ほど高利用率を示している程度(1500万円以上で有意に落ちているのは、この層が多分に高齢層でもあるため)。タブレット型端末は値そのものは低位だが、年収と共に漸増し続ける値動きをしている。2000万円以上では2人に1人近くが利用している計算となる。
経済水準がインフラ導入のハードルのすべてとなるわけでは無く、また一見するとコスト面で取得しやすいように見える端末が、ハードルが高い場合もある。さらに今件は「年収」であり、貯蓄を切り崩して生活費に充てる高齢世帯層もまた、年収は低く計上されることに留意する必要はある(つまり世帯の経済状態ではなく、年齢によってネットの利用が左右される面もありうる)。とはいえ、少なくとも相関関係において、世帯年収がインターネットを利用しているか否かに関して、連動性があることは間違いない。
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