正社員かパート・アルバイトか…年齢・性別の就業地位区分の実情を国勢調査からさぐる
5年に一度実施される国勢調査では多種多様な切り口で日本の実情を推し量る内容が調査され、その結果が公開される。2017年4月に発表された2015年分調査における一部項目の確定報の公開値をもとに、産業構造や雇用市場、そして景況感の変化でこれまで以上に注目を集めるようになった、就業者の就業地位と就業者数比率の現状を確認する。
2015年時点での日本の15歳以上の就業者は男性3307万7703人、女性2584万1333人。この就業者なる区分には、一般雇用者(雇われている人)以外に役員、雇人のある業主(個人事業主など)、雇人の無い業主(ライターなど一人で活動している個人事業主)、家族従業者などがある。その仕切り分けは次の通り。
・雇用者……会社員・工員・公務員・団体職員・個人商店の従業員・住み込みの家事手伝い・日々雇用されている人・パートタイムやアルバイトなど、会社・団体・個人や官公庁に雇用されている人で、次にいう「役員」でない人
・正規の職員・従業員……勤め先で一般職員又は正社員と呼ばれている人
・労働者派遣事業所の派遣社員……労働者派遣法に基づく労働者派遣事業所に雇用され、そこから派遣されている人
・パート・アルバイト・その他……(1)就業の時間や日数に関係なくも「パートタイマー」、「アルバイト」又はそれらに近い名称で呼ばれている人
(2)専門的職種に従事させることを目的に契約に基づき雇用され、雇用期間の定めのある「契約社員」や、労働条件や雇用期間に関係なく、勤め先で「嘱託職員」又はそれに近い名称で呼ばれている人
・役員……会社の社長・取締役・監査役、団体・公益法人や独立行政法人の理事・監事などの役員
・雇人のある業主……個人経営の商店主・工場主・農業主などの事業主や開業医・弁護士などで、雇人がいる人
・雇人のない業主……個人経営の商店主・工場主・農業主などの事業主や開業医・弁護士・著述家・家政婦などで、個人又は家族とだけで事業を営んでいる人
・家族従業者……農家や個人商店などで、農仕事や店の仕事などを手伝っている家族
・家庭内職者……家庭内で賃仕事(家庭内職)をしている人
・「不詳」……未回答などで従業上の地位が判定できない場合
いわゆる「非正規雇用」は「パート・アルバイト・その他」「労働者派遣事業所の派遣社員」が該当することになる(「契約社員」は「労働者派遣事業所の派遣社員」内に区分されていることに注意)。
それでは早速、年齢階層別・性別で人口比率のグラフを生成する。なお「不詳」は除いて再計算している。
ざっと見で確認すると、男性は2/3近くが正社員、1割強が非正規社員。残りは役員や個人事業主、家族従業者。女性は正社員4割足らず・非正規社員4割強と非正規社員の割合が大きいが、これは20代後半以降に漸増する「パート・アルバイト」が多数を占めている。
男女別に精査すると次の通り。
●男性
・働き盛り(30~50代)の正社員率は約8割、非正規社員は1割足らず。
・40代後半からサムライ業など個人事業、役員の割合が増加する。
・60歳以降は正社員として残っている人は多くなく、嘱託などで在職する人、役員として勤める人、個人で事業をする人など人それぞれの職模様が見て取れる。
●女性
・正社員率は20代後半がピーク。あとは漸減。
・20代後半以降は、いわゆる結婚退職などで派遣社員として勤めたり、パートやアルバイトに就く人が増加する。
・派遣社員率は20代後半~40代前半がピークで、あとは漸減。一方パート・アルバイトは30代前半から増加を続け、60代前半でピークとなる。
・65歳以上は役員が1割足らずの他、個人事業主として活躍するなど、男性同様の職模様がかいまみられる。ただし家族従業者の比率が2割以上ともっとも多く、夫の手伝いをしているものと想定される。
などの特徴が見えてくる。20代前半はともかく、20代後半以降の男性非正規社員比率は、多くの人が想像している以上に低いのが実状。世間一般には下にあるような、全体・男性・女性区分のグラフが示され(場合によっては全体のみで性別の区分すら無い)、正社員率の低さが提起されるからだ。
しかし上の図と合わせて見ると、男性は正社員率が2/3近くに違いは無いが、非正社員率は1割強で、残りは役員や自営業。女性は正社員率が4割足らずでしか無いものの、非正規社員のカウントの大部分は中堅以降のパート・アルバイトでなされているのが理解できよう。
最後にオマケ的なものではあるが、最初のグラフを比率ではなく人口換算で、積上げ式のグラフにしたのが次の図。女性のパート・アルバイト率の高さがあらためて見て取れる。
また、男性シニア層の独立独歩な姿勢(オレンジ色部分が歳と共に増加していく様子)も確認できる。
なお今件は就業者を対象としており、比率計算も就業者がベースとなっている。当然失業者などは含まれていないので、その点を確認した上で見定めていただければ幸いではある。
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