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世界各国で聞いた「格安スマホの短所、利用しない理由」

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 低コストでスマホの利用者増加に貢献する格安スマホだが。(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

日本でも利用者が増えてきた「格安スマートフォン」、いわゆる格安スマホ。仮想移動体通信事業者(MVNO)によって提供されるSIMカードを白ロム端末やSIMロックフリー端末に用いてスマートフォンとして使用する端末だが、長短所を兼ね備えているため、スマートフォンを利用したい人の間でも選択の判断は分かれている。それでは利用しない人、短所を有していると思っている人は、具体的にどの点に不満を持っているのだろうか。総務省が2016年8月17日に公式ウェブ上で公開した、2016年版の「情報通信白書」の内容をもとに確認していく。

該当する調査の要項は2016年2月に日本、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、韓国、中国に対してインターネット経由にて20代から60代までを対象として行われたもので、有効回答数は各国1000件。男女比、10歳区切りの年齢階層比はほぼ均等割り当て。今件ではインターネットに浅からぬ関係のある機器の調査ではあるが、調査自身がインターネット経由で行われているため、元々インターネットの普及に関して偏りのある国の回答率は、その国全体との間にいくぶんのぶれが生じている可能性がある。

まずは調査対象国における格安スマホの利用率。設問では格安スマホのことを「「月々の通信料金を通常のスマートフォン(自社でネットワーク回線を設置する事業者が提供するスマートフォン)よりも低く設定している反面、高速通信の利用可能の範囲等に制限のあるスマートフォン」と説明している。

中国がやや高めの値を示しているが、これは直上の調査事情を考慮すると、ある程度差し引いて考えねばなるまい。一方で、今調査の調査対象となる範ちゅうでは、3割以上の人が格安スマホを用いているのも事実。

↑ いわゆる「格安スマホ」を利用している(2016年、複数回答)
↑ いわゆる「格安スマホ」を利用している(2016年、複数回答)

日本は大よそ1割強。他国もさほど変わらず、アメリカ合衆国が2割強でやや多め。

他方、この値以外の人は格安スマホは用いていない。利用を希望している人、していない人など状況は多数に及ぶが、それらの人が利用していない理由、そして利用している人でも短所だと思っている点を、複数回答で尋ねた結果が次のグラフ。

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↑ いわゆる格安スマートフォンのデメリット・利用しない理由(2016年、複数回答、調査対象母集団全体)
↑ いわゆる格安スマートフォンのデメリット・利用しない理由(2016年、複数回答、調査対象母集団全体)

国により携帯電話料金の負担度合、携帯電話の料金形態、格安スマホの普及状況と提供スタイルなどに違いがあるため、一概に比較するのはやや難があるが、大よそ「通信品質に不安」「格安スマホにすると普通のスマホよりもかえって高くつく」といったコストパフォーマンス的な問題、設定の難しさ、そしてサービスそのものや該当事業者の認知度の低さが、格安スマホを使う上でのハードルとなっている。

日本に限って他国との違いを見ると、品質やサポートへの不安が大きい一方で、サービスや事業者への認知度は(相対的ではあるが)低めの値が出ており、少なくとも周知の観点では他国と比べて進んでいると認識できる。ブランドイメージの差異もさほど気にならないようだ。

ちなみに日本のみを抽出して再構築したのが次のグラフ。

↑ いわゆる格安スマートフォンのデメリット・利用しない理由(2016年、複数回答、調査対象母集団全体)(日本)
↑ いわゆる格安スマートフォンのデメリット・利用しない理由(2016年、複数回答、調査対象母集団全体)(日本)

他国と比べて周知は進んでいるとの話だが、それでもデメリットとしては通信品質やコスト高に続き、短所・利用しない理由の第3位に位置している。コストや品質は格安スマホに限らず商品においては常に改善が求められる話ではあるが、啓蒙・周知やサポートの充実は、今後の格安スマホの伸張において、重視しなければならない点に違いない。もっとも、それらの充足で、さらにコストが上乗せされてしまうと、「格安」スマホでは無くなるとの問題も生じ得るのだが。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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